Save you! 1
save you!
九月。
楽しかった夏休みも終わり、着々と秋が近づく今日この頃。
今日は休日…だがテスト前ということもあり、俺、赤羅魏 弘樹は講習で学校にきていた。
後ろからは同級生、高梨秋人の気持ち良さそうな寝息がスースーと聞こえる。
何のために講習を受けているんだ、眠気覚ましに脳天にシャーペンを刺すと「あぐっ」と声を漏らし勢いよく顔をあげた。
「ひ〜ろ〜…」
人の眠りを妨げやがって、という顔でこっちを睨むと思いっきりデコピンをされた。
「いだっ!」
つい大きい声を出してしまい、教室中の視線が一気に俺へと集中した。
「赤羅魏、何をしている。」
後ろを向いて声をあげた俺のこの状況は明らかに先生のしかりの的だ。
アキトはバカめ、とにやけてこちらを見ている。
ムカつく、こいつムカつく。
先生僕は居眠り野郎を起こしただけなのです!
いわゆるコミュ障の俺にはそんな言葉を出す暇が無いようだ。
「ちゃんと授業に集中しろ、あと赤羅魏の後ろのお前は後で職員室だからな。」
「げっ。」
先生はどうやらアキトの居眠りを見逃していなかったようだ。
ふふん、いい気味だ。
「お前何気持ち悪い顔してんだよバーカ」
「アキトも人のこと言えないマヌケ顔だよ」
俺とアキトの睨みの中間に、2人にしか見えない火花が散る。
「お前ら少しは黙れ!!」
先生の怒鳴り声が教室内に響き渡った。
講習は終わり、下校時間。
昼も近くお腹の空く音がなる。
「ヒロキ、腹減ったし飯食いに行こうぜ」
「うん、そうだね…アレ?」
下駄箱のフタを開け靴を取り出そうとすると、目に入ったのはちょうどラブレターなどで使われそうな大きさの手紙。
その純粋な白さから清純さが読み取れる。
まて、俺にはナツミちゃんという女の子が…。
「アキトどうしよう、俺ラブレターもらっちゃったかも!」
アキトへ見せようとし、振り向いた所、全く同じ手紙をびっくりしながら持っているアキトと目があった。
わけもわからず数秒思考停止する。
「…まさか不倫前提?」
「違うだろ。」
もしや、全員に配られているのだろうか、宛先が赤羅魏 弘樹様と丁寧にフルネームで書かれている。
普通に考えてこんな畏まったラブレターはないだろう。
アキトは既に手紙を開き中身をみているようだ。
俺も同じく開き、内容を確認する。
『おめでとうございます。
貴方には【傷を元に戻す力】が与えられました。
最後の超能力者として残った際にはゲームクリアとして願いを一つ叶える権利を与えます。
殺されて能力を奪われないよう、頑張って下さい。』
「…。」
俺はこの手紙に見覚えがある。
「アキト…」
「なんだこれ、小学生らしいイタズラだな!」
そう言って笑ってみせてから、俺の青ざめているであろう表情を見て深刻そうな顔になる。
「な、なんだよ、ヒロキどうした?」
数年前に体験したいろいろな事が蘇り、腹部に変なものが入ってきたような、気持ち悪さを感じる。
純粋な白さが気味の悪い白さに変わった。
「アキト…これは現実だ。」
「……マジ?」
九月十一日。
僕達は決して逃れられない死への招待状を受け取ってしまったのだった。




