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R.P.G~Ragnarok.Proxy.Genesis~  作者: 銀狐@にゃ〜さん
序章
1/39

引きこもりと女神



 甲高い剣戟、けたたましい銃声、燃え盛る炎・・・


 この音の発生源はゲームの中、とある最難関と呼ばれるグランドクエストの最深部、ボスのいる大部屋で今なお繰り広げられている音だ。

 これだけを聞いた者ならば、誰もが大人数でボスと戦っていると思うだろう。しかし実際にボスと対峙しているのは・・・


「はぁぁぁぁぁ!」

『GAWOOOO!』


 たった一人の女性プレイヤーのみなのである。

 しかもこのグランドクエストは、大型レイドを組んだパーティでも攻略は難しいされているクエストなのだが、ボスのHPバーは残り1割を切り、まもなく倒せるという場面に差し掛かっていた。


「スタンフラッシュ」


『GRUUU!?』


 女性プレイヤーのスキル発動と同時に途轍もない光量がフロア内を染め上げる。

 その光をまともに視認してしまったボスは、目が眩み、たたらを踏んで後退る。その隙に、女性プレイヤーが持っている銃に力を注いでゆく。


「これで終わりだよ…リジェクトバースト!」

『GRU!?GYAWAAAA!…』


 極太のレーザーの如き光線が銃口から放たれ、ボスを貫く。

 苦痛の断末魔をあげると共に、ボスのグラフィック全体に激しい亀裂が無数に走り、ガラスが爆散したかのように砕け散る。その破片が光の粒子になり空気に溶け込む様に跡形も無くなると、女性プレイヤーの前にはリザルト画面が飛び出し、女性プレイヤーのインベントリに取得アイテムが納められていく。


「さすがにちょっと疲れちゃったなぁ…」


 そう呟くのも束の間、


『プレイヤー、ミネルバにより、グランドクエストボス「深淵の覇者アビス」が討伐されました。繰り返します・・・』


「うぅ・・・このアナウンス、毎度思うことだけど、本当に止めて欲しいんだよなぁ…」


 プレイヤー、またはギルドが、ゲーム内で偉業を達成すると、その偉業を讃え、ゲーム全体に行動が知れ渡る。

 これにより、名声や知名度が上がり、ある者は様々なパーティに誘われたり、ギルドに勧誘されたりとかなり目立ってしまう。これが素直に喜べるプレイヤーであれば良かったのだが、このミネルバにとっては大迷惑な話なのだった。


「また街に戻ったら追いかけられちゃうんだろうな…なんでボクなんかのこと皆勧誘してくるんだろう?ボクは一人で遊んでいたいだけなのに…」


 一人呟きながら大部屋の奥の転移装置、ポートスフィアに触れ、ダンジョンから外へと転移する。

 ここから最寄の村に立ち寄り、王都に転移、その後、城にいる王様にクエストアイテムを手渡せばクエストは完了となる。


 普通のプレイヤーであれば、順当にクエスト完了するまでスムーズに行えるのだが、このミネルバにとっては最難関クエストを攻略するよりも困難なことなのであった。その理由はいくつかあるが、最たる要因は、ミネルバの対人恐怖症によるものである。そのため、


「よし…いつもの手で行こう。クラスチェンジ、アサシン!」


 このゲームのシステム『クラスチェンジ』により、見た目は変わらないもののクラスを変えたミネルバ。


「インビジブル…」


 スキルを唱えると、ミネルバの身体が背景と同化して見えなくなる。所謂透明化して身を隠すスキルである。このスキルには弱点があるのだが、目立たずに移動する分にはうってつけのスキルである。


「さっさと終わらせて今日はもうログアウトしよう…人にぶつからないように気をつけないとね。」


 クラスのステータス補正により強化された敏捷性で目にも留まらぬ(透明化しているため元々見えないが)速度で村まで辿り着き、ポートスフィアを使って瞬時に王都に到着。城に向かうために踵を返すと


