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第4話 メビウス・リング(Ⅲ)

 DOOMはトーラスなんたらを携えたまま、フェイを含む全員を睨み付ける。

 感覚的ではあるが、この場の温度が数度下がったような寒気を覚える。


「何故……何故貴様らは神器の支配者足り得るのだ? オレは何故……神器を得る事が叶わぬのだ……?」


 DOOMは神器の支配者では無い。それが意味する事は……


「DOOM、アンタは永久心臓を持っていないのね……」

「それがあれば、オレの目的はとうに達成されている。もう一度聞くぞ、新聞屋。お前の中には……何がある?」


 ホテルのレストランでも同じ事を聞かれ、その後も何度か脳裏を掠めたDOOMの言葉。だが、何度も反芻(はんすう)するが答えは出てこなかった。




 アタシの中にはアタシがあるだけ……




 だが、アインが……いや、クラウ・ソラスがアタシを特異点だと言った。




 ……特異点。




 基準に適用されない存在……何物にも影響されない存在……




 アタシの存在理由……




 アタシは一体……何者……?




 アタシはアタシ……レイア・ルシール。 それ以上でもそれ以下でもない。アタシの中にあるのは……ジャーナリストとしての魂だ。


「……DOOM。逆に聞くけど、アンタはアタシの中に何を見たの? アタシはアタシ、そう思って生きてきたけど、どうやらアタシは特異点らしいわ。それがアタシ自身にどんな影響を及ぼしてんのか知んないけど、アタシの中にはアタシしか居ない! ジャーナリストとしてのアタシしか居ない! 以上!」


 こんだけ言えば納得するでしょ。てゆーか、して貰わなきゃ困る。凄く困る。


「もういい。お前が何者であろうと、此処(ここ)で死ねば同じ事。一人残らず殺してやろう。クローン共、こいつ等を殺せっ!」


 それは想定外っ!?

 DOOMの怒声を皮切りに、いつの間にか周りを囲んでいたクローン達が一斉に襲い来る!


「レイアッ!」


 クリスがソード・ガンとレールガンの二丁構えで突っ込んで来る。


「大丈夫?」

「う、うん。アンタの頭よりは大丈夫かも」

「助けに来たってのに何よぅ、その言い草は!」


 頬を膨らませるクリスに、アタシは愛おしささえ覚えた。


「ウソウソ。さんきゅ、クリス! 愛してるわよん!」


 辺りを見渡すと、お役所チームも精霊使いチームも無数のクローン達を相手取り、大立ち回りを演じていた。

 アインとジェフ、それにパイちゃんとミリューまでもが、シンと共にアストを守りながら奮闘している。こんな時にこそアストの神器の力があれば良いのだけど……

 クローンはフェイだけでは無く、DOOM自身のクローンもいるため、苦戦は今迄の比ではない。おまけにホムンクルス達まで襲い来るのだが、彼等を倒す訳にはいかない。

 彼等は……この惑星の人間。彼等の命の砂時計まで壊す訳にはいかないのだが、しかし。


「レイア! 彼等はもう人間ではない! 残念だが……やるしかない」


 シンの言葉に耳を疑う。


「アタシにそれをやれ、と? そんなの出来る訳無いじゃないっ! ましてやミリュー達には……絶対にそれだけはさせられないわ!」

「だが、やらなければボク達が死ぬぞ!」


 シンの言う事は頭では理解出来ている。

 ……出来るけどさ。


「ボクだって心苦しい。だから、ミリューさん達にはこのままアスト君を守って貰うよ。業を背負うのはボク達だけで十分、だろう?」


 そんなモン背負いたくないわよ、と反論しかけると、赤いSTがこちらのやり取りに割り込んでくる。


「その業は我々が背負う。貴方達はここから脱出するんだ!」


 かと言って、誰かに背負わせるのも気が引けちゃうのよねぇ……

 あ~ヤダヤダ。この性格直したいわ~……




 ……ホント、損な性格。




「シン、リック課長。その業ってヤツ……皆で背負わない? 誰か一人が背負うんじゃ重過ぎるわ。でも、皆で分け合えば……少しは軽くなるでしょ?」

「さっすがせんぱ~い♪ エミリーは、先輩にどこまでもついて行きますよ~!」


 来んな。


「しょーがないからワタシも一枚噛んであげるわ。感謝しなさいよ?」


 しょーがないから感謝してあげるわ。


「わ、私も、背負います!」

「お嬢様がそうなさるなら、私もそうさせて頂きます」

「じゃ、オイラもー!」

「パイ、少しは考えてから物を言え。レイアさん、俺達の腹は決まっている。そして……彼もな」


 そう言ってアインはクイッと親指で後方を指す。

その先には……アストがいた。


「レイアさん……ぼ、僕も……背負います……よ?」


 声を失った。

 ミリュー達に応急処置を受けたのか、包帯でぐるぐる巻きにされた姿でよろめきながらも自分の足で立つアストのその姿を見たアタシは、感動では無く、怒りでも無く、ただただ……呆れた。


「アンタ……ホントに馬鹿なの?」

「む、無茶をする……上司、には……馬鹿な部下が……ちょ、丁度……良いでしょ……?」


 エクレアとマドレーヌとズコットとティラミスも追加してやるからね。アンタの給料、無い物と思いなさいよ……




 クローンはSTチームと精霊使いチームがあらかた片付けたのだが、その代償は決して安くは無かった。

 リック課長の駆る赤いSTは弾薬も尽き果て、信じられない事だが、イリジウム合金のボディにもそこかしこに損傷が見られる。同じくブライアンの駆る緑のSTも左腕が破損しており、クローン達との激闘を物語っていた。

 そんな中で唯一、ヘリオスだけが元気一杯フルパワーでフロアを縦横無尽に駆け巡っている。これはこれで信じられない光景だ。


「エミリー! ブライアンを援護しろ!」

「わっかりました~!」

「課長のサポートもお願いね!」

「らじゃ~で~す!」


 バックアップ2人の無茶ぶりにも全く臆する事無く応える。え? コイツ、ホントにあのエミリーなのか?


「いっきますよ~!」


 超振動剣(ハイパー・ヴァイブロブレード)を両手に携え、クローンのDOOMやフェイのそっ首を薙ぎ払って行く。

何だ、このドラスティック無双は?


「それそれそれそれ~っ♪ あ……」


 勢い余ってホムンクルスの首まで薙いで行く。

 ……うん。コイツに任せておくか。コイツに全ての業を背負わせてやれ。




 そして、DOOMが吼える。

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