No.15 伝えたいコト
広くて、蒼く深い空を、風のように、自由に飛ぶ鳥をみて、私はいつものように思っていた。
――――空が飛べたらいいのにな。
別に、特に目的もあるわけじゃないけど、ただ…気持ち良さそうだから。
でも、私はあんなきれーな羽持ってないし、だから空を飛べない。
私には足があるけど、そう速く走れないし。でも、鳥も私たちをみて、羨ましいって思うのかな。
それでもいいから、私は空が飛んでみたい。もし飛べるなら――――私はどこへ行くのだろう?
前ならわからなかった、その答え。でも、今ならわかる。
――――もし、あなたが翼をもって、自由に飛べたなら、どこへいく?
私は、迷わず答える――――私は、みんなのところへ飛んでいきます。そして、私は歌を歌うでしょう――――、と。
†
優輝がこの世から旅立った。優輝はきっと、雲の上で自由に風を切って飛んでいる。そして―――その歌声を今でも響かせている。そんな気がした。
【奇跡】はおこらなかった。でも、優輝は予言されていた日数より二年も持ちこたえた。
優輝が亡くなったのは、クリスマス当日の聖夜。微笑むように眠る、優輝をみて涙が止まらなかった。
病室のベッドから、ノートが見つかった。その中には、日記ではなく、優輝の気持ち―――詩が書かれていた。
中に四つの手紙のカタチをしたものが入っていた。それは、詩であったが、大切な人への優輝からのメッセージだと思う。
*
《Dear☆家族へ》
大事な家族。
母さん、私を産んでくれてありがとう。いくら感謝してもしきれない。
産むとき、苦しかったでしょう?一つの命がこの大地に誕生する痛み。痛くないわけがないもの。
それでも、私を産んでくれた。私、産まれてこれてよかった。母さんが母親でよかったよ。
父さん、家族を支えてくれてありがとう。必死に働く姿をみたことあります。あれが、私たちへの愛のあらわれなんだよね。
生き抜くことは簡単じゃない。父さんも、過去にはつらいこともあったとおもう。少ししか生きてない私にはいえないけど、それでも乗り越えてきてくれた父さんにも感謝してる。
母さん、父さん、本当にありがとう。優輝って名前、ありがとう。
私はいなくなっても、空の上から星になって、優しく輝けるように、母さんと父さんを照らせるように、ずっと、努力して見守ってるからね――
P.S今まで迷惑かけて、なのに生きられなくてごめんね
*
瑞希は、優輝のお墓の前にいた。相馬や悟、みんなバラバラの大学に行った。年に一回、優輝の命日ぐらいしか会っていない。
今日は別に命日ってわけじゃないけど、―――大切な日だからここにきた。
みんな、覚えてないんだろうな…
優輝のお墓にむかって話し掛けてみる。
「優輝、そっちはどう?私は新しいクラスになって、新しい友達ができたよ。優輝ほどじゃないけど、優しいこ」
その言葉に反応するかのように、ざわざわと、木々がゆれている。
「私、音楽のほうをしてるんだ。近いうち、バンドを結成しようと思うんだ。優輝の歌で―――」
微笑む。優輝は、きいてくれてる…傍にいる。そんな感じがした。
「…優輝からの、手紙があったからだよ。優輝の願いは、私が叶えるから」
*
《Dear☆みんなへ》
最高の友達。
大好きな、いつもそばにいてくれた心友。
ありがとう、と何度いっても言い足りない。私に大切なものを、どんな宝石よりも――輝いているくれた。その価値は、人の命と同じように、暖かかった。
いつも馬鹿なことを言って、笑った。一緒に泣いた。でも、私にもう、そんなことはできない。
ごめんね。たくさん大切なものをくれたのに。なんて最悪なんだろう。でも、後悔はしたくないから。
私はいつでも傍にいるから、もしいなくなっても、心のなかにはいるからね。泣くのを我慢しなくてもいい、私が受けとめてあげるから――――
P.S私の最後のワガママ。バンドは続けてほしいな。私も空で歌ってるから
*
悟は、野道を歩いて、ある場所に向かっていた。
彼女は、優輝以来つくってない。告白はされたりしたけど、断った。
優輝は、一生で一度の恋の相手だった。悟は、優輝を失った今、もう…なにも望むものはない。そう、思っていた。
