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第6話 指輪の【適合者】(Ⅱ)

 カイルさんの口調は重く、苦々しい物だった。同族の裏切り、増長を止められなかった自責の念、様々な思いが入り混じった物に違いない。


「その、シャーマン、ってのは誰でもなれるモノなワケ?」

「バッカねぇ、クリス。アタシ達がなろうったってなれる訳が無いじゃない。ましてや精霊使いにもなれないのに」

「バカとは何よぅっ! 最初にバカって言った方がバカなんだからっ!」


 子供の喧嘩はほっといて。


「シャーマンとは、精霊と交信し、会話する事が出来る存在だ。そして、複数の精霊の力を操る事が出来る」

「つまり、フェイはシャーマンになろうとしていたのかい?」

「いや……どんなに凄いシャーマンでも、多くて三種類の精霊を操るのが限界だろう。精神力が持たない。この村のシャーマンが最高位だと思う」


 この村にそんな人がいたのか……


「でも、その人はDOOMの襲撃の際に亡くなったのね?」


 意外とあっさり子供の喧嘩は終戦を迎えたようだ。


「ますますDOOMが許せないわね。あと、あのフェイも。イケメンだからってやっていい事と悪い事があるってのよね!」

「それは君の個人的感情が過分に入っている気がするが……まぁ、ボクも同じ気持ちだ」


 全員の気持ちは一致しているようだ。さすがはロイス・ジャーナルの同僚、以心伝心とはこのことかな? しかし、そのシャーマンに会ってみたかった気もするなぁ。


「シャーマンは死んでなんかいない。彼女がそう簡単に死ぬハズがない」


 彼女? 女性だったのか。


「じゃあ、そのシャーマンに会えるのね? ぜひインタビューしてみたいものだわ。でも、今はミリュー達の方が優先ね。急いで探さなきゃ!」


 レイアさんの一言で、僕達はミリューさん達の捜索を再開する。程無くして、クリスさんが大声で僕達を集合させる。


「みんな~っ! こっち、こっち~!」


 どうやら無事だったようだ。


「クリス、お手柄! ミリュー! パイちゃん! ジェフ! 大丈夫!?」


 レイアさんが駆け寄った先には、ジェフがミリューさんを護るように仁王立ちで立っており、太古の神話に登場するムサシボウ・ベンケイさながらの威圧感を放っていた。その陰にミリューさんと村長と三人の女性がしゃがみ込んでおり、ジェフの(かたわ)らには見知らぬ少年が立っていた。


「皆さんこそ、御無事で何よりです。こちらは何とか持ち堪えましたが……」


 そう言うジェフさんの右腕は、肘から先が無くなっていた。


「これではフライパンを振るう事もままなりませんなぁ」


 はっはっは、と豪快に笑い飛ばすも、僕にはそれに愛想笑いすら返す事が出来なかった。

 そのボロボロの姿を見れば、どれ程の激戦だったかが窺い知れたからだ。


「君の腕は、後でボクが直しておくよ」

「感謝致します、シン様」


 シンさんがいてくれて良かった。


「ミリュー、大丈夫?」

「レイアさん……はい、何とか無事でした。ジェフとパイとこちらの方達の御助力のお陰です」


 こちらの方達、と言うのは、村長、三人の女性、そして、この白いローブ、と言うかサープリスを羽織った白髪の少年の事だろうか。しかし、どう見積もっても、全員護ってもらう側だと思うのだけど。

 それにしても、この子は誰だ? ゲッタンガーZの上映会場にこんな子いたかなぁ?

 記憶を辿ってみるが、こんな特徴のある服と髪の色だったら嫌でも印象に残るよなぁ?

 ……うん、やっぱり記憶に無い。シンさんにも聞いてみるが、やはり記憶に無いとの事だった。

 ……しかし、この子の眼差しはどこかで見た事があるような気がする。


「オイラの事が分かんないみたいだな?」


 (いぶか)しがっていた僕をみかねてか、少年が話し掛けてくる。ん? オイラ? それにこの声?


「もしかしてお前、パイか!?」

「そーだよん♪ いつ気付くかと思ってたけど、だ~れも気付かないみたいだったからさ♪」


 それは、あのちっこいフェレットみたいなドラゴンの姿からは想像もつかない、まさしく人間の少年の姿なのだから、誰も気付くハズが無い。

 そんな少年パイを、レイアさんとクリスさんは小躍りしながら囲む。この人達の可愛いモノ好きにも困ったもんだ。




 それと同時に、僕はあの話を思い出した。

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