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奇跡のカケラ  作者: 光璃
10/16

No.9 それぞれのオモイ

 あれから、悟とは、完全にとはいかないけど、もとに戻れた。

 優輝は、歌詞を頑張って考えていた。でも、うまくいかない。心が落ち着いていないせいもあった。

 バンドの練習をしている時だった。ギターの音がずれて、相馬が調整をしていた。

「ギター、壊れちゃったのかな?」

「かもしれん。けっこう長く使ったからな」

 その時、今までよりも激しい、立っていられない程の目眩に襲われた。

「優輝ッ!」

 優輝は倒れて、気を失ってしまった。


     †


 優輝は、やむおえず、一週間入院が決まった。病気のことはわからない。でも、時間がないと言うことは、なんとなくわかる。

「ごめん…バンドの練習できなくて」

 相馬がそれに、答えてくれた。

「たった一週間だし、俺たちだけで合わせとくから、気にするな。お前はゆっくり休め」

 一つだけ、気になることがあった。

「…ギター、壊れちゃったの?」

 優輝の問いに、相馬は、ため息混じりで答えた。

「あぁ。結構、使ってたから、糸が細くなって、音が響かなかったんだ。もうすぐ、切れると思うから…買い替えるしかないな」

 …私も、あのギターのように、壊れちゃうのかな。この頃、よくそんなことを考えてしまう。

 優輝が…そっか、と答えると、次は瑞希が口を開いた。

「優輝、本当に大丈夫なの?こんなに―――」

 そんな瑞希の言葉を、優輝は打ち消すように笑顔で言った。

「大丈夫だよ。喘息って知ってるでしょ?季節の変わり目だから、…しょうがないんだよ」

 親友に、嘘をつくほどつらいものはない。でも、真実を告げて…親友がつらそうな顔をするのを見たくない。

 瑞希が、不安そうな顔で、優輝の手を握りながら、言った。

「優輝…いきなり、いなくなったりしないよね?ずっと―――そばにいてくれるよね?」

 優輝は、何も言わず、ただ手を握りかえしただけだった。

 それから三人が帰って、優輝一人が病室に残される。きっと相馬も、瑞希も、悟も…気付いてきてる。でもそれはまだ“確信”ではないはず。―――せめて、それを悟られないようにしなきゃ。

 いつかは、言わなくてはいけないトキが…くるかもしれないけど。

 瑞希が聞いてきた時、

「あたりまえじゃない」って言えなかった…。たった一言なのに、言うことができなかったよ…

 涙が頬を伝わった時、病室のドアが、コンコン、とノックされた。

 涙をぬぐって答える。

「どうぞ」

 ガラガラ…と静かな音をたてて、入ってきたのは―――

「悟…」

 一瞬、悲しそうな表情をみせたが、すぐに笑顔になった。

 コンビニの袋をあげて、無邪気に言う。

「腹減ってんじゃないかなって。コンビニいってきたんだ」

 悟は丸椅子に座り、優輝にカップケーキとオレンジジュースを投げた。

「オレンジジュースって、子供かよッ」

 笑って言う。すると、意地悪そうに、悟も笑って言った。

「子供じゃん。コーヒー飲めないくせに♪それにオレンジジュース好きだろ」

 むぅ…と膨れたふりをする。言い返せない。

 優輝が食べはじめると、悟も、コンビニ袋から鮭のおにぎりをだしてビリッと破り、食べはじめた。

「なんか悟、食べ方が子供みたい」

 くすりと笑う。悟は口の横に海苔をつけていた。

「うっさいな。まだ実際、子供なんだから別にいーじゃん」

 必死な抵抗、ってとこかな。優輝は心のなかで思った。悟も優輝も、無理して笑ってはない。でも…

 きっと、気を遣ってくれてるんだろうな…


     †


 入院して一週間。優輝は体調が戻り、無事退院。

 優輝は、退院祝いに、瑞希達がくれたものに驚き、涙した。

 それは、歌詞のないオリジナルの曲だった。

「みんなでがんばって作ったんだ」

 瑞希が言っていた。

 優輝は、それを何回も聞いて、いい歌詞作りにはげんだ。

 みんな、これをバンドでしたいはず。無駄にはできないし、するつもりもない。優輝は、それだけに集中できて、病気のことは…一瞬だけ、忘れることができた。


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