第1話〜山葵丸
引き続き 書かせていただきます。どんな展開が待っているか お楽しみにしてください。よろしくお願い申し上げます。
山葵丸が徒歩で区役所に辿り着いたのは、正午を少し回った頃であった。
その日は、彼の転入手続きで書類を書かなければならなかった。
彼は、三日前にこの町に引っ越してきたばかりなのである。
──手続きなんてめんどくせーなー。山葵丸は思わず呟いた。そして、すぐにハッとして口を閉じた。
今の独り言はジョーシキ的な観点から見て、果たしてジョーシキ的であったのか、はたまたその逆か、わからなくなったのだ。
彼は思わず辺りを見回した。監視カメラや、指導員、警察の類の連中がいないか確認しなければいられなかったのだ。もし、今の独り言が非常識であり、それを誰かに聞かれていたのなら罰を与えられる可能性がある。
しかし、事態は案じたよりも良い方向を向いていた。カメラもない、人の気配もない。区役所に向かう 一直線に伸びる所々 民家のある広い道だった。今日に限って人通行人の数は少ない。
時間が遅いからか?みの、昼食を食べるために食堂や 家にこもっているのではないか。こんな風に思った。
山葵丸は、寝坊をしたため、こんなに遅くなってしまったのだ。
──待てよ。
そういえば大事な日の朝寝坊というのは非ジョーシキとされていたのではなかったか?彼は再び、辺りを見回した。
そこで、考えてみたら不用意にあ辺りを見回すというのも 非ジョーシキなのではないのかというのはジョーシキとし?彼は悩んだ。悩みに悩んで挙げ句、でも彼は 事務手続きに行かなければならないのだった。
覚悟を決めるしかなかった。
──腹減ったなぁ さっさと書類は終わらせて飯を喰わなきゃな。
彼は思った。そしてまた違うことを考える。そんな遅い時間に昼飯を食べるというのはジョーシキ的なのだろうかと。
山葵丸は、自分はつくづくジョーシキというものを知らないのだと痛感 せざるを得なかった。彼はやっとたどり着いた区役所 庁舎に恐る恐る入って行くしかなかった。転入手続きを早く済ませないのは非ジョーシキとして罰せられるからだ。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。次も書いていこうと思います。よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。




