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R.P.G~Ragnarok.Proxy.Genesis~  作者: 銀狐@にゃ〜さん
第1章2節 アクロ大平原
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女神の戯れ ミネルバの気苦労

アルテミスご乱心回です



「ど、ど、ど、どうしようお姉ちゃん!?」


「どうしようって…止めるしかないだろ…アルさん、あの猪って強いんですか?」


「どうしようどうしよう…あぁ…ア、アテナァ~!?」


「ア、アルさん!?」


 いつもの落ち着いた様子とはまったくかけ離れた状態のアルさん。

 まさかアテナが魔物の背中に乗っているなんて夢にも思わなかったのだろう。

 慌てふためき混乱している。

 一方、問題になっているアテナを見やると


「あっはははははは♪」


 何が楽しいのか大爆笑していた


「プギィィィィィ!!」


 その背に乗られているジャイアントボアは大変荒ぶっておられます…


「はぁ…どうするかなこれ…」


 少しの間考える。

 現状、この状況で落ち着いているのはボクだけだ。

 こちらの世界の住人であるアルさんはこの通り混乱中。

 優夏に至っては、戦うことは出来るだろうが、その実力はFLOを始めてまだ3ヶ月ほどの初心者。

 初心者といっても、中級職を育てていると言っていたことから、それなりのLvにはなっているはずだが、正確な強さまでは、優夏の戦っている場面を見たことがないボクとしては判断しかねるところだ。


 FLOでは、あるLv帯を境にして初心者、中級者、上級者と呼ばれていた。

 およその目安として、Lv1~100までのプレイヤーを初心者。

 Lv101~150までを中級者。

 Lv151~200までを上級者。

 さらに、その上として、Lv201~キャップ上限までのプレイヤーを、尊敬の念を込めて先駆者と呼ばれていた。

 どういう訳かは分からないが、区切りのLvに達すると、Lvアップに必要な経験値が跳ね上がり、プレイヤーにとっては一種の成長の壁のようなものとなっていた。

 そのために、その壁を越えることが出来た者は、Lvに見合った呼ばれ方をする。

 これに当てはめるならボクは先駆者の部類になるわけだが、優夏はおそらく初心者クラス。


 ボクは改めて優夏を見る。


「『解析(アナライズ)』」


 現在の優夏のLvと向かってくるジャイアントボアのLvを見比べる。

 現在の優夏のLvは72。

 対するジャイアントボアのLvは46となっていた。


 ボクが使ったスキル『解析』はスキルLvを上げる毎に解析出来る情報が増えていくのだが、ボクの解析Lvは1であるために、詳細なことは調べられないが、対象のLvだけは測ることが出来る。


(これだけのマージンがあれば優夏一人でも何とかなるかもしれないな…)


