第2話 これがサツマイモの底力ぁぁぁ!(Ⅲ)
そう言えば考えを纏めるのに時間食ってたから、まともに食べたのはパスタとロールパンくらいだったかも。
「宜しければ、お代わりをお持ち致しますが?」
コンシェルジュ、では無く、シェフの申し出に二つ返事で答え、有り難く戴く事にした。
空腹も満たされて、デザートのショートケーキ(当然、これもサツマイモ製)を頬張りながら、これからの事を話し合う。
「甘~♪ うま~♪ これはベルガモットのアールグレイティーがピッタリ合いそうだわー♪」
別にカフェ・オ・レでもいいんだけどね。あ、脱線しかけた。
「ところでさぁ。あの編集長が言ってたじゃない? クリスとシンが来てるって」
「あー……そう言えばそうでしたね」
「二人と合流してみる?」
「その方達は、お二人のお仲間さんなのですね?」
「うーん、お仲間って言うか同僚ね」
「ドウリョウ? ですか?」
あれ? 『同僚』という言葉は宇宙共通だと思ってたけど、違うのかしら?
「アタシ的には、まぁ、合流するのもアリかと思うのよね」
そう言ってショートケーキのイチゴをパクリ。
……イチゴの味だ。
サツマイモのハズなのに、本当に一体どうやって作ってんのかしら? 後で取材しようかな、ってそっか、企業秘密だったっけ。
「う~ん、僕は今の時点で合流するのは反対ですね。今はそれぞれのチームで取材を進めて、ある程度のネタが揃ってから合流した方が良いと思います」
アストのクセに生意気なっ! でも、それも一理あるか。
「確かにね。今回はアンタの意見に乗っかってあげるわ。ところで、今何時?」
生憎、自分の腕時計を部屋に置いてきてしまい、時間の事はアストに聞くしかない。
「えっと、今は三時ですね」
午前なのか午後なのかは置いといて、だ。うーん、出発するか、明日まで待つか?
何だか眠くなってきたなぁ。お腹一杯になったからかな? つーか、パイちゃんなんて、さっきからやけに静かだと思ってたら、ガッツリ寝てるし。
「あのぅ」
「ん? 何、ミリューさん?」
「とりあえず、出発は明日にしませんか? パイも寝ちゃってますし」
そう、それだ。眠っているパイちゃん……カワイイ……じゃなくって!
「ねえ、ミリューさん。この惑星には時間とか月日とかの概念って、あるの?」
奥歯に小骨が引っ掛かっている様な嫌な感じをさっきから覚えている。
この惑星……いや、この国には常に太陽が出ている。
「毎日、決まった時間に鐘が鳴るんです。それで時間や日付を知る事が出来ます」
……アナログだ。超アナログ過ぎる。
急激な発展に偏りが有り過ぎるわ。何もかもがおかしい。
「ずっと気になっていたんだけどさぁ、この惑星の発展の仕方はちょび異常よね。オートメーション化が進んで、高層ビルが建ち並んでいるかと思えば、ほんの数キロ離れれば手付かずの田園地帯。おまけに時計も無し。航空技術も無いし、船舶技術も無い。まぁ、トラベラーズ・ゲートがあればそれは問題無いのかも知れないけど」
舌が渇きそうになり、グラスに注がれたミネラルウォーターを一舐めする。
「極め付きはあの疑似太陽。正直、考えられない技術力だわ。それだけの技術力があって、何故こうも中途半端なの? ミリューさん、何か知っているなら教えて頂戴」
ミリューは明らかに動揺している。アタシに脅えている訳では無いハズ。ちょび自信ナシ。
「ミリュー、もう隠し事はしない方がいいかも」
眠っていた筈のパイが、アタシの問い掛けに答える。やっぱりまだ隠していたのか。
「パイ。それに、ジェフ」
ジェフ? ジェフって誰よ? ぶんぶんっ! と首を振って辺りを見回す。
「お嬢様」
え? シェフ? シェフがジェフ? え? え? え? ジェフがシェフでシェフがジェフ?
つか、お嬢様って?
「ジェフ。私はもう、そう呼ばれる立場にはありません」
うん、消去法で考えても……ミリューしかいないわね。