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オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第5章「決戦」

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5-21「役割」

5-21「役割」


「指揮所を、移されたということか? 」

「分からん。だが、いずれにしろ、この城の指揮系統はもう機能していない。どの部隊も、統率されずに各隊で戦っている様子だ」

「お父様! 」


 深刻そうな口調でガレアとやり取りをしているアルドル3世に、不安な気持ちを振り払うかのようにティアが声を張り上げた。


「今すぐ、下のみんなを助けに行きましょう! まだ、みんな戦っています! 2重の城壁だって、突破されたのはまだ外側だし、まだ南側の城壁だってあります! 頑張ればきっと、魔物を倒せます! 」

「いいや、ダメだ。もう、手遅れだよ」


 だが、アルドル3世は首を左右に振った。


「すでに城の指揮系統はズタズタだ。前線の部隊は状況も分からず、ただ生き延びるために戦っているし、後方の予備兵力もどこへ救援に向かえばいいのか分からずに右往左往している。これでは、もう、とても戦とは呼べない」

「でも、お父様! 」


 ティアは、「納得いかない! 」と、アルドル3世に詰め寄った。


「だって、私たちはまだ、何もしていません! 見ているだけしか、していません! 私たちが、こんな状況を招いたっていうのに! ずっと、お父様たちに守られてばかりで! 」


 そんなティアに、アルドル3世は身をかがめ、優しい笑みを浮かべた。


「安心しなさい。お前たちの役割は、きちんとある」

「それは、何ですか? 」


 ティアは少しだけ表情を明るくし、他の少女たちと1頭のオークも、アルドル3世の言葉に耳を澄ます。


「ああ、もちろんだ。……お前たちには、転移魔法で、我がパトリア王国軍の本営へと向かってもらう。伝令だ」

「伝令、ですか? 」

「そうだ。私たちの軍隊は後方にいて、まだほとんど戦闘に参加していない。だが、オプスティナド4世からも、私からの指示も届かないから、動けずにいる。お前たちが行って、すぐに前線にいる味方部隊の撤退を支援する様に命令するんだ」


 そうすれば、と言いながら、アルドル3世はティアの肩を叩く。


「きっと、崩れかけている前線も持ち直せる。……大事な役目だ、やれるな? ティア」

「はい、もちろん! ですが、お父様たちは? 」

「私たちは、オプスティナド4世の消息を探らねばならん。生きておられるのならよし、もし、万一のことがあれば……、指揮系統を一から立て直さなければならない」


 それからアルドル3世は、ティアたちに念押しする様に、「しっかり頼むぞ」と言い、ティアも同意して頷いて見せる。

 少女たちもサムも、役目を与えられて嬉しかった。


「……それでは、転移の魔法を準備しますね。難しい魔法なので、少しお時間を」

「手伝うわ」


 さっそく、キアラとステラが、転移魔法のための魔法陣を描き始める。


 転移魔法は、その名の通り、魔法をかける対象を別の場所に瞬時に移動させる、転移させる魔法だった。

高度で、難しい魔法だとされている。

 魔術師たちの間でも使える者は限られ、その使用には魔法陣などの準備が必要不可欠になる。


「あの、お母様、お手伝いさせてください」

「いいのよ、ルナ。あなたたちは動かないでいてね。転移魔法は、まだ不慣れでしょう? 」


 杖を手に1歩前へと出るルナを柔らかな笑顔で押しとどめたキアラは、なるべく汚れていない床の部分を見つけて、ステラと共に魔法陣を描いていく。


 その間に、アルドル3世とガレアは、他の全員からよく見えない位置に移動し、手に持った魔法珠まほうだまに向かって何かを話していた。

 その光景を見て、リーンは眉をひそめたが、いつもの様に彼女は黙っていた。


「できました。それでは、みんな、魔法陣の中心に立ってくださいね」


 やがて転移魔法の準備が終わると、キアラは杖の先端で魔法陣の中心部分を指示した。

 少女たちとサムは、言われた通り、魔法陣を踏まない様に注意しながら指示された場所に立った。


「それでは、行きますよ? みんな、動かないでくださいね? 動くと、転移させる位置がずれることがありますので」


 転移される全員が位置についたことを見届けると、キアラは古代語ルーンで呪文を唱え始める。


 周囲に漂う魔力が集められ、魔法陣の中で意味と形を成していく。

 やがて、魔法陣がまばゆい光を放ち、一行を包み込んだ。


 その光の向こうから、キアラの声だけが一行に届く。


「いい? みんな、魔法学院の、マザー・テナークスを頼りなさい。そして、聖剣マラキアと、サムさんの勇者の力を取り戻すのです。テナークス先生なら、きっと、力になってくれますから」


 それは、優しさと、悲しみ、寂しさの入り混じった言葉だった。


「きっと、世界を救ってください。それが、あなたたちに託す、大切な役割です」


 一行は、ウルチモ城塞の陥落を阻止するために伝令を任されたと思っていたから、キアラのこの言葉の意味をすぐには理解することができなかった。

 だが、その意味を理解すると、ルナが慌てたような声をあげた。


「そんな! お母様っ!? 」

「ダメ、ルナ! じっとする! 」


 取り乱して魔法陣から駆け出して行こうとするルナの腕を、リーンがつかんで引き留めた。

 それとほぼ同時に魔法陣の光は消え、4人の少女と1頭のオークは、転移魔法によって飛ばされた。


 その行先は、ウルチモ城塞の内部ではなく、そのずっと南。

 戦場から、遠く離れた場所だった。


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