『あ!?おい、いたぞ!!』


「ふぇ!?」


あっさりバレた。だが見つかってしまっては仕方ない。脱兎のごとく城に向かって駆け抜ける。


『逃げたぞ!追いかけろ!』


『俺に任せろぉぉぉぉぉ!』


『うぉぉぉぉぉぉぉ!』


『こっから先は早い者勝ちだぁ!ヤツはうちのギルドがもらったぁぁぁぁ!』


『『『させるかぁぁぁぁぁぁ』』』


 街中でミネルバを取りあおうとする大乱闘が巻き起こる。何故こんなにもあっさり身を隠していたミネルバがバレてしまったのか?単純に他のプレイヤーに見破られたのである。一度見破られてしまえば、このスキルは効果を失ってしまうため、視認出来るようになる。手馴れたプレイヤーが待ち伏せて看破したようだ。


「ひぃっ!?うにゃぁぁぁぁぁ!?」


 泣きながら城に向かって必死に逃げた結果、ようやく目的地に到着。玉座の間にいる王様にクエストアイテムを引き渡すことに成功したミネルバは城門前には行かず、そのままログアウトを選択し、この世界から意識を切り離した。


『…けて…』


 ゲーム世界から現実世界へと戻るほんの一瞬、声のような音が流れるが、そのことにミネルバは気付くこともなく現実世界に帰還するのだった。


      ■ ■ ■


「ふぅ…」


 ゲームの世界から現実世界に戻ってきた僕は、寝ていたベッドから身体を起こす。

 僕の名前は峰岸(みねぎし) (すばる) 。今年中学3年になったばかりの14歳男子で、先程の女性プレイヤーの中の人だ。今現在の時刻は平日の朝9時を回った頃。学生である僕がこんな時間に家にいる理由。それは僕が引きこもりだからだ。引きこもり始めて5年程が経つ。引きこもり始めた理由は、過去に告白をした際にその子に言われたことが原因であり、その上、その告白が原因で心を折られるようないじめにあったため、そのまま引きこもりになってしまった。


 その告白の際に言われたことというのが…


『女の子より可愛い男の子と付き合うなんて絶対に嫌!!』


 当時の幼かった僕も、こんなことを言われれば流石にショックを受けたものだ。

 実の所、僕の容姿は5年前からさほど変わってはいない。変わった所といえば、せいぜい身長が伸びたことや、5年前から髪の毛を切っていないために背中まで伸び過ぎた髪の毛くらいだろうか?

 昔の言葉にこういう言葉があったらしい。


『男の娘』


 女の子のような容姿をした男の子のことを指すらしいのだが、妹曰く、今の僕を表すには、この言葉がしっくり来るそうだ。断じて認めたくはないが…


 ベッドから起き上がった僕は、頭に被ったヘッドマウントPC、BCIMを使い、インターネットのページを閲覧していた。このBCIMというのは、ヘッドマウントPCの総称で、正式名称はBrain Connect Interface Machineといい、その頭文字をとってBCIMと呼ばれ親しまれている。

このヘッドマウントPCは、十数年前に主流であったデスクトップPCやノートPCに取って代わったPCだ。十数年前にVRバーチャルリアリティシステムの技術が確立され、従来のPCの機能も向上されたことにより、このヘッドマウントPCが主流となるのにそう時間はかからなかったらしい。

 BCIMが主流となった頃、各ゲームメーカーは、VRシステムを利用したゲームの作成に力を注ぐようになってゆく。VRMMORPGと呼ばれるゲームジャンルが生まれたのもちょうどこの頃だ。

 VRMMORPGとは、仮想現実空間に仮想のアバターを作成し、そのアバターを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚と言った感覚がそのまま現実の自分にフィードバックされるようになっているゲームのことだ。


