038「新入生が爪痕を残そうとしたら間違えた模様」
——1年A組
「初めまして! 転入生の元・救世主で今は平民やらせてもらってます⋯⋯『エイジ・クサカベ』です! どうぞ、よろしくお願いします!!」
初手『自ら歩み寄るスタイル』⋯⋯⋯⋯ということで、俺は案内された教室に入ると自己紹介するよう言われたので、あえて自分をさらけ出し歩み寄るという挨拶を敢行してみた。
シーーーーーン。
思いっきりスベった。
過去一、スベった。『生まれてきてすみませんレベル』でスベった。
それどころか、『苛立ち』『嘲笑』といったなかなかの嫌悪感を向けられ一気に敵を作ってしまった模様(泣)。
「はぁぁぁ〜〜⋯⋯、まあいい。⋯⋯新入生のエイジ・クサカベだ。挨拶どおり、彼は『元・救世主』だが今は『ただの平民』だ。みんなもそのつもりで接するように」
「「「「「は〜い(笑)」」」」」
おおぅ⋯⋯。先生も生徒も『見下した態度&言動』ですね。
「クサカベの席は一番右奥の窓際の席だ、すぐに移動するように。では、授業を始める。今日は⋯⋯」
おいおいおい! 俺が席に移動する前からもう授業始めんのかよ!
この学校での『平民』ってのはこんなに非道い扱いなのか? 俺は想像以上の扱いに驚くと共に、それはそれで楽しくなりそうだなと⋯⋯一人ほくそ笑んだ。
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「とりあえず、異世界から召喚された『元・救世主』がいるから、我がエルクレーン王国の話をして、ちゃんと『自分の立ち位置』をわからせようと思う。みんなには悪いが少し付き合ってもらうぞ」
「「「「「は〜い、大丈夫で〜す(笑)」」」」」
先生は『元救世主で今はただの平民の異世界人』に対して、『身の程』をわからせるためと『エルクレーン王国の身分制度』を丁寧に説明してくれた。
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【エルクレーン王国/身分制度】
・エルクレーン王国では、『平民』の上に『貴族』、『貴族』の上に『王族』という身分制度がある
・さらに『貴族』は『子爵』『伯爵』『公爵』と分かれており、過去から現在に対しての『国への貢献度』によって貴族内でも身分差があり、『子爵』→『伯爵』→『公爵』と『位分け』されている
・貴族は戦争など有事の際に国や国民を守る義務がある。その為、平民は有事の際に民を守る貴族に対して、平時は敬意を払う義務がある
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「⋯⋯このように、平民は平時の際は貴族に対して『敬意を払う義務』がある。ちなみに、私は『ケイティ・バクスター』⋯⋯バクスター伯爵家の者だが、私のような『伯爵』やその下の『子爵』、さらに上だと『公爵』や『王族』の生徒らも在籍している」
「はあ⋯⋯」
「本来、異世界から召喚された『救世主』であれば『公爵』と並ぶ身分だが、今のお前はただの『平民』だ」
「はあ⋯⋯」
「当学園は『身分・種族差別禁止』という『一応のルール』はあるが、学園内でも自分が『平民』であることを決して忘れず、貴族の生徒に対しては『最大の敬意』を払って接するように!」
「はあ⋯⋯」
話を聞く限り、どうやらケイティ先生は『平民』に対して厳しい側の人間らしい。
ケイティ・バクスター⋯⋯燃えるような真紅の長髪、キリッと鋭い目つき、何もしてなくても相手を威圧しているかのようなその見た目はまさに『女王様』という印象。おまけに美人でスタイルも『ダイナマイトボデー』と何拍子も揃ったその風貌はかなりの存在感だ。⋯⋯要するに『エロい』ということだな!
あと、『かなりの実力者』であることも対峙した瞬間すぐにわかった。⋯⋯要するに『エロい』ということだな!
それにしても、この『ケイティ・バクスター』や、学園長の『モーリス・ガーフィールド』、あと『ブキャナン宰相』もそうだが、かなりの実力者であることは間違いないのだが、そんな実力者がいても『魔族』ひいては『邪神』というのを倒すのに、俺たち異世界の『救世主』の力が必要ということは⋯⋯⋯⋯そんな実力者でも『魔族』や『邪神』の討伐は難しいということなのだろうか。
だとすると、異世界からきた俺たちは成長していけば『この世界の実力者よりも強くなる』⋯⋯そういうことなのだろうか。実際、城の奴らが柊木たちのステータスを見て「ステータスの初期値が高い!」などと言って驚いていたし、その可能性は高いのかもしれない。
もしそうだと仮定すれば、柊木たちはいずれこの世界の実力者を超える力を身につけることになるということ。であれば、今の時点では確かに俺は柊木たちよりも強いが、そこに満足しているといずれ『足元をすくわれる』ことも充分考えられる。⋯⋯いや、むしろあり得る話だろう。そう考えると、やはり『レベル上げ』はこれからも優先して行う必要があるということだ。
ま、実際、今後いろいろやろうとしている『ざまぁ』は、柊木たちに対して『圧倒的な実力差』が必要だから、レベル上げを疎かにするつもりはないけどな。
それに、この世界の『謎』⋯⋯つまり『ハズレモノという称号の歴史隠蔽』の調査もあるから、それと並行してレベル上げも行っていけばいいだろう。そんな今後の方針を考えながら、ケイティ先生の話を適当に相槌を打って聞き流していると、
「⋯⋯クサカベ。何だ、その空返事は? どうやら『礼儀』からわかっていないようだな?」
ケイティ先生が俺の空返事に少しおこな様子。軽く殺気を放ちながら注意してきた。
「⋯⋯⋯⋯」
俺は学園に入る上で考えていたことがある。それは、この学園で活動していく上で必要となる『味方を作る』というものだ。
ただし、誰でもということではない。この学園で『影響力のある人物』という縛りでだ。
しかし、そんな人物を特定するにはある程度時間が必要かと思っていたのだ⋯⋯⋯⋯が、そんなことはなかった。そう⋯⋯ケイティ先生だ!
そんなわけで、目の前の殺気を放つケイティ先生に「俺は先生と仲良くなりたいです!」という想いを伝えようと試みた。ケイティ先生はレディーだ。そんなレディーへの初手はズバリ⋯⋯⋯⋯褒めることっ!!
「あの、ケイティ先生⋯⋯」
「何だ?」
「どうして、先生はそんなに綺麗で美しい人なのに、わざわざキツイ言い方をするのですか?」
「なっ?! な、なななななななっ⋯⋯?!」
「「「「「っ!!!!!!!!!!」」」」」
俺の言葉に教室の空気が一瞬で凍りついた。⋯⋯あと、ケイティ先生が顔を真っ赤にして『な』を連呼している。そんな『な』を連呼するドギマギケイティ先生に、さらなる燃料投下を行ってみた。




