00. What are you name ?
「 花という“モノ”は難しい上に、儚くて
水をやら無ければ枯れ、やり過ぎれば腐る。
ほら、俺らと一緒じゃないか。 」
そんな言葉を誰かが言っていた気がする。
――遠い遠い昔の人だったかな?
思い出せないや。
でも唯一覚えているのは、
花の蜜を運んだ蜜蜂達が苦労して集めた
蜂蜜みたいな色の髪。
柔らかくて、優しくて、それは言葉にならないような手触りだった。
たったそれだけの情報が、私の脳にインプットされている。
それが何の情報なのか、どうして覚えているのかすら分からない。
分からない。
ただ一つ分かることは――花は、綺麗に咲いて散っていくということ。
見た人の心を和ませてくれたり、安らぎを与えてくれたり。
沢山の効果があって、沢山の花があって。
色んな色と香り……それに、色んな蜜の味。
何でだっけな?
蜜の味を知ったのは――。
「 弓美、そんな所に居たら危ないよ 」
誰?
「 ほら、こっちへおいで 」
あなたは誰?
弓美って、一体誰?
「 君が好きだよ 」
好きって?
「 愛してるんだよ 」
どういうこと?
分からない、何も分からないよ。
胸がぎゅっと掴まれるような痛み。
この正体は何?