001「異世界召喚」
突然ですが、新作をアップしました。
勢いでついにアップしましたw
「ざまぁもの」です。
一応、新作は「月・水・金」と週3回更新を予定していますが、
初回だけは、今日土曜日にアップし、明日2話目もアップします。
それ以後は「月・水・金」更新です。
よかったら、読んでみていただければと思います。
ちなみに、現時点で二十数話分書いていますが、
大幅変更とかあるかもなので、その時は書き直し
みたいになるかもです。
「二作品同時に執筆可能かどうかという試験的なもの」
でもあるのですが、とりあえずトライしてみます!
よろしくお願いします。
【第一章 ハズレモノ胎動編】
「こ、ここは⋯⋯どこだ⋯⋯?」
目を覚ますと、そこは天井の高い石造りの部屋だった。
周囲には松明というより、むしろ『地球の街灯』に近い明るさを発する光が壁にいくつもかけられていた。どうやら、人工的に作られたものっぽい。
それだけならまだよかった。
いや、自分の状況がまったくわかっていない俺が「それだけならよかった」というのもおかしな話だが、でも、そんな言葉が出てしまうほど、その部屋には⋯⋯⋯⋯|一際大きな存在感を放つモノ《・・・・・・・・・・・・・》が目の前にいた。
「し、白い⋯⋯龍⋯⋯?」
目の前のソレは、この部屋の高い天井に頭がつきそうになるほど大きな、そして、神々しいほどに白く輝く一匹の⋯⋯⋯⋯『白い龍』だった。
<⋯⋯目覚めたようじゃな>
「っ?! しゃ、しゃべ⋯⋯」
<悠久の時を越え、遂に『ハズレモノ』がこの世界に顕現したか>
「え⋯⋯?」
********************
その日、俺はいつもの『処世術』に努めていた。
「よぉ、瑛二」
「や、やぁ、翔太君」
「売店でコロッケパン、買ってきてくれや」
「わ、わかったよ」
「ん? どうした?」
「あ、あの⋯⋯お金⋯⋯」
「ああ⋯⋯ツケといてくれ」
「え⋯⋯あ⋯⋯で、でも⋯⋯昨日も一昨日もまだお金もらってない⋯⋯」
「ツ・ケ・と・い・て・く・れ⋯⋯な? 俺たち友達だろ?」
「あ、う、うん⋯⋯わかったよ。しょ、しょうがないな〜」
「おう、悪な! じゃあ、いつものように早く行ってこい」
「あ、瑛二〜」
「!⋯⋯し、信二」
「あ? 信二君⋯⋯だろうが?」
「あ、う、うん。信二⋯⋯君」
「俺、焼きそばパンでよろ〜。金は俺もツケで〜」
「⋯⋯う、うん。わかったよ」
——お昼休み。これが、俺⋯⋯『日下部瑛二』のいつもの日常だ。
『いじめられている』という自覚はある。だが、それを『認めてしまう』と、周囲から『いじめられっ子』と見られるのが俺は嫌だった。だって、そうだろ? そんなのあまりにも惨めすぎるじゃないか。
だから俺は自分の中で、『いじめっ子』に対して『友達』という関係性を無理矢理構築していた。つまり、
『あくまで友達の頼みだから。仕方なく頼み事を聞いているだけだから』
これが、高校三年間を過ごすための俺の『処世術』である。
笑うなら笑うがいいさ。自分でも情けないと思うよ。でも、何の力も持たない俺なりに考えた『生活の知恵』だ。何とか高校生活を無事終えて卒業すれば『俺の勝ち』だ。社会に出れば、俺はきっと自由になれる。だから、今を耐え抜くんだ。例え、情けないほどの処世術に縋りついてでも⋯⋯。
売店で友達に頼まれたパンと自分のパンを買ってクラスに戻る。クラスに戻ると、俺をパシった⋯⋯あ、いや、俺が売店に行くついでに一緒にパンを買ってくるよう頼んだ二人⋯⋯赤髪リーゼントの『吾妻翔太』と、その子分、腰巾着、金魚のフンの『小山田信二』がいる机に行き、そこで一緒にパンを食べる。いかにも友達であるかのように。
すると、そこへ⋯⋯、
「おい! 吾妻! 小山田!」
「あ?」
「あ、柊木君チース! 何すか?」
「何すか、じゃない! お前らさっき日下部にパンを買いに行くようパシらせただろっ!」
(こ、こいつっ?!『柊木拓海』! そんな言い方すんなよ!)
