No.14 最後のライブ
―――そして、その日がやってきた。前日は、遠足にいくときのように眠れなかった。
一日目は家で過ごした。家族ダンランで、家でバーベキューをした。
二日目は、いつもの四人で遊び回った。夕方からは、悟の家にとまって、二人でいろいろと話した。
「優輝、ちょっと後ろむいてよ」
悟のいうままに後ろをむくと、頭になにかをのせられた。
「10秒間、乗せられたらとっていいよ♪」
1、2、3…とカウントダウンが始まった。
10秒数えおわって、頭の上のモノをとると、それは―――指輪だった。
「まだ、正式なやつじゃないけど…形だけでも、な」
そう言う悟の手にもいつのまにか同じ指輪が。悟は箱にはいっている指輪をそっと取って、優輝の指にはめた。
「いつか結婚しような」
感動のあまり、何もいえなかった。優輝は涙をただながすだけだった。
†
そして、最終日。コンサートの日にもかかわらず、今だに場所は教えてもらえなかった。
「―――ここって…」
瑞希に目隠しをされて、ついた場所は…学校だった。四人が出会った場所。優輝にとって特別な、大切な場所のひとつだった。
「みんな待ってるよ!急いで!」
ひっぱられて体育館にいく。裏からはいって、マイクを手渡された。
ステージをみる。そこには―――うまるほどの人がたくさんいた。同じクラスの人、先輩、後輩、知らない生徒、先生までいる。他の学校からもきていた。
瑞希がふりむいてささやいた。
「これが私たちからのプレゼント。いこう!」
そして、ステージにでた。照りつけるライト、無数の人たち…あのときとかわらない、あの感覚。
優輝は目を閉じて、深呼吸をした。そして、目をあけて前を見た。
今まで感じたことない、強い気持ち――――歌いたい。今、私の歌をみんなに届かせたい…
『こんにちは!クローバーです☆久々のステージに、少し緊張してます♪』
瑞希がマイクで声を張り上げる。すると、目で何かいえ、と合図を送ってきた。優輝はマイクをもちなおしていった。
『…みなさん、久しぶりです!』
そこで、相馬がギターをならした。コレは、二番目にできたオリジナルの…
『きいてください、第一曲目は――…』
優輝は歌った。すべての気持ちを歌にのせて…
これが、精一杯の気持ちだから――――…
何曲歌っただろう。でも、こんなにすがすがしい気持ちは初めてだった。
でも、優輝は、別のことも考えていた。
―――それは、優輝が病棟を散歩しているトキだった。
診察室に、母の姿があった。いつもよりくる時間がはやい。
「嘘…ですよね?」
母の絶望した声がきこえた。よく見ると前には小口先生が。いやな予感がするけど…聞かずにはいられなかった。
「いえ、本当です。優輝さんの命は―――…あと、もって一ヵ月しか残っておりません」
すべてがとまったように感じた。私の、体のなかのなにかがはじけてしまったようだった。
優輝はその場を離れた。頭のなかを小口先生の言葉が繰り返される。
―――私の命は、あと、もって一ヵ月なんだ…
なんとなく感じていた、自分の命の少なさ。三日間の外出許可がでた本当の理由は…たぶん、これだとおもう。
歌いながら、自然と涙が流れる。ステージで歌えるのも、きっとコレが最後。歌に乗せて、気持ちを伝えることなんて、もうできなくなる。
そう思うと、つらくて、かなしくて、切なくて、はかなくて。涙を流さずにはいられなかった。
『聞いてください、私のお気に入りの曲…“翼をください”』
美咲ちゃん、聴いてくれてる?届かせたい、私の気持ち。美咲ちゃんは、私に、大切なことを教えてくれた。
私も、もうすぐ空のむこうにいくからね――…
『みなさん、こんなにお集まり頂き、ありがとうございます。この曲が、最後となります』
えー!とみんなが声を合わせて言う。
みんな、ほんとにありがとう…大好きだよ…
『最後は、一番最初にできたオリジナル。“ずっと…”です!』
優輝の歌声が、体育館に響いた。観客の大多数が泣いている。それだけでなく、瑞希も、悟も、相馬までもが泣いている。
きっと、三人も、みんなも感じ取ってるんだ。四人一緒のライブは、これで最後なんだって…
精一杯出し切った。すべてのおもいをこの歌にのせた。もう…なにも望まない。これで、十分。
『今まで、聴いてくれて…ありがとうございました。みんながいたから、私は…私たちはここにいれるんだと思います』
頭を深々とさげる。
『本当に、ありがとうございました…ッ』
そして、優輝の…クローバーの、最後のライブが終わった。