こうしてメーカー同士の競争により生まれた数多いVRMMORPGタイトルの中で、僕がプレイしていたのは、ユーザー数100万人を超えるタイトル『ファンタジー・ライフ・オンライン』通称FLOというゲームだった。


 僕がこのFLOにのめり込んだ理由はいくつかある。

 僕が引きこもってしまった理由は、先に述べた通りだが、こうして引きこもってしまっていたために、僕はいつからか対人恐怖症になってしまった。この5年間で家族以外の人間と会話した記憶もない。状態は悪化していく一方だった。このままでは僕自身、もっと駄目になってしまう…

 そこで考えたのが、VRMMORPGを用いたリハビリである。

 そう決めてからの僕の行動は速かった。いくつものゲームサイトを巡った中で、このFLOを選んだのは、そのゲーム性と自由度の高いキャラクター作成が出来る点であった。


 まずはそのゲーム性として、このFLOでは様々な職業クラスが用意されており、その職業を駆使して、プレイヤーは各々の遊び方をしている。この職業は無数に存在しており、現実的な職業から戦士などといったファンタジーなものまで、数え切れない量であった。

 現実的な職業ということはつまり、擬似的な職業体験が出来るということだ。VRということは、そこで経験したことは、現実世界の僕にもフィードバックされる。今後、いつになるかは分からないが、僕が引きこもりを卒業出来たときのためにも、この職業システムは非常に有用だ。ゲームを楽しみながら、現実的な経験も出来るなんて僕にとってはうってつけのシステムだと思う。


 次に自由度の高いキャラクター作成。

 僕は容姿にコンプレックスを持っている。男の娘に見られているのであれば、いっそゲームの中では女の子のキャラにしてしまおうと思ったのだ。

 その姿で見られることに慣れることが出来れば、現実世界で外に出た時に、人目が気にならないようになれるかもしれないといったショック療法だ。

 自由度が高いということはそれだけ細かい設定が出来るということだ。

 こうなると、凝り性な僕はアバター作成にかなりの時間を費やした。

 

顔付き、身長、髪型は現実の自分とほぼ同じにしたが、髪の毛の色は、ファンタジーらしく紫銀色、体型は若干細めに、胸の大きさは大きすぎず小さすぎず、小振りに設定したお尻からスラリと伸びる脚。

 最後に瞳の色をマリンブルーに設定して出来上がったそのアバターは、発展途上の少女を思わせるような仕上がりとなった。

 

 このアバターに、ネーミングセンスのない僕は、自分の名前をもじってミネルバと名付けた。余談だが、このアバターは、FLOデビュー直後に容姿だけで二つ名を付けられることになる。

 

 こうして始めたFLOでの成長は、初心者という割には恐ろしく速かった。

 その理由は、引きこもりという理由はもちろんあるが、もうひとつ理由がある。

 それは、VRシステムに慣れていたからだ。

 

 引きこもり始めた小学4年生の頃、僕を心配した両親は、仮想体験でも構わないから色々な世界を見てほしいという思いで、僕にBCIMを持たせた。FLOの対象年齢は13歳からだったため、その年齢になるまで僕は既存の全年齢対象のVRで身体を慣らせていた。

 そして引きこもりの僕には時間の制限が無い。一般のプレイヤーであれば、1日のプレイ時間はせいぜい長くても4~5時間程度(例外はあるが)の所、僕の平均プレイ時間は15~20時間という廃人の域であった。

 

 そんな廃人プレイを1年半も続けていたため、僕は異例の速さでトッププレイヤーの中に名を連ねる程、有名になってしまった。しかもソロプレイヤーとして…

 だが、有名になることは、僕にとっては大誤算だった。

 元々引きこもりであるこの僕は、コミュ障ぼっちの対人恐怖症ということもあり、コミュニケーション能力は必然的に、いや、絶望的に皆無である。僕はあくまでも自分自身のためだけに、ソロで遊ぶつもりだったのだが、一人で遊ぶのに慣れすぎていたためか、自分以外に実在するプレイヤーがいることを、すっかり忘れて遊んでいたのだ。

