No.6 キャンプ
優輝は、朝早くから起きて、昨夜用意したバッグの中身を点検していた。
チャラン、チャララン♪と携帯の着信音がなる。よくみるとメールが三通くらいたまっていた。
「はいはーい♪」
『優輝?なんでメールでなかったの?体調悪い?』
心配そうな瑞希の声が聞こえた。
「そんなことないよ。それよりどうしたの?」
瑞希はあの日以来、元気を取り戻してきていた。というか、前より心が強くなった気がする。傷やアザもだいたいは治っていた。
今日は四人でキャンプに行く予定だった。集合は10時のはず。
『んー、私、ワイシャツきたいんだけど…手首の傷かあるし…どうすればいいのかなって』
リストカットの事だとすぐにわかった。あの二人にはいってなかった。優輝は考えて答えた。
「瑞希、ワイシャツはきていいから。集合より30分前にきて」
わかった、と言い、その後簡単な話をして電話をきった。
優輝は、着替えをすませると、バッグの中身を全部いれ、あるものをとって集合場所にむかった。
†
「優輝〜!こっちだよ」
瑞希が手をふっていて優輝はそっちにむかった。
「ごめん、待った?」
瑞希は首を振る。
「ううん、今きたとこ。それより手首…」
優輝はバッグの中からラッピングされた袋を取り出してあげた。
「プレゼントだよ」
袋をあけて、入っていたものはラメが入った可愛いリストバンド。
「これでばっちり隠せるでしょ?」
瑞希はそれをさっそくつけて微笑んだ。
「ありがとう!大切につかうね」
付けていても、オシャレにしか見えない。前から選んでいたものだが、中々渡す機会もなかったから家に置いていたのだ。
そして10分後、男子二人が到着。
「遅いよ〜!」
「ごめんごめん。てかまだ遅刻じゃないじゃん」
確かに今は九時五十五分。すると相馬が悟の頭を叩いていった。
「こいつ、今日九時にいきなり花火がない、とか言いだして。大慌てで買いにいったんだ」
悟があわてて弁解をはじめようとする。でも優輝と瑞希はそれをさえぎってプッと笑いだした。
「うっわ、悟ダサ!」
「かっこわる〜」
悟は、顔を赤くして相馬を叩く。
「黙っとけっ、ていったろ!」
「さぁねぇ」
相馬はしらばっくれている。その二人の姿がまたおもしろくって、みんなで笑った。
「ここにするか」
相馬のその一言で、バーベキューの準備を優輝と瑞希が、テントを悟と相馬がし始めた。
そして準備が終わって、河でみんなで遊んでいるとき、優輝は思い出した。
「そうだ。やっぱり歌詞考えたんだけど…上手くいかないんだ」
優輝が申し訳なさそうに言う。でも相馬が微笑んで言った。
「急がなくていい。お前のペースで、ゆっくりいけばいいんだ」
その言葉が嬉しかった。うん、と優輝は頷いた。しると相馬が何かを渡すしぐさをした。
「手、だして」
そして、その手に握らされたのは四つ葉のクローバーだった。
「今さっき見つけたんだ。やるよ」
「ありがとう!」
すると悟がいきなり優輝を呼んだ。
「吉崎〜!ちょっと、こっちきて」
この一年間で相馬と悟も優輝達へのサン付けはなくなっていた。
「なに?」
悟は、岩と岩の間をのぞいていた。そこには小さな蟹がいた。
「わっ、かわいい!」
二人ではしゃいでいたら、瑞希に呼ばれた。
「バーベキュー始めるよ!手伝って〜」
はーい、と返事をして瑞希のほうにかけていく。
バーベキューは本当においしかった。お腹いっぱい食べたあと、みんなで石を投げて遊んだ。
いろんな遊びをして、いつの間にか日が沈みかけ、三日月がでていた。
ということで、メインの花火をはじめる。とても綺麗で、思わずみとれてしまった。
「優輝、最後に線香花火しない?」
「賛成!」
パチパチとかわいい音をたてながら光を放つ。星がおりてきたようで、とても綺麗だった。
「優輝はさ、好きな人とかいないの?」
「――なんで?」
瑞希が、優輝の方を見つめながら言った。
「いや、ほら。私は優輝にいろいろ助けてもらったじゃない?でも私はなんにもしてないし…」
優輝は線香花火に視線を戻し、あたりまえのようにいった。
「…私は、好きな人はいないし、きっと―――これからも、出来ないと思う。それに、瑞希には、いつも助けてもらってる。私がしている事は、あたりまえなんだよ」
瑞希が、悲しそうに聞いた。
「どうして、好きな人ができないの?」
優輝は、その質問に少し戸惑った。でも、微笑んで言う。
「つくる気ないし、私は友情だけで十分だよ」
瑞希は納得いかないようだったが、本当のことも言えないし。なんとか、誤魔化して話をそらす。
「もう寝るぞ〜」
「はーい」
テントをくぐって布団に優輝と瑞希、二人で入る。つかれていたのか、すぐに寝てしまった。




