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第2話 これがサツマイモの底力ぁぁぁ!(Ⅱ)

 夕闇の国、そして常夜の国へ向かうのは、とりあえず明日にした。アタシ達が今するべき事は唯一つ……それは、メシを食う事。

 確かこのホテルにレストランがあったハズ。

 別にアタシはグルメじゃないから、それなりに美味いモンが食えればいいんだけど、ロボットの作る料理って……どうなんだろ? ちょっと怖いような、でも、興味はあるのよね。つーか怖いもの見たさな料理って……


「あ、レイアさん。ここみたいですよ」


 アストがホテルの案内図を片手に先導し、辿り着いたレストランは、いたってフツーのレストランだ。入口に掲げられている看板には『甘藷桜』と書かれている。


「……カンショロウって読むのかしら?」

「何だろう? 中華っぽい感じのレストランですかね?」

「アストさん、パンフレットには何と書かれていますか?」


 どうやらミリューも気になるようだ。


「ハラへったーっ!」


 パイちゃんはさっきからこればっかりだ。


「パンフレットには『惑星ロキの名産品をふんだんに使った美味しい料理をお召し上がり下さい』としか書かれてないですね」

「何それ? ホントにそれだけしか書かれてないの?」


 思わずアストの手からパンフをぶんどって見てみたが……むぅ……それ以上もそれ以下も書かれていない。


「ねえ、ミリューさん、この惑星の名産品って確か……」

「はい、サツマイモです!」


 満面の笑みで答えてくれてありがとう。お陰でアタシの顔はひきつったまんまだわ。でも、お腹は空いたしなぁ……きっと、シェフは超一流の腕を持っているに違いない!

 ……ロボットが、か?

 いやいや、待てよ。ロボットだからこそ、完璧な調理でサツマイモを素晴らしい料理に仕上げてくれるのでは!? もしくは、サツマイモをサツマイモとはとても思えないような、究極で至高のメニューを生み出してくれるのでは!?

 ……空腹は人にここまで自由なカオスを生み出させるのか。うん、一旦落ち着こう。


「よしっ! ミリュー、アスト、突撃だー!」

「ふぇ?」


 アタシがごちゃごちゃ考えている内に、パイちゃんがGOサインを出してしまったらしい。


「レイアのおねーさん、置いてくよー?」

「ちょ、ま!」


 空腹は最大の敵で、最大の難問で……


「何コレ? ちょーオイシイ~♪」


 ……そして、空腹は最高の調味料だった。

 テーブルの上に所狭しと並び連ねられたディッシュは、そうそうたる顔ぶれだった。

 酢豚にラーメン、餃子に焼売、回鍋肉(ホイコーロー)青椒肉絲(チンジャオロースー)といった中華料理はもちろん、ステーキやハンバーグ、パスタにスープにサラダ、おまけに豚の角煮や煮凝りなんて物まである。しかもデザートのアイスやケーキまで……その上全ての料理が見た目も味もハイ・レヴェル!

 本当にこれが全部サツマイモで出来ているとは……フェイクフード恐るべし。

 さらに驚いたのは、作っていたのがロボットではなく、アンドロイドだった事だ。


「お客様、当店のメニューはお気に召しましたでしょうか?」


 見た目にはアタシ達となんら変わりは無いようだが、よく見るとその皮膚は人工的であり、両腕はアタッチメント式になっており、調理の状況に合わせて取り換えが利くそうだ。しかも、この惑星で唯一人(一体?)のアンドロイドだという。

 しかし、何故に日焼けしたかのように浅黒い肌に金髪なのか……?


「ええ、最高に満足よ。つーか、ホントにこれ全部サツマイモオンリーなの?」

「はい、勿論です。厳選したサツマイモだけを使用しております。調理の工程については企業秘密になっておりますのであしからず」


 ニッカリと笑みを(たた)えながら人差し指を立て口元に付け、内緒ポーズを取るシェフ。こっちの考えを読んでいるかのような見事な受け答えだわね……コイツ、出来るな。

 アスト達も極上以上の満足感を得られたようで、僕がオイラが、と皿を奪い合っている……誰と誰かは、あえて言うまい。ミリューはミリューで、静かに黙々とではあるが、どことなく品のある食事作法だ。

 薄々感じていたのだが、ミリューはもしや……?

まだそのタイミングでは無いかも知れないけど、少し遠回しに探りを入れてみるか?


「ところでシェフ、一つ聞きたい事があるんだけどいいかしら?」

「なんなりと」


 何だろう? このアンドロイドの佇まい、シェフっていうよりコンシェルジュよね。


「……この惑星、いえ、この国は今、どうなっているの?」

「……と、おっしゃいますと?」


 その表情に変化は見られない。アンドロイドだからか? いや、さっきは白い歯を見せて笑っていたよな?


「国というからには、国家元首なり大統領なり首相なり国王なりがいるわけじゃない? そういった人はいるのかなぁ~って思ってね」


 チラリとミリューの顔色を窺うと、アタシの言葉に反応を示したかのように、ナイフとフォークを止める。


「確かに、この国には国王様と王妃様がいらっしゃいました」

「ました? 過去形ね。何があったの?」

「……クーデターです」

「クーデター!?」


 これはちょび予想外。しかし。


「ねぇ、ミリューさんはこの事を知っていたのかしら?」


 と、わざとらしくミリューに話題を振ってみる。アタシの予想が正しければ……


「……ええ、勿論知っていました。国中が大騒ぎになりましたから」


 そりゃそうよねぇ。なんせクーデターですもの。しかし、明らかに言い澱んでいる。

 とは言え、それだけの大事件が起こったにもかかわらず、なぜ報道されないのだろうか?

 情報規制が敷かれているのは、ほぼ間違いないだろう。そして、恐らくその首謀者はDOOM。まだアタシの推測の域を脱し得ないけれど。

 サツマイモ製のロールパンをくわえながら(これが何故かバターロールの味がする)考えを纏めてみる。

 クーデターにより、この国の国王と王妃は失脚、あるいは、亡くなった。そして、国王と王妃の間には当然子供もいるであろう。アタシの推察では、ミリューこそがその子供だと睨んでいる。

 まだ確証は無いが、ミリューの話し方の端々からは、それらしき痕跡が見てとれる。

 ……アタシの気のせいかも知んないけど。




 現時点では情報が迷走してるわね。まだまだネタが足りないわ。って、何か当初の目的からズレてきてない、コレ?

 うんうん唸っていると、アストが何事かを伝えてくる。


「ふぇいあふぁん、ほうふぁふぇふぁふぃんふぇふふぁ?」


 あんだって? なんつった今? つか、メシを食いながら喋んじゃねぇっ!

 もぐもぐ、ごっくん、と咀嚼物(そしゃくぶつ)を処理して改めて言い直す。


「……んぐ。レイアさん、もう食べないんですか?」


 テーブルの上を見ると、あれだけあった料理があらかた平らげられていた。




 ……マヂでか。

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