敗北したヒロインたちは……
「はぁっ……!はぁっ……!」
来るべき戦い。
因縁ともいえる相手を前に、彼女たちはもはや虫の息であった。
「こんなに、強いなんてっ!?」
「当然よ。貴方たちみたいな歳のいってない小娘に私が倒せるものか!」
プリンセスヒーロー。人々を悪から守るために結成された、四人の戦士。
今、まさに悪の親玉である女を打ち滅ぼそうとし、
そして、敗北した。
「さぁて、今まで私の計画を邪魔してきたこの娘たち。一体どうしてやろうかしら……」
「く……!」
少女たちは完膚なきまでに叩きのめされ、動くことすらかなわない。
女は頬に指をあてて思案する。
そして、何かを思いついたと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべた。
「そうだわ!今まで助けてきた人たちに裏切られるなんてシチュエーション、素晴らしくないかしら?」
そう言って彼女は少女たちの方に手をかざし、少女たちと共にどこかに転移をした。
——廃工場。
今はほとんど誰も来ず、不良たちのたまり場となっている場所である。
そこには、最近いつもここに集まっている四人の不良がいた。
不良たちは家族や学校生活に上手くなじめず、ドロップアウトしてしまった底辺の集まりであった。
「なぁ、今日はどうしましょうか、頭ぁ!」
小太りの男がそう一人の男に尋ねる。
「今日は、何もすることがねぇからなぁ。とりあえず、歩き回ってなんかねぇか探して——」
そう男が言おうとしたその時だ。
「あらぁ?ちょうどいい男たちがいるじゃない」
「あぁ?」
そこに突然現れたのは、怪しげな格好をした女とぼろぼろになった少女4人である。
頭と呼ばれた男が女をギロリと睨め付ける。
「なんだ、テメェらは?」
「私が何者かなんて知る必要ないでしょ?」
女がそう言って指を鳴らすと、不良たちの前にぼろぼろで動けない少女たちが現れた。
「うぉお!?」
「なんだこれ?」
「女ぁ!?」
それを見届けた女性は、不気味に口角をあげ、不良たちに向かって言った。
「その子たちを好きにしてちょうだい。今なら動けないから、好きにし放題よ」
「なっ!?」
「そんな……」
「嘘でしょ……」
「い、嫌……!」
少女たちは今から起こる惨状を想像し、青ざめている。
そして、不良たちの目の色が変わった。
「マジかよ!」
「うっひょお!」
「やったぜ!」
「それじゃあ、私は行くわ。まぁ、どうせ止めを刺さなくても、もう心は折れちゃうだろうしね。フフフッ!」
そう言って女は笑い声をあげて消えてしまった。
不良たちは残った四人の少女をまじまじと見つめる。
「おいおい、彼女たち、プリンセスヒーローじゃねぇのか?」
「マジかよ、プリンセスヒーローに手が出せるのか?」
「俺、イエローちゃんが好みなんだよ……」
不良たちは下品な視線を少女たちに向ける。
「ひっ……!」
少女たちは今から起こることへの恐怖で涙がいっぱいになっている。
その中でも、強気だったリーダーの少女は毅然として
「こんな、事された、ところで、私の心は、折れないっ……!」
と言い放っているが、体は震えてしまっている。
「俺、この子!」
「俺は、彼女がいいな!」
「俺はイエローだかんなっ!」
不良たちはどの子に手を出すかを決め、今にも服を脱がそうとしている。
今にも、ひどいことが起ころうとする、その時。
「おい、待て」
そう言い放ったのは、女が消えてから、ずっと考え込んでいた頭の不良だった。
「なんです?頭?もしかして、この子がいいんですか?交換しましょうか?」
「いや、違う」
そう言うと、頭の不良はリーダーの少女に顔を近づける。
「おい、お前ら、なんで負けた?」
「っ!貴様らには関係ないだろ!」
そう言って不良から顔をそらそうとする少女。
しかし、その行動は不良が少女の顔をがっしりとつかんだことで阻止された。
「なんだぁ?まさか、力不足で負けたとかいうんじゃねぇだろうなぁ!?」
「……」
