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第3話 ミリュー・シギュン・パーラ(Ⅰ)

 何だか核心めいたトコに来ているみたいだ。

ミリューさんは、どうやらお嬢様らしい。その証拠に、シェフはミリューさんの事をお嬢様と呼んでいる。そして、パイの言う隠し事とは……

 でも、一番驚いたのは、シェフの名前がジェフだと言う事かも知れない、いや、そこじゃなくて。ミリューさんとシェフのジェフさんが顔見知りだと言う事だ。

 二人とも、さっきまでそんな素振りは一度も見せていなかったのに。


「私にとっては、お嬢様は今でもお嬢様ですよ。この方達と御一緒におられるのであれば、隠し事はなさらない方が良いかと思われます」

「オイラもそう思う。あと、ソレを知った後の二人の反応を見てみたいし」


 明らかに僕達の反応を見る事だけを楽しみにしてるだろ。


「まぁ、アタシは何となく想像がついてんのよね、実は」


 レイアさんの事だから、その想像に確信を持っているんだろうなぁ。僕はまだ、想像の域を越えていないんだけど……おそらくミリューさんは……


「ミリューさん。貴女は、この国の高官の娘、若しくは、この国の王女様なんじゃないかしら?」


 レイアさんの一言に、僕を含む全員が息をのんだ。いや、僕も同じ事を想像したけれど、いざ言われちゃうと、やっぱり、何と言うか、ねえ。


「やっぱりおねーさんには分かっちゃったか」


 そう言ったパイが僕の顔をジト目で見る。僕も分かってたっつーの。


「お嬢様。私めもパイも覚悟は既に決まっております」


 当のミリューさんは未だに俯いたままで、どうやらまだ決心がつかない様子だ。もしかしたら、カミングアウトのタイミングを見計らっているのか、はたまたタイミングを見失ったのか。


「そうですね。もう、このまま黙っている訳にはいかないですよね」


 そう言って顔を上げたミリューさんの目は、真っ直ぐに僕達を見据えていた。その鮮やかな朱色(シナバー)(・アイ)は、何となく今までより輝きを増している様に見えた。


「レイアさんのおっしゃる通りです。私はこの明星の国の王女でした。そして、ジェフは我が王室の宮廷料理人でした」


 じゃあ、僕達は宮廷料理人の料理を食べていたのか!


「そしてあの男、DOOMは我が国の宰相を務めておりました」


 まさか、ここでその名前が出てくるとは。


「ちょっと待って!」


 突然レイアさんが声を荒げる。余りに突然の事だったので、僕は「うひゃお!?」と声にならない声を上げてしまった。


「確か、この国ではクーデターが起こった、って言ってたわよね? もしかして、そのクーデターの首謀者ってのは」

「それは……」

「はい、レイア様のご想像通りDOOMです。奴は宰相という立場を利用し、この国を内から支配しようと目論んだのです」


 答えにくそうにしていたミリューさんを見かねたかのか、ジェフさんが代わりに答える。


「そして、奴は国王陛下と王妃様を何処かへと幽閉し、この国の実権を握ったのです」


 何と言う事だ。DOOMは紛れもない侵略者だったのだ。しかし、それなら一つ疑問が浮かび上がってくる。DOOMは一体どうやってこの国の宰相まで上り詰める事が出来たのだろうか。その旨を問い質すと、意外な答えが返ってきた。


「奴は、国王陛下が出された御触れに唯一応え、それを成し遂げてしまい、陛下直々に召し抱えられたのです」

「その御触れとは?」

「この国の発展です。元々この国は豊かな緑が溢れ、動物達と共存する平和な国でした。しかし、夕闇の国と常夜の国は、先に目覚ましい発展を遂げてしまいました」


 これから向かおうとしている国は、ここよりも更に発展しているという。そして、それを行った人物がいる。現時点で考えられる人物は、おそらく……


「DOOMね。つまり、奴は元々夕闇の国か常夜の国にいた、という事かしらね」


 その可能性は十分に考えられる。しかし、それはあくまでも可能性でしかない。

DOOMはこの国の宰相にまんまと納まった。そして、この国でクーデターを引き起こし、実権を握った。ならば何故、DOOMはこの国を中途半端で放置したのだろうか。そして、何処にいるのか。

 ミリューさんの話では、常夜の国にいるらしいのだが……いつかはDOOMと対峙する時が来るのだろうけど……出来ることなら避けたいと思うのは僕だけではないはずだ。

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