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iDENTITY RAISON D’ETRE 【 アイデンティティー・レゾンデートル 】第一部  作者: 来阿頼亜
第1章 カフェ・オ・レはスクープの薫り……なんかするかぁっ!
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第1話 レイア・ルシール(Ⅱ)

「ところでレイアさん、その『永久心臓』っていうのは一体何なんですか?」




 永久心臓エターナル・ハート




 その起源はとある惑星にあり、遥か遠い昔に実在した人物の心臓なのだそうだ。

 永久心臓を移植された者は、人を越えた力、あるいは人とならざる力を手に入れると伝えられ、心臓を巡っては数多の血が流されてきたという、曰いわく付きの代物。残されている文献によると、ある惑星がその心臓を巡る争いで滅亡してしまったそうだ。真偽の程は怪しいものだけど。しかし、人を狂気に駆り立てる程の影響力、あるいは魅力、いや、魔性と言ってもいい。そんな力を持つ物ならば、一いちジャーナリストならずとも興味はある。

 あるいは考古学者などのセンセイ方ならば知的好奇心を掻き立てられるには十分過ぎるくらいの御馳走だろう。


「それにしても永久心臓なんてモノ、本当にあるんですかねぇ?」

「だーから、それを確かめるためにココに来たんでしょ! グダグダ言ってないで早くチェックインするわよ」


 拠点となる宿に行って……いや、考えるのはとりあえず置いといて、早くシャワーを浴びてカフェ・オ・レ飲みたいわ。


「レイアさん、チェックインOKです」


 御苦労さん、小間使い。

 完全オートメーション化されたホテルは、ロボット達が全ての業務をつつがなくこなしている。なので、いくらアンポンタンのアストでも容易にチェックイン出来るだろう。

 まぁ、事前にネットでスイートルームのシングルを二部屋予約してるハズだし。

 ……小間使アストいが。


「さてさて、早速部屋に行きますか! あ、シャワーを浴びる前に編集長に連絡……しなきゃダメかな?」

「そうですね、一応報告くらいはしておいた方が良さそうですね」


 むう、さもありなん。

 ターミナルを出て徒歩5分の場所にあるビジネスホテル。一等地も一等地だ。そんなホテルのスイートルームともなれば流石であり、必要なアメニティはしっかり揃っているし、部屋も広いし壁に架けられている絵画もなかなかいい雰囲気を(かも)し出している。誰の絵かは知らんし興味も無いけど。

 ……しかし。

 スイートルームのシングルのハズだが、何故にベッドが二つあるのか。そもそも、いくらスイートと言っても、シングルでこれは広すぎやしないかね。この惑星ではこれがデフォルトなのかしら。


「アスト、これ、ちょび広くない? ここホントにスイートのシングル?」

「いや、実は、その……」


 顔を赤らめたかと思いきや、俯うつむいたまま両手の人差し指を絡めてグルグルと回しだす。お前は花も恥じらう乙女かっ。


「何よ? 男だったらハッキリ言いなさい」

「いや、あの……ですね、ここのホテル、スイートはダブルからしか無いんですよ。シングルだとスタンダードしか無くてですね……」


 何だ、この奥歯にゴボウのスジでも挟まったような歯切れの悪さは。


「つまり、その、レイアさん、スイートじゃなきゃやだっ! って、編集長に食って掛かってたじゃないですかぁ……でも、スイートルームはダブルしか無いし」


 なるほど。アタシの責任なのかしら、これ。何か違うような気がするケド。


「おっけ、分かったわ。じゃ、荷物はその辺にテキトーに置いといて。アタシはシャワー浴びるから後で合流しましょ。自分の部屋に戻っていいわよ」

「いや、それが、その……」


 さっきから歯切れが悪いなぁ。ホントにゴボウのスジが挟まってるのか。そういえば、さっきの機内食にゴボウサラダがあったかしら。


「何よ?」

「部屋、ここしか、取ってない、です」

「ん? だからスイートはダブルしか無いんでしょ? アストの部屋はどこ? シングルで取ってあるんでしょ?」

「いや、だから、予算的にこの一部屋だけしか予約取れなかったんですよ!」

「ふん、笑えないジョークね。30点。さ、アンタも準備してきたら?」


 真顔で言うには足りない。アタシを笑わそうなんて四半世紀早い。


「いやいやっ! 本当なんですよ! フロントでルームキーを一つしか貰ってないでしょ?」


 冗談は顔だけにしろと喉元まで出かかったが、こう見えて割と顔だけは良い。

 ……まあ、頭はアレだが。


「じゃあ、アンタはどこで雨風を凌ぐの? まさかテントでも持って来てんの?」

「持って来てません」


 だから、真顔で言うなっての。小さなため息を一つ吐き、ちょっと思案して直ぐに考えるのをやめた。考えたって仕方が無い。こうなってしまったからにはもう、なるようにしかならないわ。何かあったらコイツに全責任を取ってもらうだけだし。


「……しゃーないわね。ま、アンタならチワワより安全か。とにかくアタシはシャワー浴びたいから、どっか行っといで」

「それじゃ、その辺りで情報を集めてきます。ルームキーは一つしか無いので置いて行きますから、終わったら連絡して下さいね」

「りょーかい。あ、あとカフェ・オ・レ買ってきてね」

「はいはい……」


 『はい』は1回で良いっつーの。

 作者からの注釈


 この物語は主人公であるレイアとアストの二人の視点から描かれております。一話ごとに主観が変わる『ザッピング・システム(的な)』手法を取り入れておりますが、まだまだ使いこなせていないのが現状ですね……ルールに縛られて無理矢理感があるかもしれませんが御容赦下さいまし。

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