プロローグ
病院の中で目覚めた。それだけの話。
起きたら、病院のベッドの上だ。
真っ白な天井を目に入ると、何故だが病院にいることが分かった。
だが、それ以外のことは何も分からなかった。
どうして俺は病院にいるの?何故、何も思い出せない?そもそも俺は誰だ?
"あぁ、どうやら俺は記憶喪失したみたい”
ぼんやりと、そんな事を考えた。
俺は両手をベッドに当てて、体を起こそうとした。その時、自分が意外に重い事に気が付いた。
"いや、単純に俺が力がないだげか。"
両腕がとても体を支え続けることが出来そうにないので、少しずつ尻を後ろにずらして、背中を壁に寄せた。
いや、壁じゃない。何だろ、ベッドの頭の部分、なんと言う名前なんだろう。まあいい、どうでもいいことだ。
周りを見渡すと、近くの机の上に鏡があった。手にとって、鏡を覗き込むと、そこには一人の美少女がいた。
そうか、「私」は女なのか。
それにしても、自分のことを「美少女」と...少し恥ずかしい...
さらに周りを見渡したが、特に目ぼしいものはなかった。
一人用の病室、真っ白な部屋、他に何もない。
部屋に興味を失った後、私は窓の外を見る。小鳥は囀っていた、春なのか。
自分は意外に冷静なのだな。記憶がないなら、慌ててもおかしくないでしょう。
"私は、なんだろう。"
たぶん、まだ実感がないからだろう、頭が上手く働かない。
不意に、ドアが開く音がした。ゆっくりそっちに目を向くと、白い服を着た女性が現れて、驚いた顔でこっちを見た後、何かを思い出したように"先生、先生"と連呼して走っていた。
"どうやら、私のストーリーはもうすぐ始まるようだ"
自虐的にそんな事を考えながら、私は再び視線を天井に返し、次に来る人を待つ事にした。