図星を指されてしまい、何も言い返せない少女。
「はぁ……図星かよ、たくっ……」
そこまで言うと、頭は他の三人に向けて言い放った。
「なぁ、お前ら、本当にこれでいいと思ってんのか?」
「「「え?」」」
不良たちは全く分からないと言った風に聞き返す。
「今から動けないこいつらを好き放題して、おしまい。これでいいのかって」
「……頭?何を言ってるんです?」
細身の不良がそう聞くと、頭の男は力強い声で言った。
「お前ら、もっとワンチャン目指してみようとか、思わないのか!?」
「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」
今度はその場にいた少女たちも含め、全員が訳が分からないと言った表情になる。
「いいか、例えば、今この場にいる女たちを犯すとする。そしたら、まず世界は滅びるな。100パー」
「あっ……!」
「しかも、ただただ罵倒を貰うだけで、愛ある行為とは言えないし、ただただ欲だけ満たされるだけだ」
そこまで言うと、頭は一息ついた。
そして、息をすって力強く「しかしだっ!」と叫ぶ。
不良も少女たちも少しびっくりする。
「もしここで手を出さずに助けたらどうだ?世界は救われるし、恩は売れる。もしかしたら彼女たちはお前たちの事を好きになってしまうかもしれない」
「っ!?」
その一言で雷が落ちたような表情をする不良たち。
しかし、そこではっとしたモヒカンの不良が頭に指摘する。
「でも、こいつら一回負けてんでっせ!?勝てる可能性がいくらあるか。それなら手を出した方が……」
「馬鹿野郎!」
頭はモヒカンの不良を殴り飛ばした。
「そこで鍛えてやるのが俺達だろ!?師弟の関係から愛が芽生え、そして結ばれる。
おはようからおやすみまで、笑顔の美少女と一緒!そんな生活にあこがれは無いのか!?」
「「「っ!天才ですか、頭ぁ!?」」」
「それにな、今はどうせ戦っても負けると分かっているのだから一旦潜伏せざるを得ない。そうしたところで俺たちが協力してやれば、なお一層可能性は広がらないか!?」
「「「!一生ついていきます、頭ぁ!」」」
「はっはっはっはっは!!!もっと崇めろ!」
「「「最高です!頭ぁ!」」」
「最高の気分だ!」
「「「頭最強!頭最強!頭最強!」」」
「うるせぇ!」
頭は不良三人を殴り飛ばした。
「「「えええ!?」」」
と、ひと段落着いたところで不良の頭はリーダーの少女に向き直る。
「と、言うことでどうだ?悪くない話だとは思わないか?」
リーダーの少女は考える。
今思いつく最善の手。
皆を守るための手段。
そうして出した結論は……。
「分かった。お前の話を飲もう」
「話が早い」
頭はニッと笑った。
「まぁ、私たちが惚れるとも思わないし、お前らに鍛えられるほど、やわじゃないと思うがな」
「言っとけ」
そして、不良たちとプリンセスヒーローたちとの潜伏生活が始まった。
数日後、少女たちのケガが回復した後。
少女たちと不良たちは向かい合っていた。
「いいのだな?こちらは変身しても」
「あぁ。俺達が強いってところ、見せなくちゃな、なぁ、テメェら!」
「おうっす!」
「了解!」
「ヒャッハァー!暴れるぜぇ!?」
「じゃあ、皆!こちらも行くぞ!」
「うん!」
「分かった!」
「全力で行くね!」
少女たちはそう言って変身を完了させ、一対一の構図で不良と向かい合う。
——ここで勝って、さっさと出て行ってやろう。
少女たちは自分たちの勝利を疑わず、構えていた。
その手には若干力がこもっている。
なにせ、この数日間、手は出されなかったものの、恥ずかしい思いはだいぶして来たからだ。
ぼろぼろに動けなくなるまでに叩きのめされた彼女たちは、生活のすべてを不良たちにサポートしてもらうしかなかった。
動くこともままならない彼女たちはトイレですら、不良たちに運んでもらうしかなかったし、体をふく時も、不良たちにしてもらっていた。
