地震の音楽
テルミンという電子楽器を知っているだろうか。
箱から上と横に伸びた2本の金属棒があり、そこからの電磁波によって、音程と音の大小を決めるという電子オルガンだ。
そのテルミンを使って、地震を音としてあらわすということを考え出した。
テルミンは、連続的に音が流れ続けるため、手の動きに合わせて、音階をアナログ的に変えることが可能となる。
そのことを利用して、地震による変位の上下方向の値と水平方向の合成値のそれぞれを、音程と音の大小として使うということだ。
演奏曲として選んだのは、平成7年 (1995年)兵庫県南部地震、平成23年 (2011年)東北地方太平洋沖地震、1933年昭和三陸地震、平成16年 (2004年)新潟県中越地震以上が日本国内であり、さらに国外からアメリカにて1994年発生のノースリッジ地震、1960年発生のチリ地震、そして最後にインドネシアにて2004年発生したスマトラ島沖地震だ。
演奏者はその地震波を正確に示すために、ロボットで行われることになった。
ただ、制御をするために、近くにコンピューターを用意し、その監視役が2人ほどいた。
まず、演奏する前に、監視役のうちの1人がマイクを取り、今回の演奏会の趣旨を説明する。
「皆さま、お集まりいただき、誠にありがとうございます。今回の演奏会の趣旨は、それぞれの地震による地球の鼓動を、わずかにでも感じていただくようにと、思い、企画させていただきました。まず、今回演奏するそれぞれの地震、それに伴い発生した津波の犠牲者の方々に対し、哀悼の意を表し、黙とうをささげたいと思います。皆さま、どうか、ご起立ください」
誰もが、音をたてないように静かに立ち上がり、さっきの人の合図で、1分間の黙とうをささげた。
「黙とうをやめてください。では、お座りください」
全員が座ったのを確認してから、再び続ける。
「さて、改めまして、今回の演奏曲の曲目ですが、阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震をはじめとして、国内および国外から数々の地震を選びました。なお、選考基準は特にございません。では、前置きはこれほどにしまして、演奏したいと思います」
監視役が座ると、ロボットが動き始めた。
それは、静かな、沈痛な調べだった。
それでいて、激しく、怒っている曲でもあった。
最後の一音が、会場の壁に吸い込まれつつ消えると、誰からともなく拍手が起こった。
「ありがとうございます。さて、いかがだったでしょうか。地震というのは、かくも恐ろしく、津波とともに、いとも簡単に人の命を奪っていきます。しかし、それは地球が生きているという証拠でもあり、このように、地球の鼓動を直に聞くことにより、明日へと続いて行く一助になればと、考えております。本日は足をお運びになられて、誠にありがとうございました。どうぞ、お気をつけてお帰りください」
そして、演奏会は、静かに幕を閉じた。




