第5話 天才と人災は紙一重……なのか?(Ⅰ)
発現したゲート……そこから現れたのは……
「ようやく追い付いたわ、DOOM! 覚悟しなさい!」
「慌てなさんな。取り敢えずコレを持っときなさいって」
一組の男女……しかも、その二人には……見覚えがある。
男性の方は白衣に分厚いメガネに手入れ不要の茶髪のボサボサ頭、女性の方は金色メッシュの入った長い黒髪に、上下を赤で統一させたレザージャケットとロングのスリットスカートに身を包んでいる。
――間違いない。僕達の同僚だ。それも、ここぞと言う時に一番、とは言わないが、頼りになる大切な仲間。
「クリスにシン!? な、何でアンタ達が? ってゆーか何でゲートを開いて来んのよ!?」
そこから現れたのは、紛れもなく我がロイス・ジャーナルのジャーナリストである、クリスティーナ・サクラノとシンジロウ・ゴウトクジだった。
二人は僕の先輩で、クリスさんとレイアさんは同期入社で、シンさんはレイアさん達よりも一年先輩だ。シンさんと僕は共通の趣味もあり、何かと仲良くさせて貰っている。
「やあ、アスト君、元気だったかい?」
右手をシュッと挙げてあっけらかんと言う、何だか拍子抜けするこの感じは間違いなくシンさんだ。
「シンさんもお元気そうで、って、そんな呑気な事を悠長に言っている場合じゃ無いんですよ!」
「あら、レイア。こんな所で会うなんて奇遇ねぇ」
その長い髪をかき上げながら言う仕草は、これまた間違いなくクリスさんだ。
「相変わらず悪趣味なファッションね、クリス。って確かにアストの言う通りね。グズグズしてる暇は無いわ。クリス達も手伝って!」
DOOMと量産型DOOMのポルターガイスト攻撃は更に勢いを増してくる。
「あの時のジャーナリスト達か! 何故、貴様達がゲートを!?」
全員が知りたがっている事だ。いくらシンさんがIQ199の天才だとしても、そう簡単に作れる様な代物じゃない。
「ボクにかかればこれくらい朝飯食って晩飯前には出来上がるよ。ま、元々、次元科学は学習済みだったからね」
牛乳瓶の底の様に分厚いメガネのブリッジを人差し指で直しながら話すシンさん。ちょっとカッコいいかも。てか、作ったのぉぉぉぉっ!?
次元科学とか、聞き慣れない言葉が出てきたが、この際気にしないでおこう。
「クリス! 何か武器持ってる?」
「そうねぇ、さっきシンがくれたアサルト・レールガンならあるわよ?」
「あげた覚えは無いが……」
「おっけ。それで十分! ちょっと貸して!」
「ちょっと、レイア!」
言うなり、クリスさんの手元からアサルト・レールガンをブン取ったレイアさんは迷う事無く銃口をDOOMへと向ける。
「みんな、伏せろ!」
シンさんが全員に向かって叫ぶ。
次の瞬間……
「吹ぅきぃ飛べぇぇぇぇ~~っ!」
躊躇うこと無くレイアさんはDOOMに向けてアサルト・レールガンをぶっ放した。
青白い閃光と共に思念体であるDOOMを吹き飛ばし、ついでにホテルの壁も吹き飛ばした……




