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第2話 神話と役所と秘密結社の因果律(Ⅰ)

「何なのよ、ここは?」


 愚痴るのは誰だ?


「ちょっと~! 明かりぐらい点けてよねぇっ! でも、暗いままってのも逆に興奮するかも……イタッ!」


 愚痴りの主がクリスだと分かった瞬間、声のする方目掛けて平手を振る。ペシンッ! と、心地好い音が静寂の中に響く。見事に後頭部にヒットしたようだ。


「誰よ、今の!?」

「アタシよ」

「お前だったのか」

「驚いたか……ってバカやってんじゃないわよ。常夜の国ってくらいだから、ある程度は覚悟してたけどさぁ……ホントに真っ暗ね」

「見事なまでにね」


 まだ目が慣れず、お互いの顔さえも見えぬ中では声だけが頼りなのだが、他の奴らの声が聞こえないのはいかがなものか?


「アスト~? シン~? ミリュ~? パイちゃ~ん? ジェフ~? みんなどこにいんの~っ!?」


 あのトラベラーズ・ゲートを通った時の感覚は、明星の国のソレとは何かが違っていた。それが何なのかは上手く説明出来ないけど……多分、シンなら分かるんだろうけどなぁ。

 グチグチ考えてても仕方がない。クリスと二人で暗闇の中をハンディライトで照らしながら手分けして近辺を散策する。

 幸いな事に、数分歩いただけでミリューとパイちゃんとジェフに再会する事が出来た。

 残念ながらアスト達とは、はぐれてしまったようだけど、まぁ、奴らの事だ。どっかで生きてるでしょ。

 そして、だ。

 パイちゃんが先程から異常に警戒しているモノがある。


「おねーさん……ここから何か嫌な匂いがする」


 微かな星明かりに浮かぶ、眼前にそびえ立つこの建造物に興味をソソられない訳が無い。

 確かに、あからさまに怪しい。

 記念に画像保存しちゃお♪

 モバイルで撮った瞬間、着信を伝えるバイブが鳴り少しビビったが、着信の主がアストだったため、一安心と同時に何だかムカついた。


「アストッ!? アンタ今何処に居んのよっ!?」


 八つ当たりもいい所だったかも知れない。

 ……ちょび反省。

 反省終わりっ!




 これまた幸いにも、アタシ達以外のメンバーはアストと合流していた。ミリュー達も一安心といった所だった。


「しかし、シン様がいらっしゃらないとなると、いささか困りましたな」


 昨夜――という表現が正しいのかは分からないが――シンが修理したジェフの右腕は、実はまだ完全ではなく、最終メンテナンスがまだ完了していないそうだ。

 傍目(はため)には全く見分けがつかないが。

 てゆーか、シンの悪い病気が出てなきゃいいんだけどさ……




 取り敢えず、この暗闇の中じゃアテも無く彷徨(さまよ)う訳にもいかないので、目の前にある建物の中にでも入ってみよう。

 一応、ある程度の予想をして防寒対策をしているのだが、このままでは凍えてしまうので暖を取る目的も兼ねてね。

 擬似とは言え、太陽のありがたみを感じてしまう。

 と、その時。

 再びモバイルに着信が入る。

 またアストかと思ったが、編集長だったのでガン無視を決め込んだ。だって、面倒いんだもん。


「レイアさん、いいんですか?」


 ミリューが心配してくれるが、それはハッキリ言って無駄な事だ。


「い~の、い~の。どうせ無駄話しかしないんだから、あの昼行燈は」


 編集長(ひるあんどん)の与太話に付き合って、この先の出鼻を挫かれたくは無い。おそらく、この先に待っているのは奴らしかいないのだから。

 と、気合いを入れ直した所で、アタシは自分の職務を既に半ば忘れかけている事に気付いた。

 ……そうだ。

 アタシはジャーナリストだ。

 正義の味方でも何でもない。ここは、永久心臓の謎を追い掛けている内に辿り着いた場所に過ぎないのだ。

 ……だけど。

 成り行きとは言え、今更引き返すのもアタシの性分に合わない。乗り掛かった船を途中下船なんて出来ない。うん、インタビューは諦めよう。

 だがしかし。

 永久心臓を巡り起こった一連の出来事だけは、余す事無く全てを白日の下にさらけ出そう。




 この先に何が待ち受けようと。

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