表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第3章「クラテーラ山」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/204

3-11「抜け道」

3-11「抜け道」


「抜け道の近くまで着いたら、周りから見えない、適当な場所で私たちを下しなさい」

「へい、へい、分かっていますよ」


 サムはティアからの指示に答えると、言われたとおり、魔王城を守っていた塔が崩れて出来上がった巨大な瓦礫のそばで立ち止まり、少女たちが降りやすいように腰を下ろした。


 魔王城自体もそうだったが、塔の残骸も、長年に渡って酸性雨を受け続けてきたのにもかかわらず、溶けることなく残っていた。

 魔王城に魔王の力の影響が残っていて、残骸になったとはいえその姿をそのまま残し続けているのか、もしくは、ただの石でできている様に見えて、実際は未知の何かの素材で魔王城が形作られているのかもしれなかった。


 瓦礫のそばでサムが背負ってきた荷袋から外に出ると、4人の少女たちは手早く身支度を整えた。

 荷袋の中に隠し持ってきた武具を身に着け、戦う用意をする。


 サムがいたオークの山賊団を壊滅させたときの格好に近い姿だった。

 雪山を踏破してくる際は厚着をせざるを得なかったが、クラテーラ山の近くまでくれば地熱によって気温は十分にあり、動きやすい服装になっても何の問題もなかった。


「さ、行くわよ」


 ティアは聖剣マラキアを自身の背中に背負うと、塔の瓦礫の奥、魔王の王宮の外壁になっている部分をまっすぐに見据えた。


 ラーミナ、ルナ、リーンの他の3人の少女たちは、ティアの声に頷いて答える。


 少女たちは、未だに復活を遂げてはいないとはいえ、強大な力を持つ魔王まであと少しというところまで迫っている。

 これから彼女たちは魔王と戦うことになるだろう。

 その戦いの危険は、これまでの旅路とは比較にならないものになる。


 それでも、少女たちの決意は少しも揺らいでいない様だった。


(お嬢ちゃんたち、本気なんだな)


 サムはティアたちの決意に満ちた姿を眺めながら、双眸を細めた。

 娘と呼べるほどに年の離れた少女たちが示した覚悟を前に、自分は果たしてこれほど真剣になったことが今までにあっただろうかと、そう思うところがあったからだ。


「さて、ご主人様よ? 奴隷のオークは、どうすればよろしいので? 」


 それからサムは、わざと砕けた口調で少女たちにそう確認した。

 決意に満ちるのと同時に、緊張の糸で張り詰めた様になっている少女たちの心を、少しでも落ち着かせようと思っての発言だった。


「もちろん、アンタはこれまで通り、あたしたちに着いてきなさい」


 ティアはサムの方を振り返り、少しだけいつもの調子に戻って不敵な笑みを口元に浮かべる。


「王宮の中に入ったら、今度は、魔王の親衛隊と戦いながら進むことになるわ。その時、物資は多い方がいいもの。何なら、アンタを囮にして突破するっている手もあるんだし」

「それに、貴様をここで放置してしまっては、大声で私たちの存在を言いふらす恐れもあるからな」


 ティアに続いてラーミナが口を開き、サムの方をさげすむ様な視線で眺めた。


「私としてはここでトドメを刺しておくべきだと思っているが、ティアがまだ使い道を考えているようだから、それに従おう。貴様も、その方がいいだろう? 」

「へい、へい、まったく、おっしゃる通りで」


 サムは肩をすくめて見せ、それから、両手をそろえて前に差し出した。


「それで? 鎖はどうなるんです? また、取り付けるんでしょう? 」

「それはもう、必要ないわ」


 自分を最後まで奴隷として利用するつもりでいるのだから、少女たちはサムを拘束するために、一度は取り外した鎖をまた取り付けるのだろうとサムは思っていた。

 だが、意外なことにティアは首を左右に振った。


「アンタ、ここまで裏切らなかったんだもの。ゴブリンにも、私たちのことをちゃんと黙っていたし」

「へぇ、お優しいこって、ご主人様よ。でも、目を離したら、どうするか分かんねぇぜ? 」


 突然示された信用に、サムは不敵な笑みを浮かべていた。

 やはり、少女たちはお人好しだと、そう思ったからだ。


 そんなサムを、ティアは笑い飛ばす。


「ハッ! その時は、リーンがアンタをバーベキューにするわ! 」


(そりゃ、嫌な死に方だな)


 サムは火だるまになって、のたうち回りながら死んでいった仲間たちの姿を思い出し、額に冷や汗を浮かべた。


 その時、サムに向かって、突然リーンがささやいた

 あまり長文をしゃべらないリーンにしては、かなりの長さの言葉だった。


「貴方の気道を炎であぶる。貴方、すぐには死なない、とても苦しむ」


 サムは、ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

 そんなことをされるくらいなら、ラーミナの剣でスパッと切られた方が何千倍もマシだと思えたし、リーンは平気でそういう残酷なやり方をしそうだと思えたからだ。


「皆さん、こっちです」


 3人と1頭が話している間に先行して王宮の外壁まで近寄り、隠されている秘密の抜け穴の位置を探っていたルナが、どうやら目的のものを見つけた様だった。


「いよいよ、大詰めね」


 ティアはそう呟いて歩きだし、ラーミナとリーンもそれに続く。


(はてさて、うまくいくんかね)


 サムは少しだけ疑いながらも、少女たちの後に続いた。


 ティアたちが王宮の外壁にたどり着くまでの間に、ルナが、魔法の呪文を唱えている。

 すると、外壁の一部が揺らめいて、そこに大きな空洞が現れた。


 魔王の懐へと通じている、抜け穴だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 防具は武具に含まれます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