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オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第5章「決戦」

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5-6「対面」

5-6「対面」


 一行とアルドル3世との対面は、サムが危惧していた通り、穏やかなものとはならなかった。


「このっ、大バカ娘が! 」


 アルドル3世はバンルアン辺境伯が準備してくれた一室で一行と会い、人払いを済ませると、開口一番、そう言ってティアを怒鳴りつけたからだ。


 アルドル3世は38歳。濃い色の金髪に豊かな顎鬚あごひげ、サファイア色の瞳を持つ中年の男性だった。

 ティアと同じ色の瞳は、2人が親子であるという事実を思い起こさせるものだった。


 サムは、アルドル3世の第一印象は「優しそうな人」というものだったし、実際、この部屋に入るまでのアルドル3世は穏やかな表情を浮かべており、少しも怒りの感情など感じさせなかった。


 しかし、部屋に入って、人払いが済んだとたんの豹変ひょうへんだった。


 もっとも、そうなることは少女たちにとって予想していたことだった。

ティアは何の反論も弁明もせずに、素直にアルドル3世に頭を下げて謝罪する。


「ごめんなさい、お父様」


 ティアに続いて、ラーミナ、ルナ、リーンが頭を下げ、サムも慌ててアルドル3世へ向かって頭を下げた。


 一言目に娘を怒鳴りつけたものの、アルドル3世はそれ以上怒りの言葉をぶつけたりはせず、ただ、顔を赤くしたまま、自分を抑えるように荒い呼吸をくり返している。

 何を言うべきか、自分の中で必死に整理しようとしている様だった。


「……お前も、自分が何をしでかしてしまったのか、分かっているのだろう」


 しばらくしてから、アルドル3世は再び口を開いた。


「私がお前に託したのは、ルクス様によって選ばれた勇者殿を探し出し、聖剣を渡すことだったはずだ。それなのに、お前自身が勇者になろうだなんて! ……それどころか、聖剣マラキアを失ってしまったのだぞ! 」


 一行は、無言のまま、頭を下げ続けた。


 少女たちには、少女たちなりの思いがあった。

 光の神ルクスから魔王を倒す様にお告げがあってから、20年。

 どんなに探し回っても勇者を探し出すことができず、魔王が復活するその時は、いつになるか分からないまでも着実に近づいてくる。


 勇者が見つからないのは、当然だった。

 光の神ルクスに選ばれた勇者、サムは、醜い豚の怪物、オークに変えられてしまい、勇者として与えられた力も封じられてしまっていたからだ。


 どんなに探しても、勇者を見つけることなどできない。

 時間は無為むいに過ぎていき、魔王の復活の時だけが近づいてくる。


 そんな状況で、「勇者が見つからないのなら、自分たちが勇者になってやろう」と少女たちは決心した。

 強い覚悟で魔王に挑めば、光の神ルクスもきっと、自分たちを助けてくれる。

 勇者でなくとも、聖剣マラキアによって魔王を封じることができる。

 少女たちはそう信じて、戦った。


 結果、全ては裏目に出てしまった。


 その責任は自分たちのものだと、少女たちは理解している。

 だから、アルドル3世の叱責の言葉に一言も反論せずに、黙って頭を下げている。


 アルドル3世は何の弁解もせずにただ頭を下げ続けている少女たちとオークの姿を見て、やがて、視線をそらした。


「……私も、悪かったのだ」


 それから、独り言の様に口を開く。


「20年前、私は聖剣マラキアを預けられ、勇者殿を探すための旅に出た。だが、探し出すことができなかった。……元をただせば、私がいけなかったのだ。私たちの世代が勇者殿を探し出せなかったばかりに、お前たちに思いつめさせてしまった。お前たちに、無理をさせてしまったのだ」


 それは、自分で自分自身に言い聞かせようとしている様な言葉だった。


 サムはその呟きを聞きながら、アルドル3世の第一印象は間違っていなかったと思っていた。

 アルドル3世は王という立場からティアを叱責したが、同時に父親として、彼女たちが自分自身で魔王を倒そうと決意した気持ちを想像し、少女たちも悩んだ末にその決定を下したことを理解している。

 自分のことだけでなく、きちんと他人の思いや立場を考えられる人の様だった。


 さらにしばらくの間をおいて、アルドル3世は一行に「もう、顔をあげなさい」と告げた。

 アルドル3世はまだ怒っている様子だったが、少女たちをこれ以上責めようとは考えていない様だった。


「念のために確認するが……。ティア、お前が本物の勇者でないということは、まだ、誰にも打ち明けていないのだな? 」

「はい。お父様」


 ティアが頷くのを確認すると、アルドル3世は深々とため息をついた。

 それが明らかとなればどんな罪に問われてもおかしくない秘密がまだ秘密のままであることに、心底安心した様子だった。


「お前が「ニセモノ」だというのを秘密にしていたのは、正解だ。政治的にも、お前自身のためにも。……それは何とか考えよう。……それより、話してみなさい。お前たち、私に怒鳴られるためにわざわざ会見したいと申し出たわけでは無いのだろう? 」


 穏やかさを取り戻したアルドル3世にそうたずねられて、一行は顔を見合わせた。

誰から、どんな風に事実を伝えようかと、すぐには決められなかったからだ。


 話せば、必ず協力してもらえる。

 そう思ってはいるものの、やはり、複雑で、しかも重大な秘密だから、簡単に話すことは難しかった。


 アルドル3世は、少女たちが口を開くのをじっと待った。

 少女たちのも事情があり、それも、どうやら深刻なものであるようだと、すでに察している様子だった。


 迷った後、ようやく、一行を代表してティアが口を開き、説明を始めた。


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