第5話 phantom crisis(Ⅰ)
アストからの連絡を受け、アタシ達はおぺら座へと向かう事となった。
アイルに救われたと言う唯一の生き残りの男性の事は……まぁ、連絡を受けたのが女子会の真っ最中だった事もあり、三人組にも情報がダダ漏れになっており、その結果、彼女達も同行することになってしまった。
情報がダダ漏れ、とは言ったが、要は通話内容をしつこく聞かれたのだ。酔っ払いは遠慮と言う物が無くなり、やれ、相手は男なのか、から始まり、イケメンなのか?どういう関係なのか? 等々、根掘り葉掘り聞いてくるから始末に負えない。
挙げ句の果てには『私達もついて行っていいですかぁ?』などと言い出し、そのまま押し切られてしまった。
この女子会で、酔っ払いには勝てない事だけは痛い程解った。
程無くしてミリュー達と合流すると、酔っ払い女子の矛先はパイちゃんへと移った。
イケメンよりも可愛いモノが勝つのか。やっぱり可愛いは正義よね。
「あの……レイアさん……これは一体?」
揉みくちゃにされているパイちゃんを横目にミリューが言うが、まぁ、それも無理も無い話か。
「うん、まぁ、ね。色々あってこの子達も一緒に行く事になっちゃってね。んで、見れば解ると思うけど、軽く酔っ払っちゃってんのよね」
「軽く、ですか……」
ミリューの顔が少しばかりひきつっているが、ここは敢えてスルーしよう。
もう一人の酔っ払いはと言うと、まだ呑み足りない様子で両手にビール瓶を持ってラッパ呑みをかましている。
呆れるのを通り越して尊敬に値するわ。
散々揉みくちゃにされたパイちゃんは、可哀想にもへろへろになり、目を回しながらよろよろとミリューの元へと戻っていった。
「このおねーさん達……怖い……」
御愁傷様。
酔っ払い四人組を引き連れ、アスト達が待つおぺら座へと向かう道すがら、ジェフが耳打ちをしてくる。
「レイア様。実は、先程フレイア様から伺ったのですが、おぺら座には何やら怪しい噂が有るようでして……」
「怪しい噂?」
「ええ。どうやら先のDOOMの襲撃以降、おぺら座には何者かが棲みついているとの事ですが、アスト様とシン様の安否が気遣われるのではないかと」
ソレが何なのか皆目見当も付かないが、DOOMの手先である可能性は否めない。だとすればアスト達が危ない! しかし、こちらの戦力はアタシとジェフ以外は期待が持てない。パイちゃんとミリューにも頑張って貰うしかないか。
……後はポンコツばかりだし。
「アイツ、無茶してなければいいんだけど……ま、シンが付いているなら……うん、余計危ないわね」
「レイアさん、急がれた方が良さそうですね」
ミリューの言葉に頷き、アタシ達はおぺら座へと足を急がせた。
催事場から少し離れた場所にある、多目的ホールのような建物。それがおぺら座だ。辺りには大勢の子供達が、まるで何かに脅えるように身を寄せ合っていた。
そして、入口に立っている一人の見知らぬ男。
……男? つまり、彼がアイルに救出されたと言う訳か。
それにしてもアスト達は一体何処にいるのだ?
「ねぇねぇ、レイア~? あろこに居るろってぇ~ワラシには男に見えるんらけろぉ~、どぉゆぅ事ぉ~?」
こんな時に絡んでくるなよ、酔っ払いめ。
「えぇ~? 誰? 誰? 何処から来たのぉ?」
「どんな人ぉ? カッコいい~?」
「早く行ってみよぉよ!」
酔いどれ女子共めぇぇぇぇ!
「つーか、アナタ達も知らない人なの?」
この村の住民ならば、彼女達も知らない筈が無いだろう。住民の少ない村だし。
「う~ん、あれぇ? もしかしてぇ……?」
ハルが何事かに気付いたのを皮切りにエルマとリサも「あ!」と声を上げる。やはり顔見知りだったようだ。
ゆっくりと近付いて行くと、おぺら座の入口で待つ彼もこちらに気が付いた様で、こちらに向かって手招きをしている。
「アンタがレイアさんかい? あの二人ならこの中の天井裏だよ。何だかヤバそうな雰囲気だったけど、多分大丈夫だからここで待ってればいいんじゃないかな? って、何で君達三人が居るんだ?」
「それはこっちの台詞よ、フェイ」
フェイと呼ばれた端正な顔立ちの男は、これまでの事の顛末を語り始めた。




