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第3話 北十字(ノーザンクロス)の戦士(Ⅱ)

 特殊形状のソード・ライフルを片手に、ばっさばっさとクローン達の首を薙ぎ、蹴り倒していく無双アイン……と、何故か並走しているアスト。




 何故だ。




 何故、アストが無双アインと並走して無双しているぅ? これは夢なのかぁ? お前の立ち位置はソコじゃ無いだろう!?

 ……何よ、この敗北感。


「ちょっと、クリスぅ~……あれ、どうなってんのよぉ~……」


 クリスに八つ当たってみようとしたのだが……ノーリアクション。呆気に取られている? ってゆーか、マネキンみたいよ、クリス? 今ならお触りし放題よー? って、雰囲気じゃ無いのは良くわかってる。




 クリスの時は止まっているのだ。




 いや……クリスだけじゃない。シンもカイル達もお役所チームも、クローンもホムンクルスも……DOOMでさえもその時を止めている?

 しかし、アインとアストは動いている。アタシも自分の両手を握って開いてグッパ、グッパ出来ている。




 ……何だコレ?




「ほう……この中でも動けるのか? 驚いたな。君の神器は一体どれだい?」


 アタシの背後から誰かが語りかけてくる。威圧感がハンパではない。振り返ろうモノなら、一瞬でこの首を落とされそうな程の殺意と悪意。


「……フェイ、アンタも動けるのね。この空間で一体何が起きてるワケ?」

「あの指輪の支配者の力だよ。あの神器が時を止めているのさ」


 そんな力が……目の前で起きている無双モードのトリックはそう言う事……って、あれ?


「じゃあ、何でアタシやアンタやアインは動けるワケ?」

「神器の力だよ。彼も俺も……君もね」

「はぁっ!?」


 アタシが神器を持ってるってぇ?




 有り得ない。




 どこにそんなモンがあるってのよ? 私物のハンドバッグの中にでも潜んでんのかしら?


「フェイ……いい加減な事を言わないでよね。アタシは神器なんて高尚なモン、持ってないわよ?」

「なら、何故動ける?」

「そんなの知らないわよっ!」


 無双モードの二人は、粗方のクローンを片付けこちらへと向かってくる。二人が倒したのはクローンだけだ。ホムンクルス達は……倒せるはずもない。


「フェイッ! レイアさんから離れろっ!」


 柄にもなくアストが叫ぶ。チワワから脱却してシープドッグくらいにはなったか?


南十字(サザンクロス)の守護者と北十字(ノーザンクロス)の戦士が相手では分が悪いだろう? だから……利用出来る物は全て利用する。俺の目的を果たすためならDOOMだろうが何だろうが、な」


 その言葉にアタシは違和感を覚える。アタシの中ではフェイはDOOMの仲間、あるいは部下だと思っていたのだが、今のフェイの物言いはアタシの考えとはズレが生じる。

 フェイは言った。『利用出来る物は全て利用する。俺の目的を果たすためならDOOMだろうが何だろうが』と。

 フェイはDOOMを利用している……つまり……立場はフェイが上、と考える方が正解なのか。


「アスト君……サザンクロス・モードを解除してくれないか?」

「……分かりました」


 再び時が進み出すと、轟音を取り戻したSTは臨戦態勢を崩し、勢い余ったか、水色のSTだけが豪快にコケていた。


「いった~いっ! も~、何~? ……あえ? 全滅しちゃってる~? ゾンビさんばっかりだ~!?」

「ゾンビじゃなくてホムンクルスよ、エミリー!」「クローン達がいつの間に……? 課長、これは一体どういう事でしょうか?」


 赤いSTは腕組みしたまま首を捻る。搭乗者の動きがそのままフィードバックされるSTならではの動きだ。


「カイル、これってどうなってるの?」

「俺にも何がなんだかわからないよ……」

「リサ、あんたの大地の精霊の力で何かわからないの?」

「うーん……ボクの力が弱いからねぇ……ねぇ、カイルぅ、今からでもボクに乗り換えなぁい?」


 この状況下で色目を使うとは……このボクっ娘、あなどれん。まぁ、当然と言うべきか、ハルの鉄拳制裁を脳天に受けていたが。

 狼狽の色を隠せないでいるのは、お役所チームと精霊使いチームだけではない。


「フェイよ……これは……これはどういう事だ! 何故クローン達が全滅しているのだ!?」


 DOOMも何が起こったのかを理解出来ない様子で、アタシの背後にいるフェイを責め立てる。ドス黒く不気味に光る眼孔はフェイに向けられたモノだが、同時にアタシにも向けているのだろう。

 アタシは思わず怯んでしまったが、フェイは事も無げに言葉を返す。


「神器の力ですよ。DOOM……貴方も動けなかったと言う事は、貴方も所詮はそこまでの存在だったと言う事ですよ」

「何だとっ!? 貴様っ!」


 そう咆哮し、懐から取り出したのは年代物の大型のリヴォルヴァー式の拳銃だった。

 銀色に輝く銃身には何やら文字が書かれているようだが、所々がかすれていて読めないし、そもそもこの距離からでは読めるはずもない。しかし、シンはその銃を見て即座に分かったらしく、歓喜にも似た声色を上げる。


「おぉ! トーラス・レイジングブルじゃないか!? まだ現存していたとは!」


 牛乳瓶の底の奥の眼は輝いてんだろーな。そして、そんなマニアを華麗にシカトして、ドス黒い眼孔に更なる深みを蓄えるDOOM。


「フェイ! 貴様はこれを神器だと言ったではないか!?」


 そう言うが早く、こちらに向けて銃をぶっ放す! マジか、こいつっ!?


「サザンクロス・モードッ!」

『ラジャー! マイ・マスター!』


 アタシの額を貫くまであと数センチの所で、放たれた弾丸が急ブレーキをかけたかのように停止する。


「し、死ぬかと思ったぁ……」


アストがいなければ確実にヘッドショットされて死んでいたわね。

 むぅ~……アストに助けられるとは……




 くやじぃ……

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