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食と怪奇と陰陽師  作者: 辺理可付加
第一話 反り橋を渡る
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五.捜査開始

「ここがスタートの塾だね。……何を()()()()しているの?」


 消えた少女が通う学習塾を見上げて仁王立ちする紡とは対照的に、桃子は電柱の影に身を隠して、モジモジ顔だけ出している。


「どうしてそんなに小さくなってるの。元から小さいのに」

「小さっ……、あなたと私じゃ数センチしか変わらないじゃないですか!」

「でもその数センチの間で、君は女性の平均身長(総務省調べ)を割り、私は超えてる。これは大きな差だよ」

「じゃあ百六十あるんですか!」

「一センチ足りない」

「だったら同じランク帯ですぅー!」

「そんなのはどうでもいいんだよ。そんな警察に追われてる人みたいなポジショニングしてないで、こっちおいで」


 警察に追われるどころか自身が警察なのだが、実際今の桃子は、同業には会いたくない。こんな私立探偵にすら見えない小娘を捜査に参加させ、あまつさえ情報まで漏らしていると上にバレたら、()()()()()では済まないからだ。

 そもそも、上司に指示された桃子の捜索範囲はここじゃないので、紡を連れていようがいまいが、見つかったら怒られる。

 なんなら変装して、警察官じゃないフリをすればよかったかもしれないが、それはそれで顔見知りにでも会って、勤務時間中に制服を着ていないことがバレてもマズい。

 結果、桃子の七色の脳細胞は、見つからないよう祈るという答えを出したのだ。


「私のことはお構いなくぅ……」

「変なの」


 桃子のことを構っていても効率が悪い、そう判断したのか紡は、地図を広げてズンズン進んでいく。


「ちょっ、ちょっと待ってくださいよぉ」

「やだよ日が暮れちゃう。いましがた自分でお構いなくって言ったくせに」

「いや、そういう意味じゃなくてですね。さっき言ってた陰陽師的観点ってなんですか。『この足跡は天狗の一本歯の下駄じゃあ!』とかやるんですか?」


 紡は桃子に背を向けたまま笑う。


「はっはっは! それも可能性としてあるかもだけど、今時のアスファルトに足跡なんて残るもんかなぁ」

「じゃあなんですか。『むっ、妖気!』とかですか?」

「そんなのあったらそれでもいいけど、見てみないことにはね。もっとも、最近の妖怪とか鬼の類は、そうそう活発でもないけどね」

「だったら何を探すんですか」

「説明すると面倒な感じになるけど、そんなに気になる?」


 こちらを見ずに話す紡に対して、ようやく桃子は電柱の影から道へ出てきた。紡の顔に顔を寄せる。


「あのですねぇ、私は説明がほしいのではなくて、行っても何も残ってやしませんよ、ということです」

「それはさっき聞いた」

「たとえ遺留品が陰陽師的ナンタラで我々には何だか分からないようなものでもですね、怪しいものがあったら一応回収はしますよ」

「残ってるものばかりが重要とは限らないじゃない」

「はぁ!?」

「耳元でうるさいなぁ」


 紡はハエを払うような手付きで、桃子の顔を遠ざける。


「遺留品目的じゃないなら、いよいよ何を見にいくっていうんですか……。意味が分からない」

「それより、ここが珠姫ちゃんが防犯カメラに映ったコンビニ?」


 紡は桃子のことを意に介さないようだ。それどころか、分かるように説明する気もない。桃子は不貞腐れた様子で地図を覗き込んだ。


「あー、はいはい、たしかにここですよ。二十時半過ぎに、スイーツコーナーで十分くらいウロウロしているのが映っていたそうです」

「ふぅん」

「ここではまだ消息が知れてますし、怪しい人物も映ってなかったので用はありませんよ。先進みましょう」






 ちょっと進んで住宅地のある一戸建て。


「スペアリブ!」


 紡が呼ぶと、庭の奥から格子戸までダルメシアンが走ってきた。


「おぉよしよし」

「はえー、スペアリブって犬だったんですか」

「なんだと思ってたの」

「スペアリブだと思ってました」

「道理で今一つ、要領を得ない受け答えしてたわけだ」


 紡は地図をポケットにしまうと、スペアリブに顔を舐められながら彼の首筋を撫でる。


「で、ここにも珠姫ちゃんが映っていたと」

「はい」

「たしかこの先には……。ここに映ってたのはいつ?」


 桃子はメモ帳を捲った。


「えーっと、二十時四十七分から五十八分まで、スペアリブを堪能していたようです」

「何それ美味しそう。そうかそうか、そのくらいか。さ、お行き」


 紡はスペアリブを庭の奥へ帰らせた。そして地図を広げないまま歩き出す。


「ちょっと、地図見なくていいんですか?」

「この辺のことは知っててね、大体予想がついてきた。こっちでしょ?」


 そのまま紡は、桃子の返事を待たずにスタスタ進んで行ってしまう。


「ちょちょ待っ」


 たしかに道はあっているのだった。

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