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神、異世界転転移させた男にテレビゲー厶がないと不満を言われる  作者: 惑城鍵


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1話

 スーツを着た男が一人で歩道を歩いていた。空には月が浮かんでいる。隣の車道を通る車両は疎らであった。男は呟いた。「ただ働くだけの人生なんて嫌だ。子どもの頃のようにたくさんゲームがしたい」


 男は小学校に上がる前からテレビゲームに夢中になっていた。それこそ両親に怒られるぐらいには。だが大学卒業して十年、サービス残業が当たり前の勤務先では帰宅後、ゲームをやる余裕もなく寝ていた。休日出勤さえ当たり前であり、買ったまま放置されたゲームは数知れずだった。


 男は月を見上げた。その顔は疲弊しきっていた。男の目の前がいきなり光りだした。男は瞼を閉じ腕で目を覆う。男の頭の中に声が聞こえてきた。それは太陽のような温もりのある女性らしき声だった。「人生に疲れているそこのあなた。どうですか? 異世界に転移して第二の人生を歩みませんか?」


 男は「誰?」と困惑していた。


 未知なる声の主は男に「わたしは神です。あなたの人生を救いに来ました」と自己紹介した。


「神様? そんなことがあり得るのか」と男は言いながら目から腕を離した。目を開けると光と共に女性らしき姿が目に映った。純白のドレスに身を包んだ女性が空に浮いていた。それだけで男はその存在が超常的存在だと理解した。


「あなたはこれまでの人生を頑張ってきました。わたしはそんなあなたにチャンスを上げたいのです」


 神は嘘が一切見当たらない表情で言った。男は神を見上げたまましばらく黙り込んだ。神はその間微笑みながら男を見守っていた。男は口を開くと「今から行く世界ってどんな世界なんだ?」と尋ねた。


「あなたたちのいうところの中世西洋のみたいな世界です。ただ魔法があり魔物が住んでいます。どうですか? ワクワクしていたでしょ」


「ああ、俺がゲームでプレイして憧れていた場所だ。本当に連れて行ってくれるのか」


 男は救いを求めるような瞳をしていた。神は一回時間をかけながら頷くと「はい、連れていきます」と答えた。


 男は「なら連れて行ってくれ」と願った。


神は「わかりました。では行きましょう。第二の世界へ」と男の手を掴んだ。次の瞬間、一人と一柱は光に包まれてこの世界から消えてしまった。


 男と共に異世界に転移した神だったがとある困りごとがあった。


「あーテレビゲームがしたい。あれがないと生きている実感がしない」


 異世界に来て数カ月の男は平地の道を歩きながら念話で話す神に不満を言っていた。神は天界から男の様子を見ていた。冒険者となった男は革鎧に剣を装備していた。男は異世界転移してから最初は冒険者業に力を入れていた。だがある日を境にテレビゲームを欲するようになった。


「そう言われても、テレビゲームを召喚することは出来ないのです」


 神は言った。神は天界から男と念話をしていた。神が異世界に召喚できるのは原則人間のみと限られていた。そのため男の要望には答えられなかった。


「あれがないと俺じゃないんだよ。どうにかならないのか。神様なんだからテレビゲームぐらい創造できるだろ?」


「そう言われましても。わたしはあなたのいた世界の文明には疎いのでテレビゲームを創造しようにもイメージが浮かばないのです」


 神には生物以外であれば大抵のものは創造できた。だが知識がないものは創造できないという欠点があった。


「まあこの世界にないものだから仕方はないか」男は絶望を目の当たりにしたかのように溜息を吐いた。


「それならなんとかできるかもしれません」と神は高めの声で言った。


「本当か?」


「はい、わたしが向こうの世界にいってゲームを学んでくればいいのです。それなら知識が身についてテレビゲームを創造できます」


「なら頼む。その間俺は冒険者業に精を出しておくよ」男はやる気に溢れた顔をしていた。


「それではあなたの世界に行ってきます」と言い残し異世界から消えた。


 男の世界に転移した神は社会人の女性に化けた。男の世界の金を創造する方法もあったが、自らの力が男の世界に悪影響を与える可能性を避けたためある。仕事に励みつつ、神は溜まった金でテレビゲームを買った。始めは面白いさすら分からなかったテレビゲームだが、やり込むにつれその魅力に取り込まれていった。


 ゲームを理解するには三カ月もあれば良かった。だが誰が遊んでも満足できるテレビゲームを創造したかった神は滞在期間を延長した。それは三年に及んだ。無限の寿命を持つ神からすれば三週間程度の間隔だった。


 異世界に帰還した神は天界から男を探した。男は金の鎧に身をまとい腰には伝説級の剣を携えていた。


「戻りました。あなたの望むテレビゲームを創造できますよ」


 神は念話で男に話しかけた。


 男は一瞬に誰に話しかけられているかわからないような顔をした。だが男はすぐに思い出したかのように頷いた。


「神様ですか? お久しぶりです。結構遅かったですね」


「そりゃあなたに好まれるテレビゲームを作りたいために頑張りました」


「あのテレビゲームですがもういいです。この世界で別の趣味を見つけたので」


 男は申し訳なさそうに言った。神は「えっ?」と声を漏らした。


「この世界にも色々なアナログゲームがあると知ってそれを楽しんでます。テレビゲームが恋し時もありますが、冒険者業も充実してますから、テレビゲームはもういらないです」


「あれだけあなたが駄々を捏ねたから頑張ったのに」と神は悄気てしまった。


「本当にすみません。それよりこれから依頼を受けに行くので失礼します」男は神に一礼してどこかへと向かった。


 残された神は男がこの世界を満喫していることに納得した。そして新作のテレビゲームをやるべくまた男の世界へと転移するであった。

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