独白
長い付き合いだもん。ワタシには解る。
レイアは、自分の運命と戦っている。アストっちとシンは知らないだろうけど、ワタシはレイアの過去について、一度だけ聞いた事がある。
あれは……そう。
入社して直ぐ、一緒に飲みに行った時だ。確かエミリーも一緒だったっけ。その時に、レイアが酔うと『語り魔』になる事が発覚したのだ。
……その時に聞いた事。
これは三人だけの秘密。
こんな事は誰にも口外出来ない。
レイアは幼少時に、全てを破壊した……いいえ……全てを破壊せざるを得なかったのだ。
レイアは所謂戦災孤児だ。彼女が生まれた惑星では、十の国全てがお互いに牽制し合う、と言う緊張状態が常に纏い、国家間の戦争が絶え間無く続いていたそうだ。
まだ幼い彼女は、逃げる事ではなく、戦う事を選択した。
それが全ての間違いの始まりだった。
彼女はその幼さを武器にし、敵対勢力を殲滅していった。具体的な事は彼女も流石に口を閉ざしていたから聞き出せなかったが、ワタシ達の想像の範囲を軽く飛び越える物だった事だけは解る。
幼い容姿を逆手に取り、銃や刃物を手にしていたのだろう。
まだ年端もいかないレイアが見た景色は、凄惨たるものだったに違いない。「全てに絶望していた」と語った彼女の言葉は、今も鮮明に脳裏に焼き付いて離れない。
そして、そんなレイアを引き取ったのが、ロイス編集長だ。編集長は謂わば、レイアの親代わりなのだ。
そして、ワタシの親代わりでもある。
ワタシ達は編集長には感謝してもし尽くせない。でも、当の本人があの調子なので扱いに困るのよねぇ。
ワタシもそうだけど、レイアも、そしてアストっちもシンもエミリーも、みんな過去を背負って今を生きているのだ。
過去がどうだっていい。
今、この瞬間を共に過ごせる仲間がいるなら……
……それでいい。




