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オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第5章「決戦」

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5-15「再開」

5-15「再開」


 人間側に入城を謝絶されたエルフとドワーフの軍勢は、主にドワーフの戦士団の団長が怒りをあらわにしたためにもめたものの、最後にはウルチモ城塞の周辺から退去することとなった。


 人類側はせめてもの心遣いとして、この異種族の軍勢に対してその道中で必要となった経費などを支払われ、帰り道での各諸侯の領地を通るときに便宜を図ることが約束された。


 だが、丁重ではあっても、暗に「信用できない」と言われた2つの異種族の心境は、どうだっただろうか。

 決して、人間に対して良い印象を持たなかったはずだ。


 去っていく異種族の軍勢を、4人の少女と1頭のオークは、ウルチモ城塞の南側の城壁の上から見送った。

 一行はエルフやドワーフという種族とまだ直接対面したことがなかったから、人間の世界ではあまり関わり合いを持つ機会のないこの2つの異種族を、せめて遠目にでも見ておこうと思っていた。


 異種族の援軍が現れた時、ウルチモ城塞の南側の城壁には、警備のために駆け付けた兵士たちや野次馬の人々がひしめく様だったが、今はほとんど人はおらず、点々と警備の兵士が歩哨として立っているだけで閑散としている。

 皆、ここから去っていく相手に対して、関心を失っているのだ。


「これで、良かったんでしょうか」


 小さくなっていく異種族の軍勢の姿を眺めながら、ルナが疑問の言葉を口にする。


「エルフは優秀な魔術師だとお母様から聞いていますし、ドワーフは勇猛な戦士たちだとお父様から聞かされていました。協力してもらえれば、きっと大きな力になったはずです」

「ま、仕方ねぇんじゃねぇの? 」


 サムは城壁の上に設けられた胸壁によりかかって、南へ向かう異種族の軍勢を眺めながら口を開く。


「何だっけ、オプスティナド4世だっけ? 人間の軍隊の最高司令官様とやらがそう決めたんだから、俺たちにはどうすることもできんことさ」

「でも、エルフの魔術師に協力してもらえれば、サムさんにかけられている魔法だって。…・…私、あまり力になれなくて、ごめんなさい」

「なーに、気にすることはねぇって、ルナ嬢ちゃん」


 申し訳なさそうにしているルナに、サムは笑って見せた。


「俺は、感謝しているんだぜ? 嬢ちゃんたちにも、嬢ちゃんたちの親御さんたちにも。20年もオークをやってきて初めて、人間に戻れるかもって思えてるんだ。それだけでも、感謝してもしきれないさ」

「あら、なかなか、殊勝な態度じゃない」


 城壁の胸壁に頬杖を突いていたティアが、にやりと不敵に笑いながらサムの方へ視線を送る。

 どうやら、湿っぽくなった雰囲気を吹き飛ばそうとしている様だった。


「アンタ、今の見た目はただのオークだけど、中身はなかなかいいおじ様よね? 人間に戻ったら、どんな格好になるのかしらね? 」

「そりゃ、もちろん、筋骨隆々、たくましい体つきの、ダンディなイケメンに決まってるさ」


 湿っぽい雰囲気が苦手なサムも、ティアの話に乗っかった。


れちゃっても知らないぜ、お嬢ちゃんたち? 」

「あら? そのお腹で? 」


 ティアは、ふふふっ、と吹きだす様にして笑う。


「ぽっちゃりお腹の、冴えない中年のおじさんになる可能性の方が高いと思うけど? 」

「うっせぇや。この腹は、オークはみんなそうなんだよ」


 実際、サムの腹は丸々としていて、よくふくらんでいる。

 サムはティアに言い返しながら、内心では(そうなってもおかしくねぇな……)と、否定しきれないことが歯がゆかった。


 そうこうしているうちに、エルフとドワーフの軍勢は地平線に消えていき、見えなくなってしまった。


「確かに、エルフとドワーフの助力が得られれば心強いが」


 一行が、去ってしまった友軍にさびしさを覚えた時、ラーミナが口を開いた。


「今のところ、我々、諸王国の連合軍が魔王軍の攻撃を跳ね返して、敵が攻めあぐねているというのは事実だ。このまま時間さえ稼げれば、サム殿も人間に戻ることができて、魔王を倒す道筋も見えてくるだろう。なにも、問題はないはずだ」


 それは、他の仲間たちと、自分自身の不安になりそうな心に言い聞かせているような言葉だった。

 やはり、人類単独で魔王軍と戦い続けるというのは、心細いものがある。


「でも、ちょっと、変」


 だが、そう言ってラーミナの努力を台無しにしたのは、リーンだった。


「ちょっと、やめなさいよ、リーン」


 いつもの調子で、ぼんやりと何を考えているか分からない表情とジト目で、突然話し始めたリーンに、ティアが嫌そうな顔を向ける。


「アンタが急にそういうことを話し始めると、いっつも、何か騒動が起きるんだから! それに、話すならもう少し詳しく言ってくれないと、何のことか分からないじゃない」


 リーンはティアの方に少しだけ顔を向けて、こくり、と小さく頷いて見せた。

 了解した、という意味らしい。


 それから少し間をおいて、リーンは、彼女なりに考えて長文を話した。


「魔王軍、何日も攻撃してこない。何のため? 魔王軍、魔物、たくさん湧いてくる。いくら犠牲が出ても気にしない、そういう攻め方をする。だけど、何日もじっとしている。これって、何か、変」

「まさか……、スパイでも紛れ込ませているって言うんじゃないでしょうね? 」


 ティアは「そんなことあるわけがない」とでも言いたそうだった。

 だが、すぐにそういう言葉が出てきたということは、ティアも内心ではリーンと同じ様に「変だな」と思っていた、ということでもあった。


 サムが「さすがに心配し過ぎなんじゃねぇか」と言おうとした時、一行の背後、北の方で不気味な咆哮がとどろいた。


 すぐに、城壁の守りについていた兵士たちに「戦闘態勢につけ」という号令を発する角笛と太鼓の音が鳴り響き、夜の訪れとともに休息を取ろうとしていた人々が慌ただしく動き回り始める。


 魔王軍の攻撃が再開されたのに違いなかった。


「ちょっと、リーンっ!? 」


 背後を振り返っていたティアは、それから、血相を変えながらリーンへと迫った。

 まるで、リーンが全ての元凶である、とでも言う様な勢いだった。


「私、何も悪くない」


 リーンは少しも動じず、半開きの目でティアを見つめ返しながら、淡々とした口調でそう言った。

 もっともな反論だ。


「とにかく、オプスティナド4世のところへ戻ろう! 」


 それから一行は、ラーミナのその声で、慌てて駆け出した。


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