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第6話 人外達の狂宴(Ⅰ)

 シン達が何かを掴んで来るまで、アタシ達がするべき事はただ一つ。

 DOOMとフェイを追い詰める。それだけだ。

 あの機械だらけの部屋に何が隠されているのか、キッチリと見つけて貰おうじゃないの。アタシ達はただひたすら、この延々と続く階段を駆け上がる。

 どれくらい上っただろうか。ようやく螺旋の終わりが見え、煌々と灯る松明とランプと彼が出迎えてくれる。


「遅かったな、何をしていた?」


 階段の上では、アイ……ルが待ち構え、アタシ達の姿を確認するなり毒づいてくる。少なくとも、アタシには毒づいてるようにしか聞こえなかった。


「悪かったわね。こっちにも事情があんのよ。それに、アンタもさっさか先に行くのもどうかと思うけど?」

「問答は後だ。来るぞ」


 スパッと切りやがるわね。って、来る?

 やはり、と言うべきか。出迎えるはアイルと灯りだけでは無く……


「フン、やっと来たか」


 聞き覚えのある声。見覚えのある姿。見紛う事無き奴の名は……フェイ。

 アタシ達とは別行動を取っていたアスト達は、何故か驚きの色を隠せないでいる。


「や、やっぱり生きていたっ!」

「アイツがあの程度の炎でくたばる訳が無い」


 (いぶか)しがるアタシを見て、クリスが堪らず問い質す。


「ねえ、アストっち。アナタ達がフェイと一戦交えたのっていつの話?」

「え? 確か、リック課長達が来る直前までは戦っていたと思いますけど」


 アンタは絶対に逃げ回っていたんだろうけど。

 ……って、え?

 その時間って、アタシ達がフェイと戦っていた頃と被ると思うんだけど……どゆ事だ?


「ゴチャゴチャ、ゴチャゴチャうるせぇんだよっ! 来ねえンならこっちから行くぜぇっ!」


 いきなり風の刃を放ちながら、嘲笑(あざわら)うフェイ。


「危なっ! ここじゃ足場が悪いわね。さっさと上り切らなきゃ!」


 先陣を切って駆け出すアタシの後方でアストが何事かを呟く。


「フェイってあんなキャラでしたっけ?」

「俺もそこは不思議に思っていた。フェイはあんな奴じゃ無かったんだが……アイル! あんたは何か知っているのかっ!?」


 次々と襲い来る風の刃を精霊の力で応戦するカイルが、同じく特殊な形状のソード・ライフルの剣戟(けんげき)で薙ぎ払うアイルに問い掛ける。アタシ達はその間を突き、何とかフェイの待つ場所へと上り詰める。


「奴はフェイであってフェイでは無い。レイアさん、と言ったか?」

「レイアでいいわ」

「分かった。レイア、貴女達も奴と戦ったと言ったな? 我々も奴と戦った。そして、それはほぼ同時刻に起こった出来事だ。違うか?」


 アイルもアタシと同じ違和感を感じているのか?


「……ええ、その様ね」


 アタシの見立てでは、奴はおそらく……そして、アイルも同じ結論に達しているのだろう。

 アタシ達が階下で戦った相手、そして、今目の前で風の刃を乱射している奴は……


「奴は恐らく……」

「クローン、ね」


 そう。アタシ達はまだ、本物のフェイには出会っていない。


「クローン? じゃあ、今まで僕達が出会ったフェイはもしかして?」

「偽者……って事?」

「じゃ、本物のフェイはどこに?」

「ボクに聞かれたって知らないよぉ~」


 アストと三人娘の問い掛けは文字通り風にかき消される。


「お前達が真実を知った所で意味は()ぇ。ここで死んじゃえよっ!」


 先程よりもさらに鋭利で激しい風の刃が襲い来る。


「危ないっ!」


 カイルが風の盾を繰り出し、間一髪で風の刃を防ぐ。

 難を逃れたと思われた瞬間、前方のフェイとは別の方角から再び風の刃が襲い来る。


「ぐぅぅぅあっ!?」


 風の刃はカイルの右腕を(かす)め、鮮血を散らす。


「カイルっ!」


 うずくまるカイルに真っ先に駆け寄り気遣うハル。はい、御馳走様。

 あらぬ方向へと目をやると……ヤツがいた。


「外シたカ。まァイい。ドの道お前達ハ、コこで死ぬンだカラナぁァぁァァ!」


 最早、人の物とは思えぬ叫び声を上げながら襲い来る、もう一人のクローン・フェイ。


「気を付けろっ! 奴は俺達がさっき出会ったフェイだ!」


 アイルが出会った、と言う事は、アタシ達は初対面ね。かと言ってもう一方のフェイが、アタシ達が出会った奴かどうかも怪しいけど……つーか、そもそも、奴のクローンが何人いるのやら。

 ややこしいから最初に出てきた奴をフェイA、後から出てきた片言野郎をフェイBとしときましょか。

 フェイAは相も変わらずアタシ達を嘲笑いながら、尚も風の刃を乱射してくる。一方のフェイBはと言うと、やはり意味不明な言語を発しながら風の刃を乱射してくる。


「お、お前ら、バカなのかぁ~っ!?」

「レ、レイアさんっ! このままじゃ持ちませんよぉ~っ!」


 情けない事をいいつつも、ソード・ガンで応戦するまでに成長したか、アスト君よ。


「確かに、このままじゃ埒が明かないわね。誰か、この状況を打破出来ない?」


 無理を承知の言葉だと言う事は承知の上。だけど、今は藁をも掴みたいの。

 しかし、全員が二人のフェイを相手にするだけで手一杯な状況。

 アストとジェフはミリューとパイちゃんを守る事でいっぱいいっぱいだし、ハルとリサとエルマとポールも負傷したカイルを庇うだけで精一杯だし、攻め手はアイルのみ。

 ……あれ? エミリーはどこ行った?


「ねぇ、ポール。エミリー知らない?」

「エミリー? そう言えば……居ないな」





 ……まさか、やられた?

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