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食と怪奇と陰陽師  作者: 辺理可付加
第十八話 占いのウラ
134/217

序.

 朝のマンションの一室。フリップクロックが七時ちょうどから一分にパタリと捲れる。

隅から隅まで若い女性の一人暮らし感溢れる淡い水色やピンク基調の世界。そこら中に転がるぬいぐるみやクッション。専用の棚に飾られた美男美女アニメキャラクターのフィギュアやグッズ。

そしてテーブルの端に、片付けないというよりは頻繁に使うからそこが定位置とでも言うように置かれたタロットカードの箱。他にも床にたくさんの本が置きっ放しである。『マヤ(れき)決定版』『九星気学(きゅうせいきがく)三碧木星(さんぺきもくせい)の運勢』『簡単占星術』『手相・人相』『始めようオラクルカード』……。


部屋の主人は今、洗面所にいるようだ。リビングには点けっ放しのテレビが朝のワイドショーを垂れ流すばかりで人の姿は無く、代わりに廊下の方から水の音がする。


『それでは、今日の占いのコーナーです』


さっきまでゲストを交えてレギュラーコメンテーターが芸能界のトピックに沸いていた画面が、急にファンシーな二頭身二足歩行の動物キャラクターが野原に集まるアニメーションに切り替わった。

と同時に、廊下からドタドタと慌ただしい足音が襲来する。


『本日の運勢第三位はAB型のあなた! 昨日のことから頭を切り替えないと大きなミスに繋がるかも?』

「むっ!」


リビングに駆け込み「間に合った!」という様子でテレビの前に腰に手を当て仁王立ちする女性。歳はまだ二十代だろうか。有名菓子メーカーの、一粒丸ごとのアーモンドをコーティングしたチョコレートのような黒にも見えるブラウンの髪はギリギリ頸に掛かるくらい。ライムグリーンの無地のパジャマに身を包んでいる。

そんな彼女は歯ブラシを咥えたままだ。しかし表情とボディランゲージの様子から察するに、彼女はAB型ではないらしい。依然画面を睨み付ける。


『続いて第二位はO型のあなた! 年長者に相談すると、いいアドバイスがもらえるかも?』

「むっ!?」


女性の身体が緊張する。どうやら彼女の血液型は一位か最下位に残ったようだ。


『それではいよいよ一位の発表です! 本日のナンバーワンラッキーさんは……』

「むむむ……」

『B型のあなた!』

「む!」

『本日は絶好調! 結果に思わぬプラスのオマケが付いてくるかも!?』

「むんっ!!」


女性はグッとガッツポーズをした。これだけで今日一日ハッピーに過ごせそうなくらいの喜び具合である。


『残念! 最下位はA型のあなた……。醤油と思ったら全部ポン酢です』


自分に関係無い情報は興味無い、とばかりに彼女はテーブルのタロットカードの箱を開ける。彼女は大きく鼻で深呼吸すると、中のカードを取り出す。そして手際良くシャッフルし、デッキの上からではなく適当な四枚を、十二時、三時、六時、九時の位置に置いた。

そしてまずは陣形の頂点のカードから表に返す

前に洗面所に戻って行った。

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