 ボクの脳裏に先程優夏に言われた言葉が浮かぶ。


『もっと皆を頼らないとだよ?』


 ボクは考えるのを止めた


「優夏、たぶんだけど、優夏一人でも何とかなるかもしれない。任せてもいいかな?」


 別にこれは意地悪でも何でもない。

 優夏とジャイアントボアのLv差と、優夏自身が言った強くなりたいという言葉。

 他にも理由はあるけれど、優夏の気持ちというか目標を尊重しての言葉だった。


「え、えぇぇぇ!?」


 ボクの言葉を聞いた優夏は突然のことに驚きの声を上げる。


「大丈夫だよ。優夏ならなんとか出来る」


 自信無さげな瞳でボクを見てくるが、あえてボクは出来ると鼓舞する。

 すると、意を決したのか力強く頷き返してきた。


「わ、分かったよ…やってみる!!」


 やや緊張気味ではあるが、このくらいの緊張感がちょうどいいだろう。


 さてさてどう戦うのか…

 ここは口出しはせずに優夏がどう対応するのか見ていよう。


 本来であれば、この手の突進を多用してくるであろう敵と戦う際のセオリーとして、側面からの攻撃がメジャーな攻略法だろう。

 正面に立つなんてもってのほかだ。

 順序としては突っ込んできた敵を回避し、敵が方向転換などで動きが鈍っているときに攻撃を加える。

 ボクであれば迷うことなくそうするのだが、優夏の取った行動は…


「『経絡開放』、『龍脈』!!よぉし…いっくぞ~!!」


 真正面から突っ込んでいきました…

 『経絡開放』は、自分の経絡を開くことにより、身の回りの気のようなものを取り込みステータスの強化を行うスキルで、『龍脈』は、周りの気を活性化させ『経絡開放』で取り込む気に様々な付加効果を与えるブースターの様なスキルだ。

 この2つのスキルはセットで使用することにより、使用したプレイヤーに爆発的なステータス上昇効果をもたらす。

 まぁ、そこまでは問題無かったんだけど…

 何で最後に突っ込んだ!?

 あとで説教だ…


「くらえぇ~!!『飛双脚』!!」


『ブキィィィィ!!』


 ズドォォォォォォン!!


 物凄い音を立てて、優夏とジャイアントボアが正面から激突する。

 優夏の放ったスキルは『飛双脚』

 両足を使っての飛び蹴りだ。

 分かり易く言うなら、めちゃくちゃ勢いをつけたソバットキック。

 それがジャイアントボアの眉間に直撃していた。

 跳ね飛ばされるかもと思っていたのだが、底上げされたステータスと助走をつけたことも相まって、見事にジャイアントボアの突進を相殺し、お互いピタリと静止していた。

 やがて、優夏が地面に着地すると同時に、ジャイアントボアの巨体が横倒しになった。


「やったぁ!!ビクトリー!!」


 こちらの気も知らないで自慢げにVサインを向けてくる優夏とは対照的に、全く余裕の無い表情で駆け出すアルさん。


「アテナ!!アテナは!?」


 アルさんはキョロキョロ辺りを見回すが、そこにアテナの姿は無い。

 ボクは優夏達とは逆方向(・・・)に向かってすでに走り出していた。

 ボクは終止、ジャイアントボアではなく、アテナを目で追っていた。


 では何故ボクがあらぬ方向に走り出したのか。

 優夏とジャイアントボアが激突した瞬間、アテナは進行方向に向かって勢いよく飛び出したのだ。

 正確には投げ出されたと言ったほうが正しい。

 TV等で目にする、自動車の衝突テスト、そのダミー人形を思い浮かべてほしい。

 衝突、または急停止が起こったときのダミー人形がどうなるかを…

 当然、ダミー人形は、シートベルトで固定されているし、衝突の瞬間にはエアバックが作動している。だが、これがもしシートベルトもエアバックも無い状態で衝突、急停止が起きた場合、力のベクトルは慣性の法則に従い、進行方向、今回の場合であれば前方に向かって力が働く。


 では改めて、今回の事例を確認してみよう。


 どのくらいの距離を突進してきたのかは分からないが、ジャイアントボアの勢いはかなりのものだった。

 そして、ステータスを底上げしての優夏の攻撃による衝突と見事なまでの急停止。

 アテナ自身に至っては、おそらくジャイアントボアの背にしがみついていた程度だろう。

 その結果、アテナはカタパルト射出されたかのように、ジャイアントボアからキャストオフしたわけである。

 そんな理由で、ボクはアテナが飛び出したのを見ると同時にアテナを追って走り始めたのだが、それと同時にイラッとする台詞が聞こえた。


「アテナ、いっきまぁす♪」


 飛び出す瞬間にアテナが言い放った台詞をボクは聞き逃さなかった。

 ボク達の心配など全く気にした様子も無い。

 間違いなく、アテナは遊んでいる。

 そんな様子を見せられたら、普段温厚なボクといえどイラつきもする…

 こみ上げてくる怒りをグッと堪え、ボクはアテナを追走した。

次回、新キャラ登場です。

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