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第1話 ヘタレの決意表明(Ⅰ)

 やっぱりトラベラーズ・ゲートのあの感覚には慣れないものだ。例えるなら、ジェットコースターとフリーフォールとバンジージャンプを同時に味わうような気分……かな?

 イヤな気分を味わいながらも辿り着いた先は、恐ろしい程に何も無い、ただただ静寂と深淵の闇だけが広がる世界だった。

この世界の何処かに、あのDOOMとフェイ、そしてミリューさんのお父さんである明星の国の国王や国民がいるのだ。

 そして、僕達の目的でもある『永久心臓』の謎を解き明かすべく、レイアさん達と作戦を練るはずが……


「……あれ?」

「そこにいるのはアスト君かい?」


 ハンディライトで僕を照らす声の主はシンさんだ。その傍らにはカイルさんとハルさんとエルマさんとリサさんがいた。

 彼らの他に、人影は見当たらない。居なくてはいけない人達が……居ない。


「シンさん、レイアさん達は?」


 辺りを見渡すが――と言っても真っ暗闇なのだが――やはり彼らの他には誰もいない。


「どうやら、ゲートに罠が仕掛けてあったようだな」

「罠って、カイル……まさか?」

「確かに、ちょっと妙な感じだったわよね」


 あ、そう思ったのって僕だけじゃなかったんだ。

ん……罠?


「カイルさん、罠ってどういう事ですか? てゆーか、一体誰がそんな事を!?」


 矢継ぎ早に問い詰めるも、カイルさんは冷静に受け止める。


「おそらく、ゲートの中の道を分断していたんだろう。多分、他の人達もこの国に辿り着いてはいるだろうけど、何処にいるかは分からないな」


 カイルさんの言葉を受け、シンさんが分析する。


「そんな芸当が可能なのは、DOOMか、若しくはフェイ……かな?」

「十中八九……そうだろうな」


 ……二人の会話に入り込めない。 ここに来て、僕は自分が何をすればいいのか分からなくなってしまった。

 ……自分自身の不甲斐なさに苛立ちを覚える。そして……僕は……今までどれだけレイアさん達に頼りっぱなしだったのかを痛感した。

 こんなんじゃ、レイアさんに男だと認めて貰えるはずも無い。




 ……恥ずかしい。




 自分が恥ずかしい。




 無力な自分が、では無く、無力だと思い込んで何もしてこなかった自分が、だ。たとえ無力でも、何かしらアクションを起こせば、何かが変わるかも知れない。

 だが、僕は何もしなかった。波風を立てる事を恐れていたのかも知れない。だけど、シンさんやカイルさんは違う。こんな状況下であってもうろたえる事無く、次に何をするべきかを思案している。今までの僕は、そんな事すらも敬遠して来たのだ……

 やってやる。

 僕にも何か出来る事がある。

 皆の力になりたい。

 変わらなくちゃならない。

 僕にはシンさんの様な知恵や知識も無いし、カイルさんやハルさん、エルマさん、リサさん、パイやジェフさんの様な特別な力も無い。

 ましてや、レイアさんやクリスさんの行動力、決断力も持ち合わせてなければ、ミリューさんみたいなカリスマ性など有る訳が無い。

 それでも……僕だけの武器がきっと有るはずだ。

 自分を信じて今は前に進むしかない。


「……行きましょう。きっとレイアさん達は先に進んでるハズです。だから、僕達も行きましょう」

今はこんな事を言うのが精一杯だ。でも、これで何かが変わるかも知れない。その証拠にこんな言葉を貰ったからだ。

「……アスト君、いい顔になったな」

「ああ……そうだな」

 僕は小さくも大きな一歩を踏み出した……と、思いたい。

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