 

 見られることは最初からそれに慣れようとしていたのだから気にはしていない。でも、有名になるというのは全く話が変わってくる。

 有名なプレイヤーともなれば、大手ギルドと呼ばれるギルドなどに勧誘されたり、フレンド申請をされることが多い。

 僕の場合、異例の速さでLvキャップ(Lvの上限)に到達したことや、先での最難関クエストの攻略、マスターした職業の数々、キャラクターの容姿etc、有名にならざるを得ない要素が多い。その中でも有名なのは、僕がソロプレイヤーということだろう。そんなプレイヤーを、数あるギルド連中が放って置くわけが無い。

 僕の行動がアナウンスされる度に、、ギルドに引き込もうとする連中が、先ほどのように争奪戦の様相を見せるため、街は一時騒然となる。関係の無いプレイヤーからしたら、「またか…」といった反応や「祭りだぁ!!」と、楽しんで見ている者など様々なようだ。


 FLOから現実世界に帰ってきた僕は、日課となっている、FLOの公式サイトのチェックをしていた。更新された内容の把握と今後のアップデート予告等、僕がFLOを遊ぶ上では、この情報収集を怠ってしまうと、FLO内で有名になっている僕はまともに遊べなくなってしまう。正確には他のプレイヤーに囲まれて身動きが取れなくなると言ったほうが正しい。人の集まる場所では特に顕著になる。そうならないための情報収集だ。


「んと…よし。今回もイベントは無い…と。あとは…ん?ニュース覧に新着?」


 ホログラムモニターに映るホームページ、そのトピックスに新着を知らせる『New!!』の文字が点滅している。内容が気になった僕は迷わずページを開き、見出しを見て吹き出してしまう。


「ちょっ…公式ページに取り上げることじゃないでしょ!?」


 そのニュースの見出しはこう記されていた。


『最難関クエスト、ついに陥落!!』


 つい先ほど、僕が達成したばかりの事だけに、その見出しの出現の速さに驚かされる。ちなみに内容はというと、


『公開されてから、幾多のギルドが返り討ちにされた、この最難関とされているグランドクエスト「深淵の覇者・アビス」がついに攻略された。公式の運営によるコメントで「悪ふざけにも程がある鬼畜仕様です(笑)」と公言されていたクエストであるこのグランドクエストが、なんとたった一人のプレイヤーによりクリアされた。そのプレイヤーのプライバシー保護のため、ここでキャラ名は明かせないが、アナウンスを聞いていたプレイヤー達はその瞬間、歓声を上げたという――』


 その後の内容にも運営陣からのコメントが記されており『是非、このプレイヤーさんには次回の大型アップデートのPVに出て欲しい』だの、『これを記念に何かイベントを考えようと思っている』だの職権乱用を仄めかすようなコメントが書かれていた。


「こんなに大騒ぎになるなんて…これじゃあまともに遊ぶことなんて出来ないじゃないか…」


 ゲーム内を逃げ回っている僕が容易に想像出来てしまい、僕はがっくりとうなだれる。

 だが、こうしていても現状が変わるわけでもないと、思考を切り替えた僕は、BCIMを頭から外し、起き上がる。


 僕の家族構成は共働きの両親と中学1年で13歳の妹、そして僕の4人家族だ。家族仲は良好で僕の数少ないリラックス出来る空間がこの自宅だ。外に一歩も出られない僕でも、この家の中だけではあるが歩き回れる。

 だが、引きこもっていることに引け目を感じている僕は、家族が外出している間に、FLOで経験したことを活かし、率先して家事をするようにしている。といっても、慣れてしまえばおよそ2,3時間もあれば大概の家事は終わってしまう。

 

 一通りの家事を終え、リビングで一息ついていると、2階から階段を下りてくる音が聞こえ、リビングの出入り口が開かれる。入ってきたのは妹の優夏だった。


「あっ。お兄ちゃん。おはよう。」

 

