031「ひょっこりはんハクロ登場(一部の生徒の性癖が発覚します)」
「何じゃ? だらしないのぉ〜」
「げぇっ!!!!」
「「えっ!?」」
ハクロが隠れていたクローゼットからひょっこりはんして出てきた。
実は、王城に着く前にハクロと俺は、一度王城に侵入し、俺が前に使っていた部屋へ入っていた。
え? どうやって侵入したかって?
それは、ハクロの持っている『姿を消す魔法』を使って侵入した。すっげえ便利なので後から教えてもらうつもりだ。
ちなみに、以前俺が使っていた部屋はまだそのままで誰も使用していない様子だったので、ハクロにはその中で隠れてもらっていたのだ。
——そして、今に至る
「だ、だだだだだ、誰⋯⋯っ!?」
まあ、二人がそこまで驚くのも無理はない。そりゃ驚くよね。
ただ、何だろう⋯⋯。
古河の反応については、何というか⋯⋯⋯⋯|驚き以上に興奮している《・・・・・・・・・・・》ように見えるのは気のせいだろうか?
「ワシの名はハクロ。エイジのパートナーじゃ」
「「え、えええ、瑛二の⋯⋯パートナーっ!!!!!」」
「ど、どういうことだよ、瑛二! この金髪美少女とお前って、どういう関係なんだっ!?」
「あ、いや、その⋯⋯」
「瑛二! き、ききき、君はその⋯⋯ハクロたんがパートナーと言っていたが⋯⋯つまり⋯⋯パートナーとは⋯⋯その⋯⋯こ、こここ、恋人関係という意味⋯⋯なのかい?」
「え? あ、いや、そういう意味じゃ⋯⋯」
ん? 今、古河の奴⋯⋯『ハクロたん』とか言った? 言ったよね?
こ、こいつ、もしかして⋯⋯⋯⋯『ロリ美少女癖』かっ?!
ま、まさか、あの美少女枠の古河が⋯⋯まさかの『ロリ美少女性癖』をお持ちだったとはっ!?
う〜む、人は見た目だけはわからんもんだ。⋯⋯勉強になりました。
まー、そんなことはさておき、こっちとしては、これはこれで都合が良い。しかし、その前に、
「おい、ハクロ。お前なんで勝手に出てきたんだよ?」
「お前らの話を聞いてこれなら大丈夫じゃな⋯⋯と思ったからじゃ」
ふむ⋯⋯さすが『俺流ざまぁ』にわかりみが深いハクロだけはある。
「お前もそう思うか?」
「うむ、いけるじゃろ?」
俺とハクロが二人をほっといたまま話をしていると、
「お、おい、瑛二?! 二人で何を話してる!⋯⋯ていうより、この子は一体何者なんだよ!?」
「ハ、ハクロたんは⋯⋯おいくつにゃのかな?」
二人がハクロについて情報を求めてくる。⋯⋯あ、いや、うち一人は様子が違うが。
「ハクロは崖に落ちた俺を救い、ダンジョンからも脱出させてくれた命の恩人だ」
そう言って、俺は二人にハクロのことを『俺のシナリオどおり』に説明した。
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【俺のシナリオ(ハクロ編)】
・崖から落ちた俺は、ダンジョンの最下層まで落ちてそこでハクロに助けられた
・助けてもらった後、ハクロは謎の人物ではあるが「俺の味方だ」といってついてきた
・あのダンジョンのダンジョン主
・俺はハクロに鍛えられて強くなった
※ハクロが「白龍」であることは秘密
※瑛二の『ハズレモノの正体』も秘密
※本当のステータスも秘密(偽装ステータスはOK)
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「ダ、ダンジョン主だと?! つ、つまり、この子が、あのダンジョンで一番強い奴ってこと⋯⋯?」
「そうだ。ちなみにあのダンジョンは全部で100階層ある」
「と、ということは、この子が⋯⋯このハクロたんが、あのダンジョンの最下層100階層にいたってことなのかい?」
「そゆこと。そして、俺はそのハクロに鍛えてもらったおかげで強くなった」
「「え?! 強くなった?」」
「ああ。ダンジョンの魔物をある程度なら一人で単独で倒せるくらいには強くなったぞ」
「し、信じられん。にわかには信じられない話だ⋯⋯。だが⋯⋯」
そう言って、吾妻はさっきの『瑛二の手を全く振り払えなかった』ことを思い出す。
「ま、この人間二人の反応が、一般的な反応じゃろうな」
「ハクロ?」
ここで、ハクロが話に参加してきた。
「お前ら二人が『エイジが強くなった』というのを簡単に受け入れられないのも無理はない。なんせ、瑛二が崖に落ちてから戻るまで一週間くらいしか経っておらんからのぉ〜」
「なるほど」
たしかにハクロの言うとおりである。しかし、そうなると、
「瑛二! そこまで言うならお前のステータスを見せてくれ!」
と、こうなる。
「ほれ⋯⋯」
俺は吾妻の要求に普通に応えた。
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【ステータス】
名前:エイジ・クサカベ(異世界人)
称号:ハズレモノ
レベル:2
HP:28
MP:19
身体能力:21
身体硬度:11
魔法:なし
固有魔法:なし
固有スキル:なし
体術:なし
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「は? 全然変わってねーじゃねーか! レベル2のままじゃねーか!」
吾妻は予想通りの反応をした。しかし、
「瑛二君、これは一体⋯⋯どういうことだい?」
古河は、吾妻と違ってどうやら俺のステータスにちゃんと『違和感』を感じてくれたようだ。さすが⋯⋯といったところか。
「どういうことだよ、古河?」
吾妻がそう言って、古河に質問する。
「いいか、吾妻⋯⋯。さっき瑛二君が言ってたろ?⋯⋯『ハクロたんに強くしてもらった』って?」
「あ、ああ。でも、ステータスじゃレベルは前と変わってねーじゃねーか。てことは⋯⋯」
「てことは?」
「い、言いづれーよ」
「言いづらい?」
「たりめーだろ! だ、だってよ! このステータス見ればわかるじゃねーか! さっきの瑛二の話は、つまり⋯⋯⋯⋯ハッタリだったってことだろ? 本当は強くなんてなっていなかったってことだろ! 俺の口から言わせんな!」
吾妻が言いづらそうにしながら、古河に恫喝する。しかし、
「は〜⋯⋯⋯⋯吾妻、君は何もわかっていないようだね」
「は?」
「いいかい? 確かに瑛二君のステータスは一週間前と変わっていない。それだけなら吾妻の言い分もわかる。だが、さっき、君は瑛二君の手を両手を使って全力で振り払おうとしても⋯⋯⋯⋯振り払えなかったよね?」
「⋯⋯あっ!?」
「そう⋯⋯おかしいんだよ! 瑛二君がこのステータスというのはっ! 現在、レベル19にもなった吾妻が⋯⋯私たちの中で柊木の次にレベルの高い吾妻が⋯⋯その全力を持ってしても、瑛二君の手を振り払えなかったという事実が⋯⋯っ!」
「た、確かに⋯⋯」
古河の説明にやっと理解した吾妻。しかし、このステータスの違和感をすぐに発見した当の本人である古河の顔はこれまでの中で一番、怪訝な表情を見せる。
「瑛二君⋯⋯⋯⋯君、いま、どれだけ強いの?」
俺は古河の質問にニチャァと素敵な笑みをこぼして差し上げた。