「あ? 何言ってんの、柊木? 俺が瑛二のことパシっただと? 違げーよ。俺は瑛二がパンを買いに行くから、ついでにパンを買ってきてもらったんだけだ。そうだよな、瑛二?」
「そ、そうだよ、柊木君」
「ほらな? 本人もそう言ってるだろ?」
「ふざけるな、吾妻! お前のいじめを怖がって日下部が何も言えないだけだろうがっ!」
(ふざけんな! やめろよ、柊木! そんな言い方したら、周りが⋯⋯⋯⋯っ!? み、みんなが⋯⋯ニヤニヤしながら何か喋ってる⋯⋯絶対、俺を見て『憐れんでる』やつだ! やめろ! やめてくれよ、毎度毎度! もうあっち行ってくれよ、柊木ぃぃ!)
この『柊木拓海』はクラスのリーダー的存在で、クラス内カーストの頂点に君臨する『イケメン君』だ。柊木は事あるごとに、今のように吾妻と小山田に『日下部をいじめるな』と言ってくる。
この行動が、柊木の『純粋な正義感』ならまだいい。だが、こいつはそんな奴ではないことを俺は知っている。柊木がこうやって注意してくるときは必ず『女子が大勢いる教室内』だけだ。
実際、柊木が吾妻と小山田に注意すると、周囲の女子が、
「拓海君、かっこいい〜!」
「きゃー! 拓海く〜ん!」
「超イケメンなんだけど! 拓海君、マジ、やばくね?」
などと、チヤホヤと黄色い声が上がる。そんな時、柊木拓海は女子たちから顔が見えない角度に立って、下卑た笑みを浮かべて悦に浸っている。柊木拓海はたぶん『自分大好きナルシスト野郎』なのだろう⋯⋯反吐が出る。
ちなみに以前——放課後、体育館裏で吾妻と小山田に捕まり『プロレスごっこ』と称して、一方的にプロレス技をかけられているとき、柊木はそこを通りかかった。しかし、柊木は特に何も注意することはせず、むしろ、技をかけられている俺を見て、明らかな『侮蔑の笑み』を浮かべ、過ぎ去って行ったのだ。
そして、恐らくは柊木の『本性』を吾妻も小山田もよくわかっている。だが最悪なことに、二人はその上で柊木に協力しているのだ。
だから今、教室で柊木が吾妻たちを注意しているのが『女子への優しさアピール』であることを二人は知っていて、その上で、吾妻と小山田は『悪役』を買って出ているのだ。理由は、ここで柊木に『協力』することで恩を売っているから。
柊木拓海はカーストトップの人間だ。だから、吾妻と小山田はその恩恵をいつか受けようとでも思っているのだろう。俺からすれば最悪な組み合わせだ。
しかし、これが⋯⋯目の前のこの光景が⋯⋯俺の現実であり日常なのである。
********************
その日もいつものようにパシられ戻ってきた俺は、吾妻と小山田と三人で教室で昼飯を食っていた。すると、定期的な柊木の『優しさアピールタイム』が始まろうと俺たちの席に近づいてきた⋯⋯⋯⋯その時だった。
グラ⋯⋯。
「ん? 今、なんか揺れなかったか?」
「あ、ああ。少し、揺れたような⋯⋯」
グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ⋯⋯っ!!!!!!!
「「「「「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」
突然、教室全体が大きく揺れた。
地震! しかもかなり⋯⋯⋯⋯デカいっ!?
俺は必死に近くの机の足にしがみついた。周囲も同じようにしている。
グラグラグラ⋯⋯ガシャーン! ガシャーン!
揺れは収まるどころか激しさを増していき、その影響で窓ガラスが全部割れ、床に破片が散乱する。
グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ⋯⋯っ!!!!!!!
揺れはいっこうに収まらない。むしろ激しくなる一方だ。
大丈夫なのか? ここにいて? こんな大きい地震だぞ?
「建物の中って⋯⋯⋯⋯かなり危険じゃなかったっけ?」
そう思った俺は、机にしがみつきながら教室の天井に目を向けた。すると、
「あ⋯⋯」
ちょうど、天井のコンクリートが崩落する瞬間だった。
俺は⋯⋯俺たちは⋯⋯天井の崩落により命を落とした。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯はずだった。
「我が召喚に応じていただき、誠にありがとうございます! ようこそ、異世界の救世主たちよ!」
気がつくと、目の前に透き通るような水色の長めのショートカットをした絶世の美少女の美声が鼓膜を震わせた。
て、ていうか、異世界? 救世主?
え? ま、まさか、そんな⋯⋯⋯⋯嘘だよな?
しかし、残念なことにこの状況は嘘でも何でもなく現実だった。
俺たちは『異世界』に転移した。