 起きたばかりといった感じの、やや着崩れを起こしているパジャマ姿のまま、僕の隣に座ってくる。

 この隣に座った妹の優夏だが、見た目は活発な印象を与える内巻き気味なショートカット、そして笑ったときに覗く八重歯がよく似合う、猫っぽい女の子だ。


「ん~ん。平日だよ?この間体育祭があったから、その振替休日で今日は学校休みなんだよ~」


 あぁ、それでか。優夏の話を聞きながら二人分の飲み物を用意して、一つを優夏に手渡す。


「ありがとお兄ちゃん。さすが気が利くね?いいお嫁さんになれそうで私も鼻が高いよ」


「そういうネタでイジるのは止めてくれよ…」


 悪戯っぽい笑みでからかってくる優夏に機嫌悪くため息をつく僕。


「あはは。ごめんごめん。とゆーかお兄ちゃん、またやらかしちゃったねぇ。見たよ?FLOの記事」


「僕だって不本意だよ…そんなに騒ぎ立てるほどのことでもないだろ?」


「そんなことないんじゃない?私もFLOを始めたのは2ヶ月くらい前だからそこまで詳しくはないけど、私が入ってるギルドの先輩は無理クエだ~って言ってるもん。それをソロでクリアしちゃうんだから騒がれたって仕方ないよ」


 この発言を聞いて分かる通り、妹の優夏もFLOのプレイヤーなのだ。とは言っても、お互いのキャラネームを知っているだけでゲーム内では一度も会った事はないが。


「ぬぅ…まぁ僕のことはいいとして、優夏のキャラはどんな感じで育ててるんだ?」


 特に手伝ったりするつもりもないが、話題を逸らすために妹のプレイ状況を聞いてみる。


「私?私はこの間、格闘家のクラスをマスターして、今はその上位の拳闘士になったばかりだよ」


「あぁ、空手習ってるもんな」


「そうそう。こう、相手をドカッ!!バキィッ!!って倒してくのが楽しくて」


 カラカラ笑いながら、少し危険な台詞を吐く優夏に苦笑いする僕。


「まぁ拳闘士のスキルには有用なのがあるからね。クラス問わずで使えるスキルも多いし、今の僕でも組み込んでるスキルがあるから、マスターしておいても全然損にはならないな」


「ほぅ、そうなんだ?これはいいこと聞いちゃったなぁ。後でスキル見直してみるよ」


「ん。頑張れ」


「さてと、友達と待ち合わせしてるからそろそろインしないと」


 そう言って席を立つ優夏はグラスを台所に置くとリビングを出て行こうとする。

 その後姿に声をかける。


「程々にな?」


「それだけはお兄ちゃんに言われたくないよ」


 半眼で僕に言い返すと、優夏は自分の部屋に戻っていく。

 確かに考えてみれば、普通の人の3、4倍の時間をFLOで遊んでいる僕には言われたくないだろうと思い苦笑する。

 そうこうしている内に時計を見ると、時間は昼の1時になろうとしているところだった。

いい加減騒ぎも収まっただろうと思い、FLOにインするため、僕も自室に引き上げる。

 重さを感じさせない円環型のBCIMを被り、ベッドに横になる。いつも通りにFLOを起動させると、僕の意識をVRの世界へと移していく。IDとパスワードを思考入力し、データの読み込みを待っていると、突如、映像に大きくノイズが走り、砂嵐のような画面になっていく。 


(何だよ…これ!?)


 突然の出来事に混乱する僕。しかし次の瞬間、モニターしている砂嵐の画面が女性の顔を形作るように様相を変えると一言呟いた。


『……助…けて…』


 その声を聴いた瞬間、目の前が真っ暗に暗転し、ブラウン管のTVを消したときのようなブツンという音と共に、僕の意識は刈り取られた。


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