No.2 暗闇の中で
「まだ、バンド結成できないよねェ」
瑞希が窓によりかかりながらいった。優輝が不思議そうにたずねる。
「なんで?」
「だって、バンド名も決めてないし」
どうらや本気でつくるらしい。優輝も窓の外をながめてつぶやいた。
「バンド名、か」
運動場ではみんなが頑張ってハードルを飛び越えていた。
バンドと聞いて思い出すのはやっぱり中学の文化祭。歌っていたのは女の先輩でドラムをしていたのは、―――竹永先輩。
とってもやさしくて、おもしろくて、暖かい人。少し、悟には似ているところがあった。
今思ったら、好きだったのかもしれない。でも後悔はしていない…。
どうせ会えないし、会っても何もできない。しないほうがいい…先輩が幸せならそれでいい。私には、先輩を幸せにできない…。
「優輝?今日帰りモカによるんだけどいく?」
ハッとする。優輝は首をふって答えた。
「ごめん、今日用事があるから。また今度」
そう?と言って瑞希は窓の外に視線を戻した。
†
放課後。優輝は途中で瑞希とわかれ重い足取りであるところ向かった。
――――そう。優輝には人を好きになれない、先輩を幸せにできない理由があった。
ついたところは、総合病院だった。
「…吉崎優輝です」
受け付けの人に言うと、どこかに電話して、看護士の原田さんをよんだ。
「優輝ちゃん。先生がまってるわ」
うなずいて原田さんについていく。
「よくきたね。座って」
担当医師の小口先生は、めがねを光らせながらいった。
「今から審査をする。つらいかもしれないけど…」
「大丈夫です」
優輝は言葉をさえぎった。口だけの同情なんていらない。逆に、虚しくなるだけだ。
小口先生はうなずいて、近くにいた看護士と原田さんに指示をだした。優輝はそれについていった。
―――――二時間後。 優輝は同じ場所に座っていた。小口先生は検査結果をみながら言った。
「薬のおかげもあって進行は遅くなっているけど、やはり、だいぶ脆くなってるな」
優輝は何も言わずにうなずいた。小口先生は容赦なしに続ける。
「わかってるね。進行は遅くできても…」
「余命は、いつなんですか?医者だからわかるでしょう?」
小口先生はためいきをついていった。
「わからないんだよ。医者にもね。これは異例だ。明日、明後日、一年後、十年後かもしれない」 ――――これが、優輝が人を好きになれない理由、先輩を幸せにできない理由だった。
いつ、いなくなるかわからない人となんて…一緒にいないほうがいい。私がむこうの立場だったとしても好きな人にはずっと一緒にいてほしい。
私に、恋愛をする資格なんてないんだ…。
これが現実。綺麗事なんてあるわけない。私は、この病院で、テレビで、いろんなところで多くの死をみてきた。
どんなに願っても【奇跡】は起こらなかった。でも、もし【奇跡】が存在するのならば、私の病気を治して―――…
優輝は、絶望と言う名の暗闇の中に、一人で立っていた。




