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オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第3章「クラテーラ山」

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3-3「ウルチモ城塞」

3-3「ウルチモ城塞」


 人間の住む世界の北端、ウルチモ城塞は、神々の大戦が行われた古代から同じ場所に建っている。


 長い年月の間、そこを管理している人間たちによってさまざまに改修が施され、それが最初に建てられたころの面影はあまり残されてはいないが、伝説によると、ウルチモ城塞は神々が自身の手によって直接建設したとも、人間と同じく光の神ルクスの側に属する眷属として生み出されたエルフやドワーフなどの種族が建設したとも伝えられている。


 古くは、暗黒神テネブラエと、その第一の配下としての魔王、そして魔王に統率された魔物の軍団との戦いの最前線基地として作られたのが、ウルチモ城塞だった。

 その周囲は何度も激しい戦いが行われたために荒廃し、現在でも、まともに植物が育つことは無く、随所に毒の沼や瘴気しょうきに包まれた谷が点在している。


 ウルチモ城塞の立地としては、険しい山々の合間をって北へ、魔王が封印されているクラテーラ山へと続く狭隘きょうあいな地形の出口に、そこから溢れ出てくる魔物をせき止める様な形で存在している。

 いわゆる「隘路あいろ」と呼ばれる場所に築かれた城で、魔王の軍団がどれほど大軍であろうとも地形に制限されて少数でしか押し寄せて来られないのに対し、ウルチモ城塞からは集中攻撃を加えられる様になっている。


 歴史が古すぎるため正確なことは分からないが、伝説によれば、1度も陥落したことが無いのだという。

 その、防御側にとって有利となる立地もあるが、ウルチモ城塞の城壁は高く厚く、その堀は深く広いということに加えて、神々が作ったと伝えられている魔法のアイテムによって守られているからだ。


 「ファンシェの鏡」と呼ばれているその魔法のアイテムは、ウルチモ城塞の中心部に建つ塔の最上階に配置されていて、魔王が封じられたクラテーラ山から流れてくる噴煙によって薄暗くなりがちなウルチモ城塞にあって、常に燦然さんぜんとした輝きを放ち続けている。

 このことから、ウルチモ城塞からの光は多くの旅人たちにとっての目印ともなっており、ウルチモ城塞は「クリダート灯台」とも通称されることがある。


 ファンシェの鏡は、魔物たちの魔法攻撃を跳ね返し、ウルチモ城塞を守護するとされている。

 また、城塞に対するダメージを軽減し、城壁や堀などが破壊されても徐々に修復する力を持つとされている。


 ティアたち一行がウルチモ城塞へとたどり着くと、サムは、そこがものものしい雰囲気に包まれていることに気がついた。


 ウルチモ城塞は元々人間にとって魔物たちとの最前線であり、普段から厳重な警戒が行われている場所ではあったが、サムたちがすれ違った巡回の城兵たちの表所はみな緊張感で張り詰めており、装備も万全で、臨戦態勢が整えられていた。

 大きな戦闘が近づいている。皆、そんな風に考えている様な様子だった。


 ウルチモ城塞を守備しているのは、「バンルアン辺境伯」と呼ばれている人物だった。


 バンルアン辺境伯は、年齢は40代の半ばほど。中肉中背で肌の色は血色が悪そうで白く、黒髪と黒い瞳を持つ男性だった。


 バンルアン辺境伯はティアたちがウルチモ城塞の南側の城門に到着するタイミングに合わせて、出迎えに出てきていた。

 どうやらこれまでの旅路で、聖剣「マラキア」をたずさえた勇者の一行が魔王を倒すためにクラテーラ山を目指しているという噂が広まり、その情報を耳にして待っていたらしい。


 辺境伯の供には、2名の騎士だけがついていた。

 ウルチモ城塞には多数の兵士たちが守備についているはずだったが、この様な簡素な人員での出迎えとなったのは、これがあくまで儀礼的なものであって、ティアたちを警戒してのものでは無いと示すためだったのだろう。


 だが、バンルアン辺境伯は、近づいてくるティアたち一行を見て、「こんな少数の護衛ではまずかったかな」という顔をしていた。

 何故なら、聖剣「マラキア」を携えている勇者であるはずの一行の中に、人間とは宿敵の関係にある魔物が1頭、紛れ込んでいたからだ。


 バンルアン辺境伯がわざわざティアたちを出迎えたということは、その到来を知っていたからに違いない。

 そして、サムはよく目立っていたから、バンルアン辺境伯も、ティアたちがオークを奴隷として使っているという話を耳にしていたはずだった。


 だが、聞いただけでは、耳を疑ってしまうような話だ。

 バンルアン辺境伯は噂を信じることができず、サムのことを考慮していなかったのに違いなかった。


(やれやれ、また、厄介ごとになるんじゃねェだろうな? )


 サムはそんな不安を覚え、それから、奴隷である自分には関係の無いことだと、気楽に考えることにした。


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