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第4話 悪意の存在理由(Ⅱ )

 レストランの中は静まり返っていた。

 ま、元々アタシ達しか客はいないのだが、そんな中招かれざる客の言葉だけが不気味に響き渡る。


「奴らはオレの事を嗅ぎまわっていたようだが、お前らも同じようだな」

「同じ扱いにしないで貰いたいわね。アイツらが何をしようが知ったこっちゃないわ。アタシ達が知りたいのは永久心臓の事だけよ」


 そう言った途端、DOOMの表情が一変する。


「貴様! どこでソレを嗅ぎ付けた?」


 DOOMの思念体が直線運動でアタシの眼前に迫って来た。近いなぁ、もぅ。それに嗅ぎ付けたって何よ? アタシは動物じゃないしっ!


「アンタさぁ、ジャーナリストが何たるか、を知らないみたいね。アタシ達の武器は情報なのよね。永久心臓、アンタ、持ってるんでしょ? ネタは上がってんのよね!」

「レ、レイアさん! 脅しを掛けてどうするんですかっ!?」

「貴様らジャーナリストと言うのは、常識という物を知らぬのか?あの二人もそうだったが」


 ワルイヒトに呆れられるってのもなかなか貴重でオツな経験ね。てか、アイツらがやらかした事って、コレかしら?

 いや、もっと他にドエラい事をやり散らかしてそうよね。


「貴様、先程ジャーナリストの武器は情報、そう言ったな?ならば、永久心臓を持つ、と言う事が何を意味するか、知っているか?」


 永久心臓を持つと言う事? それは即ち、不死を得る、と言う事かしら? DOOMの問い掛けには他にも意味がありそうだけど?

 考えても答えは他に見つからなかったが、アタシ以上に因縁を抱えているミリュー達にはどうでもいい事だったに違いない。事実、ミリュー、パイ、ジェフの御三方は、こっちのやり取りなど御構い無しにDOOMへと向かっていく。


「DOOM! 我が国の民達をどこへ連れ去ったのです! 今すぐ解放なさい!」

「解放、と? フッハハ、笑わせてくれますな。アナタの国の民など、もういない。いるのは、我が国民よ!」

「我が国民……?」

「そう。我が国民だ。お前達は脆弱な土地で矮小な国家を形成して満足しているようだが、オレは違う。この国を、いや、この惑星を一つの国家とし、繁栄させ、全銀河の頂点に立ち、全銀河を手中に収めるのだ!」

「その為に、国民をさらったのか!」


 ビームガンの銃口を向けたままジェフが言う。


「拐った訳ではない。奴らが勝手に付いて来たのだ。まぁ、多少は脳に手を加えたがな。従順な下僕と言うのは、ああいう輩の事なのかも知れんな」

「貴様っ!」


 ビームガンが火を噴いたが、ここにいるDOOMは思念体だから通じるはずも無く、後方に飾られた額縁の絵を貫いた。

 ま、それでも撃ちたくなるわな。コイツの言い分を聞いていると胸クソ悪くなるわ。

 国家の繁栄を望む。それは、当然の事なのかも知れない。しかし、それにはやり方ってもんがある。とりあえず、コイツのやり方には虫酸が走る。


「あーもーヤメヤメ。こんなんじゃ取材になんないわよ! でも、一つだけ分かった事があるわ。アンタがとんでもない最低最悪のアウトロー野郎だって事がね」

「外角低め?」


 アストの下らないギャグに軽く殺意を覚えながら、全力の舌打ちをかましてやる。


「お前、ホントにバカだな」


 パイちゃんからも冷めた目で見られるなんて……ちょっとだけ同情……なんてすると思うなよ! 空気読め! ボケッ!


「レイア、と言ったか。お前は永久心臓の本当の価値を知らぬ。そんな者に永久心臓の何たるかを知る権利は無い。潔く、この惑星から立ち去れ」


 ありゃ? まさかの取材続行?


「立ち去れ、と言われて、はい、そうですか、と引き下がっているようじゃ、ジャーナリストの名折れってもんよ。簡単に諦めてたまりますかっての!」

「そうか。ならばやはりここで消えて貰おうか……王女共々な!」


 アタシの眼前から微動だにしなかった思念体のDOOMが突然動きだし、右手を上に挙げる。それだけの動きで周りの景色が歪みだし、テーブルやら椅子やらが宙に浮き、アタシ達目掛けて飛んでくる。


「レイアさんっ! これってポルターガイストってやつですかね!?」


 アストが器用に避けながら言うが、アタシはそれどころじゃないっつーの!