優輝がいなくなる前まで、全力で愛を注いだつもりだ。――でも、後悔はしていない…と言えば嘘になるかもしれない。
でも、優輝は傍にいる。そう感じるんだ―――確かなものじゃない、けど、そんな感じかするんだ…
*
《Dear☆悟へ》
私を、好きになってくれて…いつも、傍にいて手を握ってくれてありがとう…とても暖かかった。
悟に出会えて、本当に嬉しかった。
愛する気持ちが大切って、改めて実感した。
悟は太陽のように、あったかくて、大きくて。優しかった。でも、ごめんね…私は悟のもとに、いられないんだ。
私はもう十分幸せだから…悟は幸せ?絶対、幸せになってね。約束だから。
私はずっと傍にいて、見守っているから。わるいことしたら、許さないんだから。幸せに、なってくれなきゃ…
*
悟への手紙は、そこで終わっていた。
手紙の所々に、涙が染みとなっていた。
その手紙を握り締めて、悟がついたその場所は――――
「…瑞希?」
最初に目に入ったのは、優輝の墓を見つめる瑞希だった。
悟に気付いて、瑞希が振り向いた。
「――悟?どうし――」
瑞希の声をかき消すように、キキッ!と車の音がした。その方向に、振りむく。そこには――
「相馬…!」
花を片手にもった相馬がいた。
「なんだ、来てたのか」
平然とこっちにむかってくる。また大人っぽくなっていた。
瑞希は驚いて言った。
「二人とも、どうして―――」
「今日は、俺たち四人が出会った日だろ」
平然と言った。相馬は悟の頭をたたいて言った。
「でも、去年はきてなかったのに…」
「いったさ。夜に」
それなら相馬たちと会わないわけだ。夕方には瑞希は帰っていた。
「…じゃあなんで、今年はこの時間帯なの?」
それには、相馬は悟と目をあわせていった。
「なんとなく、な?」
「別に、時間あわせてたわけじゃないんだけど…」
瑞希はおもった。――――きっと、優輝がみんなをあわせてくれたんだ…
そこで、悟が口をひらいた。
「まぁ、ちょうどいいじゃんか。近いうちに瑞希にも電話しようと思ってたんだろ」
その言葉の意味がわからなかった。今まで、高校を卒業してから連絡なんてめったにとらなかった。
「―――瑞希、優輝からもらった《手紙》の内容、覚えてるか?」
風が一段と強く吹いて、桜の花びらが、宙を美しく舞った。
青く広い、空の向こうには、鳥が自由に飛んでいる。
「…俺たち、もう一度バンドをやらないか?」
相馬が優輝の《願い》を口にした。瑞希は言葉がでなかった。
「俺も、今までずっと、ドラムをやってたんだ。いつかまた、みんなで出来るように――って」
悟が微笑んで言った。
「――でもッ!」
いつか《みんな》、もとの四人で出来るわけがない。肝心のボーカル、優輝がいないじゃない…
「優輝の手紙には、空で歌ってる…そう書いてあったよな?」
瑞希の考えがわかったのか、相馬がいった。瑞希は黙ってうなずいた。
「じゃあ、優輝のためにも、あの曲をひいてやろうぜ」
「でも、優輝のかわりなんて…」
ボーカルは、優輝以外にはしてほしくなかった。
「ボーカルなしでやればいい。それで半減するとしても―――」
相馬と悟は、本気だった。きっと、瑞希がいやといっても二人だけでやるだろう。
瑞希は、覚悟をきめて、―――言った。
「…わかった。ピアノなしでやっていけるとおもってんの?私も―――やる」
瑞希は、また、あの時のようにやりたい…そう願っていたのかもしれない。
優輝のためにも、やりたい。そう思っていた。
「―――じゃあ決まりだな!さっそく俺の家で練習しようぜ!」
「は!?今から!?」
「もち。当たり前」
―――前のような会話。瑞希は、優輝をみつめるように…空を見上げて優輝に話し掛けた。
優輝、見ててよね。そして、私たちのために…空で歌っててね。その歌にあわせて、私たちは…みんなに幸せを届けるから…
†
【奇跡】―――それはきっと、待っていておこるものじゃない。
自分で追い掛けて、一つ一つのカケラを組み合わせて出来るものなんだ。
きみの心の中にもきっとあるよ。だから、さがしてごらん。
【奇跡】を、信じるか信じないかは、あなたの自由だから――――
これで、この物語はおわりです。ここまで読んで下さって、ありがとうございました。これからも、よろしくお願いします。。




