第4話 豹変する二律背反(Ⅱ)
下らない文句が書かれた扉を押し開け、細心の注意を払いながら、ゆっくりと一歩ずつ先へと進む。
彼等が必ず追い付いて来ると信じて。
扉の向こうにはだだっ広い空間が広がり、部屋の中央には上階へと続く螺旋階段が鎮座している。
「行くぞ! 課長達が来る前に俺達で片付ける」
リックが不在の際には陣頭指揮を取る立場にあるのだろう、係長のポールがアタシ達を鼓舞する。しかし、そんな彼をルミがたしなめる。
「焦っては駄目よ、ポール! ここは慎重に行かなくちゃ!」
役職の事は良くわかんないけど、係長ってそんなに偉くないのかしら?
ルミの言葉を受け、慎重に……極めて慎重に進んで行くと、ジェフが何やら異変を感じ取った様子で周囲360度、至る箇所に集中力を張り巡らせている。
「気を付けて下さいっ! 何か、何かが来ます。これは!?」
「ジェフ、あれは……っ!」
ミリューが指差す先に見えた物。見忘れるハズも無い。アレは……
パイちゃんも最大限の警戒態勢を取る。
「レイアッ! ゲートが開くわよっ!」
ここで来るのか、奴が……相変わらず、空気も読めない『奴』が。
ヴゥゥゥン、と奇妙な機械音が響き渡る。
あり? 前回ってこんな音したっけ? と思ったら、後方でポールが超振動剣を起動させていた音だった。
……って、超振動剣ぉ!?
「ちょ、最近の公務員は兵器の携帯オッケーなワケ!?」
超振動、あるいは高周波振動と呼ばれる技術は、前時代から既に医療機関から日曜大工まで幅広く実用化されている。
当然、兵器にも、だ。
しかし、アタシ達一般人にはその携帯許可は下りていない。
余りにも威力が強すぎるからだ。
ソード・ガンも十分に威力はあるのだが、一般向けのそれは出力が最小に調整され、ハッキリ言って殺傷能力は皆無に等しい。
リミッターを解除された武器は、軍隊か海賊かトチ狂った犯罪者が持つ程度だ。
なのに、だ。
何で、ただの公務員がそんな武器を持っている?
「我々の任務に必要だと感じたからさ」
答えになっちゃいないが、今は何も聞かないでおいてやろう。アタシってば優しい~♪
勿論、当然、すべからく、本心では無い。
クリスには気付かれていたらしく、目配せで合図を送ると、親指と人差し指で輪っかを作って返事をしてくれた。持つべきものは悪友ね。愛してるわよ、クリス♪
……当然、友達としてね。
そして、完全に実体化したゲートの向こうから姿を現したのは……