「おねーさん、大丈夫!?」


 口から火炎を出して飛来物を豪快に燃やしながらパイちゃんが助けてくれる。


「ありがと、パイちゃん。ナイスアシストよ」


 親指を立てて答えながら、ミリューの方をチラ見すると、ジェフがビームガンを乱射しつつミリューを保護しているのが見える。とりあえずは一安心かしら。


「レイアさんっ! 一旦外へ逃げましょう!」


 アストがアタシの腕を掴んで店の外へ連れ出そうとする。それもまたやむ無しか。


「仕方無いわね……みんな、外に出るわよ」

「逃がさぬ!」


 DOOMもすかさず追いかけてくる。宙を舞いながら来るもんだから、どうやったって奴の方が先に店の出口に立ち塞がる。ずっこいなぁ、もう。


「そぉぉこをぉぉぉどぉぉけぇぇぇぇっ!」


 やけくそで飛び蹴りをかましながらDOOMへと突っ込む。

 ……スカートじゃなくて良かったわ。

 しかし、アタシの渾身のドロップキックは虚しく空を切り、DOOMの身体をすり抜け、豪快に廊下へとスライディングする。

 後から突っ込んで来たアストもアタシと同じく廊下へとスライディングしてくる。

 但し、ヘッドスライディングだが。

 続いて、ジェフがミリューを抱えてやってくる。(当然、お姫様抱っこだ)

 パイはと言うと、いつも通りミリューの胸元へと潜り込んでいた。

 残留思念体だから、当然すり抜けられる。これ、自然の摂理ね。

 肩で息をして、ようやく呼吸を整えていると、アタシの顔の真横を何かが通り過ぎる。ふと前を見ると……いる。パッと振り返るとそこにも……いた。


「え? え? 何?」


 前後を交互に見返すも、その両方に奴はいた。


「レ、レ、レ、レイアさん! 何でDOOMが二人いるんですか!?」

「そんなのアタシが聞きたいわよっ!」

「逃がさぬ、と言った筈だ」

「貴様にはここで死んで貰う」


 前後からのサラウンドで処刑宣告ぅ? 残留思念体だから、量産も可能ってワケ? う~ん、これはかなりマズいわね。前門の虎、後門の狼の方がまだマシなレベルだわ。


「ジェフ、何とかなりませんか?」


 ミリューの懇願にジェフは首を横に振るばかり。パイもエネルギー切れみたいで、舌を出してへたばっていた。

 万策尽きたかと思われた時、さらに追い撃ちを掛けるかのように、再び空間に歪みが生じ、例のアレが浮かび上がって来る。多少形は違うが、ゲートと呼ばれる物に相違ない。

 終わった。アタシの人生ジ・エンド。

 この場から生還出来る可能性が無いとは言わないけど、限り無くゼロに近いわ。何より気力が無い。絶望感しか無い。

 つーかさぁ……アタシ、結婚もしてないのよ? それに最後の晩餐がサツマイモフルコースって。いや、まぁ、あれはあれで美味しかったけどさ。

 今まさに開こうとしているゲートからは、きっとDOOMの手下だか仲間だかが、わんさか出てくるのだ。逃げ道もDOOMと量産型DOOMに塞がれてしまっているしなぁ。辞世の句でも詠んでおこうかしら?

 しかし、だ。

 先程から何故かDOOMの様子がおかしい。


「何故ゲートが発現するのだ? 誰だ!?」


 え? 奴も知らないゲート?


「ねぇ、ミリューさん。DOOM以外にゲートを勝手に作れる奴っているの?」

「いいえ、私は存じ上げません。ジェフは何か?」

「いえ、生憎、私も存じませぬ」


 DOOMどころかミリュー達も知らないとなると一体誰がゲートを……?


「もしかして、ミリューさんのお兄さん!?」


 アストの意見は、無いとも言い切れないが、限り無く可能性は低いかも。よって却下。

 そうこうしている内にゲートは完全に姿を現し、いよいよ扉が開く。鬼が出るか蛇が出るか、はたまた邪が出るか、吉凶併せ持つ様な妙な感覚だ。




 果たして姿を現したのは……

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