No.13 真っ白な鳥
美咲が、最近病室にこなくなった。
「最後の手術するんだって。これでよくなるかな」
笑顔でそう言ったきり。もしかして、もう退院しちゃったとか。それとも――――…
優輝は気になり、原田さんに聞いてみた。
「あの、美咲ちゃん…手術どうだったんですか?」
すると、原田さんは顔をこわばらせて、優輝のコップをおとしてしまった。
原田さんはそれを拾うと、引きつった顔で、目線をそらして言った。
「――美咲ちゃんは…」
次の言葉を聞いて、優輝は――――すべての物が、とまったように見えた。
「…そうなんですか」
いきなり、“死んだ”と言われても現実感がなく、すぐそこに美咲がほほ笑みかけそうだった。
「これ…美咲ちゃんの机のうえにあったんだけど、わたせなくて」
原田さんが持っていたのは手紙だった。それを渡すと優輝の病室から静かにでていった。
手紙をゆっくりと開く。中にはクレヨンで色とりどりに優輝へのメッセージが描かれていた。
『ゆきお姉ちゃんへ
いつもあそんでくれてありがとう。わたしね、一回だけ外に出たことがあるの。それでね、コンサートをみたんだ。そこで、クローバーっていう人たちが歌ってるのみたんだ』
二枚目を開く。
『お姉ちゃん、そのときすごくきれいだった。だから、また歌ってほしいんだ。わたしね、たぶん死んじゃうんだ。でね、鳥さんになってとんでゆくの。おねえちゃん、わたしのために、一度でいいから歌ってね 美咲より』
三枚目には、太陽に向かって飛ぶ美咲と、マイクをもって歌う優輝の姿が描かれていた。
優輝の目から、涙が流れた。美咲は感じていたんだ。自分が死んでしまうことを…
優輝は、長い間泣いていた。涙をふいて窓の外を見上げた。
―――泣かないで…
そう言っているように思えたから。私が泣いたって、美咲ちゃんは喜ばない…そう思って。
夕日が沈んでいく。その夕日を、涙を堪えながらじっとみつめた。
――――そこから、小さな…でもとても綺麗で、真っ白な鳥が―――飛び去ったようにみえた。
†
秋になって、優輝に、三泊の外出許可がでた。この頃、順調に回復していたから。だから外出許可がでたんだと、優輝はみんなに言った。
すると、瑞希達は、飛んで喜んでくれた。
「やったじゃん!」
「まぁ、私の生命力の強さってやつ?」
ノリで言う。その言葉にみんなで笑った。
「はやく退院しなよッ!…待ってるからね」
優輝がいないため、バンドは中断していた。
「…うん。えっと、それでね、みんなにお願いがあるんだけど…」
優輝は、一人のトキに考えていたことをみんなに話した。
「―――やっぱり、無理…かな?」
すると、まずは瑞希が口を開いた。
「さすが優輝。土壇場で、大変なこといってくれるよね」
相馬はパソコンを開いて言った。
「探してみる」
優輝の顔がパッと明るくなる。じゃあ…!
「お嬢様の久しぶりのワガママ、叶えてやるしかないっしょ!」
わッ、と盛り上がる。
優輝の考えていたこと―――それは、バンドがしたい、と言うことだった。すると、相馬が言った。
「だめだ、この時期、近くでコンテストなどは見わたらない」
悟が考え込む。
「…となると、どうする?」
すると、悟が何かひらめいたのか、瑞希と相馬にコソコソと話をしだした。
「いーじゃん、それ!」
「おまえにしては、なかなかの考えだな」
「だしょ?おれってやっぱり天才?」
悟はひとりでもりあがっている。
何?いったい何なの?
「優輝には、当日までの秘密ってことで!」
「まーな。許可もいるし、どうかわんないし」
「確立は高いと思う」
何回聞いても答えてくれない。
優輝は、期待と不安が入り交じった気持ちで、三泊の外出を待っていた。




