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iDENTITY RAISON D’ETRE 【 アイデンティティー・レゾンデートル 】第一部  作者: 来阿頼亜
第1章 カフェ・オ・レはスクープの薫り……なんかするかぁっ!
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第5話 太陽は今日も輝く(Ⅱ)

「気になってる事って何ですか?」

「あの太陽って何時間出てるの?」


 アタシの考えが当たっているならば、彼女の答えはきっとこう言うハズ。しかし。


「えっ?」


 小首を傾げるミリュー。つられてパイちゃんも小首を傾げる。あれへぇ~?


「どうしたんですか? ビミョーな顔して」


 アストが言うようにアタシはビミョーな顔をしていたのだろう。つか、ビミョーな顔ってどんな顔だよっ!

 さらにミリューが追い打ちをかけてくる。


「それってどういう意味ですか?」

「どういう意味って、どういう意味?」


 そう、アタシはまだ三連太陽系の仮説を捨てた訳ではない。つか、ある意味確信を持っている。じゃなきゃ、この現状に説明がつかないもん。


「あのさ、ミリューさん。この惑星って、いっつもこんなに明るいの?」

「いえ。DOOMが来てから、この国には人がいなくなったのですから、暗いと思いますけど」


 ……天然?


「いや、雰囲気の話じゃなくって。う~ん、例えば、そうね、太陽が沈んで夜が来て月が出たりとか、しない?」

「ヨル? ツキ?」


 うん、ミリューの頭上にクエスチョンマークが見えるわ! なんだかビンゴるかも!?


「つまり、あの太陽はず~っと出てるって事で間違いなさそうね?」


 アタシの質問に対して、ミリューの頭上のクエスチョンマークは絶賛稼働中のようだ。やはりアタシの仮説に間違いは無さそうだ。さすがアタシ♪ ちょび満足。んふー♪

 と、そんなアタシを尻目にアストが割り込んでくる。


「太陽がずっと出てるなんておかしいじゃないですか。有り得ないですよ。それよりも、DOOMが来てから人がいなくなったってどういう事ですか?」


 ちょ、何勝手に話題をすり替えてんのよ! コイツ、後で泣くまで説教してやる。しかし、アストのおかげで話が元に戻った。

 ね、定位置に戻ったでしょ?

 まぁ、確かによく考えてみたら疑問符がいくつも浮かぶ。

 侵略者、つまりDOOMから逃げ出した、という可能性が無くはないが、いささか不自然が過ぎる。全員がこの惑星から別の惑星へと逃れたとは考え難いし、規模は小さいだろうがレジスタンスが結成されていてもおかしくはない。仮にそれらが本当に起こったとしよう。そんな不可解な事件ならば少なからずともニュースになるだろう。そんなオイシイ案件をアタシ達がキャッチしない訳がない。

 アホ面下げて見過ごさない限りは。

 ジャーナリストが情報を入手出来ない理由、つまり、完璧に情報がシャットアウトされていなければならない。アタシの脳裏には最悪のシナリオしか浮かんでこなかった。


「まさかとは思うけど、皆殺しにされた?」

「いえ、殺されてはいないとは思いますけど、ただ、何と言うか、あの男は不思議な力で国民達を操っていたように見えました。恐らく、催眠術みたいなものだと思うのですが」


 アタシの予想、ことごとく大ハズレ。う~ん、絶賛大不調だわ。しかし、催眠術でそんな大人数を一斉になんて、普通に人間とは思えない離れ業ね。


「そして、催眠術を掛けられた人達は、まるでDOOMの下僕になってしまったかのようにDOOMと共にこの国を去って行きました」


 それがこの国、この街に誰もいない理由?


「でも、それならどうしてミリューさんは催眠術に掛からずここにいるんですか?」


 アストの疑問はもっともだ。アタシもソコは気になっている。


「私にはこの子がいましたから」


 ミリューの言葉に反応して、半分眠りかけていたパイちゃんが「ん?」と首を傾げた。


「パイちゃんが?」

「はい。この子には邪を打ち払う力が有るようなのです。だから多分、私も大丈夫だったのだと思います」


 フードに隠れて表情は読み取れないが、その声からパイちゃんに対するミリューの信頼感がどれ程の物かは推測に難くない。

 邪を打ち払う。確かに、ホワイト・ドラゴンにはその様な伝承は存在する。ホントだったんだ。言い伝えなんてモンはあくまで噂でしかない。でも、中にはごく稀に本物もある。それがこのホワイト・ドラゴンだったって事か。これはスクープかも?


「そうだったんですか。それは良かったですね」


 信じるのかよ! つか、アスト知ってた?


「オイラ、すっごいだろ!」


 やおら後ろ足で立ち上がり、胸を張るポーズを取りながらパイちゃんが言う。この子の一挙手一投足に心が癒されそうだわぁ。でも、当の本人は何で話題に上がっているのか分かってないんだろうなぁ。まぁ、そこもカワイイんだけど。


「良かった、と言えばそうなのでしょうが、それでも国の人達があんな事になってしまっては、素直に喜ぶ事なんてとても出来ません」

「まぁ、そうでしょうね。とりあえず一旦、話を整理するわね。まず、全ての原因はDOOMにある。そして、この国の人達はミリューさん以外全員DOOMに拉致られた、と」

「また、えらくザックリとまとめましたね」


 やかましいわ。


「そして、この惑星には夜が来ない」


 そう言いながらミリューの顔色を窺う。やはりキョトンとしている。


「先程もおっしゃいましたが、ヨルとは一体?」


 やっぱり知らないみたい。ようやくアタシの予想が当たるかも?


「簡単に言えば、太陽が見えなくなって真っ暗になる事よ」


 夜の説明ってこんな感じで良かったっけ?


「真っ暗……この惑星で言うならば常夜の国のような感じでしょうか?」

「ジョウヤノクニ?」


 聞き慣れない単語が出てきたぞ? 何だそりゃ? そういえば……


「ねぇ、ミリューさん。この惑星にはどれくらいの大陸、もしくは国があるのかしら?」


 アタシが生まれた惑星には大陸が七つあり、十の国があった。


「大陸の数は分かりません。まだ、未開の地がたくさん在るようですから。でも、国の数なら確か三つだったと思いますけど、パイ、分かる?」


 推定年齢153歳のパイちゃんなら知ってるかも?


「タイリクって何だ? ウマいのか、それ」


 大陸を知らないのかぁ。


「う~ん、残念ながら食べ物じゃないんだな、これが。まあ、でっかい地面の塊がいくつ在るかって事なんだけど」


 大陸の説明って……以下略。


「あ~! 地面の事か! それなら分かるぞ! でっかい地面は三つだぞ」


 少なっ! いや、これが普通なのかな?


「え? じゃ何? 一つの大陸に一つの国って事かしら?」

「そ、それはまた凄い贅沢な感じですね」


 これにはアストも絶句しているようだ。


「それじゃ、その国ってのは……つか、そもそもアタシ達がいるここは何て国なの?」


 今更ながらの質問に我ながら少々呆れてしまうが、下調べ不足は否めない。これと言うのも、この無能アシスタントのせいだ! うん、そう言う事にしておこう。

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