幸か不幸か、少女一人につき、不良一人がサポートだったので、全員に裸を見られるようなことは無かったがそれでもめいっぱい恥ずかしい思いはして来たのだ。
もう、お嫁に行けないぐらいに。
それを踏まえれば、拳に籠る力も当然と言えよう。
——一瞬で決めよう。
そう思っていた彼女たちの思惑は外れてしまった。
「ヒャッハー!」
「とうりゃ!」
「どっせい!」
「おらぁ!!」
不良たちは見事に彼女たちのパワーやスピードを逆手にとり一撃を加えてきたのだ。
もちろん、強化された肉体にダメージはほとんどない。
しかし、自分たちより全くの格下だと思っていた連中からカウンターを食らったのだ。
動揺しないはずがない。
さらに不良たちは様々な喧嘩戦法で少女たちから重い一撃を食らうことなく、少女たちに攻撃を当てていった。
そんな状態が少しの間続き……。
「お前ら、ストップだ」
「おう!」
「はい!」
「OKだぜぇ!」
少女たちは唖然として勝負していた相手と向き合っていた。
そこに、頭の一言が突き刺さる。
「お前ら、やっぱり武術経験0だな?」
そう。彼女たちはあくまで戦える力があるから選ばれた学生。
変身することで、パワーやスピードは増すものの、その戦い方は素人そのものだった。
「ずっとテレビを見て思ってたんだよ。こいつら、戦い方を知らねぇなってな!」
頭はフッと不敵な笑みを浮かべる。
「だから、俺達みたいな戦い方を知ってるやつに攻撃を当てられないんだろ?」
「でも、ダメージは受けてないもん!」
そう、プリンセスヒーローの少女は言う。
「俺達だったからな。じゃあ、この前見たあいつの攻撃だったら?」
「……っ!」
さっき反論した少女は、唇をかみしめる。
「だから、俺たちは戦い方を教えてやるっつってんだ。まぁ、実践に基づいた喧嘩のやり方だけどな」
「……」
「……まぁ、このままあいつに挑んでも、負けるだけってのは目に見えてる。今度こそ、ひどい目にあうかもな。まぁ、俺達もどうなるかわかったもんじゃないんでもう手伝うしかないんだが」
そう言うと、リーダーの少女はすっと頭を下げた。
「……お願いだ。私たちに戦い方を教えてくれ」
「言っただろ?ワンチャン狙ってるだけだって」
「おうよ!俺のこと好きになってくれてもいいんだぜ!」
「ぜひぜひ末永くお願いしたいぜ!」
「イエローちゃん!一緒に強くなろうぜ~!」
そう言うと、頭の男はリーダーの少女に手を差し出した。
「よろしくな。俺は北道雄也だ。豪嶄外絶のリーダーをしている」
「あぁ。私はプリンセスレッド。南原茜だ。よろしく、雄也」
そう言うと、他の三人もそれぞれ自己紹介をしていく。
「まぁ、超特急であいつを倒してもらわなきゃなんないんで、手加減はできねえぜ?」
「望むところだ」
「——って話があったんだ」
「へぇ!もっときかせて!」
少女は目をキラキラさせて、母親に話の続きを催促する。
世界を救ったプリンセスヒーローはみんなの憧れとなり、親はプリンセスヒーローの話を子供に読み聞かせる。
「そうだな……その後で、悪の親玉を倒した話をしようか?」
「してして!ききたーい!」
「ほら、暖かいミルクだ」
「ありがとー!おとうさん!」
「ほら、美紅、お母さんのおなかの中にはお前の弟がいるんだから、お母さんに無理させすぎないようにな」
「はーい!」
少女は父親の言うことに元気に返事をする。
「……」
少女の母親はじっと少女の父親を見ている。
「……どうした?」
「……いや」
少女の母親は腹をなでながら、くすりと笑う。
「まさか、ワンチャンが叶うとは思わなくて」
「……あれは部下たちを止めるために言っただけだ。俺は世界が滅んだら困るから言っただけで……」
「まぁ、あいつらも幸せそうにやってるし、いいだろ」
「そうだな」
少女の両親は、同じように結婚した仲間の事を思い出し、そして、笑いあうのであった。
なんで18禁の竿役ってあんな判断しちゃうんだろう?
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