第5話 ETERNAL RETURN(Ⅱ)
一難が去った所で、直ぐにまた次の一難がやってくるのだ。
体勢を整えたDOOMがアタシ達全員を見渡し、何事かを呟き出す。
落ち着きを取り戻したのか、その声色は元の色を取り戻していた。
「何故だ……何故、こうなったのだ? 俺はこの宇宙を統べる者……確かにあのお方は仰った……なのに何故だ!」
突如として頭を抱え苦悶するその姿に、アタシは文句の一つでも言いたくなる。
つーか、言ってしまった。
「……アンタ、そんな戯言を誰に吹き込まれたのか知んないけどさぁ……それをはい、そうですねって鵜呑みにする事自体が間違ってるって思わないワケ? あのお方がどのお方なのかは知んないけど、そんな人がいる時点でさぁ……アンタの天下なんて永遠に来ないわよ?」
アタシの言葉に嫌悪感を抱いたのか、その言葉を振り払う様に表情を歪めたDOOMが叫ぶ。
「黙れっ! 新聞屋風情に何が分かる! あのお方は……『マスター』は俺に力を与えて下さった! 俺は……俺はDOOM……運命と破壊と死を司る者……そうだ、貴様等さえ居なければ全てが上手くいったのだ……貴様等を滅する! そこの小僧の様にな!」
亡骸のアストを指差し、DOOMが掌から閃光を放つ。
その瞬間だった。
「お? ついに来たな?」
パイちゃんの小さな身体が眩く輝きだし、アストの亡骸も呼応するかのように光を放つ。
「ぬぅぅ! 何だ、この不浄な光はァァっ!?」
DOOMにとっては不浄な光でも、アタシ達にとっては聖なる輝き、とでも言うべきか。
「何と神々しい輝きだ……」
「課長……一体何が起こるのでしょうか?」
お役所の面々は互いの顔を見合わせ、その眩い光に目を細める。
「初めて見るハズなのに、何だか懐かしい温かさを感じるわ……」
「ホントね……」
「不思議と心の底から優しくなる光……」
介抱していたカイルを放り出し、光の恩恵に与る三人娘。放り出されたカイルが不憫でならない。
「お嬢様、アイン様……これは……」
「兄様……」
二人の言葉を制するアインは、こちらに背を向けDOOMを牽制しながら話す。
「南十字は北十字と対を成す。南十字の支配者……彼はこんなところで終わっていい男じゃない」
南十字……つまり、ルードの指輪の支配者。それは即ち神器の支配者。
神器がもたらす力はこれまでにも見てきたが、それ以上の力がある、という事なのか?
「目覚めろよ……ルードの支配者……」
パイちゃんがアストの亡骸に近付いていくと、ドラゴンの姿からいつぞやの白いサープリスを羽織った少年の姿へと変貌していった。
「やん、可愛い♪」
悶えるクリスはほっとこう。
光に包まれたアストの身体の中でも、一際大きな輝きを放つ、右手の人差し指。
ルードの指輪だ。
アストとパイちゃんの2人から放たれる光が重なると、光はその大きさを更に増し一瞬のスパークを放ち、光が霧散していく。
次の瞬間……
「僕は一体……?」
先程まで物言わぬ亡骸だったはずのアストの身体が息吹を取り戻した? え? 誰か魂命奇縁の舞とか舞った?
「アスト……? アンタ……」
……信じられない事だが、でも、これが……現実? 試しにアストの頬に全力のビンタをかます。
「痛ったぁ! な、何するんですか、レイアさんっ!」
……ふむ。涙目になるアストが痛がってるって事はどうやら夢じゃなさそうね。
結論。アストは死んではいなかった、と。
死んでないなら良しとする。むしろ、アタシの涙を返して欲しいくらいだわ。
「ア、アスト君……無事、なのか?」
「ふぇ? あ、シンさん……うん……無事、ですね」
要領を得ない言葉を返すアストの胸は、あの時確かに弾丸に貫かれていたのだが、弾痕などどこにも見当たらない。
「これで、本当の意味での神器の支配者になっちゃったな……アスト」
パイちゃんはアストではなく、何故かアタシを見ていた。
だけど……
その言葉の意味もパイちゃんの視線も、今はどーでもいい。
「アスト、これから最後の仕上げなんだけど……行けるわよね?」
「ふぇ? な、何がですか?」
これが最後の仕事! アストのマヌケ返事も聞き納め!
「ついて参れっ!」
「は、はい!?」
有無を言わす事無く、アストの手を引きDOOMへと突撃する。
痛みからなのか、身体中が熱を帯びるが、そんな事もこの際どうだっていい! 流れ出る涙とかそんなモンどうだっていい。涙の一つも流せない大人になんてなりたくないじゃない? それに、おそらくはこれが最後の突撃、そして……インタビューと記事はもう完全に、完璧に、すべからく、スッパリキッパリ諦めた!
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知ったこっちゃ……無いわぁっ!
「レイアさん……泣いてるんですか?」
「うるさい!」




