3-15「激闘」
3-15「激闘」
4人の少女たちは、マールムがしゃべりきる前に動いた。
ティアとラーミナが姿勢を低くしてマールムに向かって突進し、その頭上を飛び越える形で、リーンが生み出した炎の槍がマールムへと向かって飛翔する。
ルナは杖を構えて呪文を詠唱し、突進するティアとラーミナに敵の攻撃を軽減する魔法をかけた。
リーンが放った炎の槍はマールムの顔面があった空間を貫き、そのまま奥まで飛んで玉座の間の壁に突き刺さって爆発し、紅蓮の炎をまき散らした。
マールムは、一瞬でその場から姿を消していた。
リーンからの攻撃をかわしたわけでは無かった。
自らが少女たちに攻撃を加えるために、前へと突っ込んできたのだ。
「ヒッハア! 魔王様バンザイィィッ! 」
奇声を発しながら、マールムは突進の勢いを乗せた斬撃をラーミナへと叩きつける。
サムには、マールムの剣さばきが見えなかった。
ただ、マールムからの斬撃を受けようと振るわれたラーミナの刀の表面に激しい火花が散り、ギャイン、と、金属がぶつかる音とこすれる音が入り混じった音が2回響くのを耳にしただけだ。
風圧で、ラーミナの髪が浮き上がった。
マールムの斬撃によってその内の数本が切り取られ、風圧でふわりと空中へと浮かび上がる。
ラーミナは悲鳴一つ上げずに、その場に両足を開いてしっかりと踏ん張って、マールムから次々と浴びせられる斬撃を受け止め続けた。
二刀流のマールムから浴びせられる斬撃は切れ目のない激しいものだったが、ラーミナは受ける一方ではあったものの、その全てを受け流した。
そのラーミナの頭上を飛び越えて、リーンが放った炎の矢が、マールムの顔面目がけて襲いかかる。
炎が迫った瞬間、マールムは心の底から嬉しそうな、楽しそうな笑みを浮かべる。
今度も、マールムはリーンの攻撃をかわした。
マールムは大きく体をのけぞらせて炎の槍を回避し、そのまま背後にバク転、体勢を立て直すために距離をとった。
そこへ、ティアが雄叫びを上げながら突っ込み、愛用するレイピアを鋭くマールムへ向かって突き入れる。
ティアのレイピアの切っ先は、マールムの甲冑の隙間を正確に捉え、その身体に深く突き刺さった。
「ヒャハッ!? 」
マールムは、驚きと、戸惑いと、感動とが入り混じった表情を浮かべた。
1歩、2歩、マールムは後ろへと後ずさる。
レイピアを深く突き刺されたために、動きが鈍くなったようだった。
「ラーミナ、トドメ! 」
ティアは根元まで深く突き刺さって簡単には引き抜けないレイピアを手放し、素早くマールムから飛び退りながら、鋭く叫んだ。
ほとんど間髪を入れずに、ラーミナが吶喊する。
魔法によって強化された彼女の刀は、マールムからの斬撃を受け流してもまだその鋭さを保っており、ラーミナはその鋭利な刃によってマールムの首を切り落とさんと刀を振り上げる。
だが、振り下ろされたラーミナの刀は、空を切った。
「なーんて、ナ! 」
驚愕に双眸を見開いたラーミナの耳元で、マールムは嗤った。
ティアのレイピアが突き刺さり、動きが鈍くなって見えたのは、全てマールムの演技に過ぎなかったのだ。
ドン、と、激しい衝撃音が辺りに響いた。
マールムの鋭い蹴りがラーミナの胴体をとらえ、彼女を勢いよく空中へと吹き飛ばした音だった。
「お姉ちゃんっ!? 」
ルナが悲痛な悲鳴を上げ、慌てて何かの呪文を唱えるが、間に合わない。
吹き飛ばされたラーミナは玉座の間の端にまで吹き飛ばされ、勢いよくラーミナは壁に叩きつけられた。
衝突によって生まれた破片が辺りに飛び散り、粉塵が辺りに広がっていく。
ラーミナは、まだ生きていた。
だが、戦うことなど不可能な傷を負っている。
彼女は壁に叩きつけられた後、何とか立ち上がろうとしたが、それができずに、口元から血を溢れさせながらその場に倒れた。
元々が上質な造りであるだけでなく、魔法によって強化されていたはずの胸甲が大きく歪んでいる。
マールムの攻撃は、鎧の防御を貫いてしまっていた。
「ラーミナ! 」
ティアが叫び、ルナがショックで口元を両手で覆って震える中、マールムの下品な笑い声が響く。
「ギャッハハハハハ! お前ら、悪くねぇ、悪くねぇ動きだ! 人間にしちゃア、上等だ! だが、無駄だ、無駄なんだよォ! 」
そんなマールムを、ティアは、悔しそうに歯を食いしばり、唇を引き結びながら、睨みつける。
だが、マールムは全く意に介さず、嗤っている。
「我輩はア! 魔王様がその身を「分けて」生み出して下さった存在イイ! 勇者よ、我輩は、その聖剣でなくば倒せんぞォ! 」
まるでもう決着はついていると勝ち誇った様に嗤いながら、マールムは自身に突き刺さったままだったレイピアを引き抜き、その場に投げ捨てた。
「さア! 選ばれし者よォ! その剣を抜けエ! 抜いて、我輩と戦えィ! 光の神のためにィ! 人類のためにィ! 仲間のためにィ! 」
右手で握った刀の切っ先をティアへ向かって突きつけ、マールムは叫んだ。
「言われ、なくても! 」
ティアはゴクリと生唾を飲み込むと、マールムを睨みつけながら、自身の背中に背負った聖剣の柄に手を伸ばした。




