プロローグ
「なぁ、これ……なんだよ……」
思わず伸ばす手が震える。
部屋中に散らばったシャープペンシルの芯は、紛れもなく目の前にいる幼なじみが大切にしていたものたちだ。
動揺しながらも、折られている芯を一つ一つ震える手で拾い上げる。
しかし、持ち主である幼なじみは拾い上げるのをとうに諦め、その場から動く気配は感じられない。
「芯くん、これ……まさか自分でやったわけでもないだろ。誰にやられたんだよ」
幼なじみである、喪武山 芯太郎は優しく微笑んだ。
「コースケ、俺は大丈夫だから」
「でももう芯くんこれじゃあ……」
「……そうだよ俺はもう、」
――戦えない
言葉にならなかった。
今までどんな厳しく過酷な状況でも、何度だって立ち上がって俺に勇気を与えてくれた幼なじみが、もう戦えないと俺の目の前で口に出したのだった。
「……いつもみたいに、言ってくれよ……『シャー芯は折れても、俺の心は折れちゃいねぇ』って……そうやって何度だって立ち上がってくれたじゃあねぇかよッ!」
「……知ってるだろコースケ、俺、嘘はつけねぇんだよ」
ついに溢れ出した涙は、俺の意思なんかお構いなしと言わんばかりに頬を伝っていく。
まるで動き出した時を、止めることはできないのだと言われているようだ。
「俺は大丈夫だ」
だめだ、泣くな。1番悔しい思いをしている芯くんが泣いていないのに、自分が泣くなんてことは許されない。ましてや、慰めてもらうわけにはいかない。
「コースケ」
――わや学には決して、近づくな。
芯くんが残した、たった一つの手がかり。それは彼が通っていた学校の名前だ。
家族とも言える大切な幼なじみの心を折った犯人は、わや学にいる。
こうして俺はこの春、A県N市まじわや学園 通称わや学に入学した。
これは、【愚者なる者たち】と笑われた能力者たちの物語であり、この俺 主人 公輔の始まりの物語である。
川澄アンブレラと申します。フールズメイトを読んでくださりありがとうございます。
プロローグの時点で「は?」と思った方が正しい反応なのかなと思います。
こちらの作品は、学生の頃おふざけで友だちと作ったキャラクターたちを動かしてみたくて書き始めた作品です。少しでも多くの方に楽しんで頂ければ幸いです。
Twitterの方ではイラストも公開しておりますので、ぜひ見ていただけたらと思います。
読んでくださり、ありがとうございました。