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オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第1章「オーク35歳、奴隷になる」

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1-15「サム、奴隷になる」

1-15「サム、奴隷になる」


「ちょ、ちょっと、待ってくれよ」


 ティアの決定に真っ先に異議をとなえたのは、サムだった。


「オレを奴隷にするっていうのは別に構わんが、ボスは殺されちまうのか? 」

「そんなの当り前じゃない! 」


 ティアは、サムを睨みつける。


「アンタたち魔物は人間の敵! アンタ自身はどうか知らないけど、少なくともそっちのボスは山賊団けしかけて、村を襲わせてるんだから有罪よ、有罪! 」

「し、しかしだな、オレはこの人に恩義があって……」

「そ・ん・な・の! どーでもいいわよ! 奴隷にするだけで生かしてやるって言ってるんだから、それでいいでしょうが!? 」

「さむ。イインダ」


 なおもティアに反論しようとするサムを、ボスオークは穏やかな声で止める。


「俺ハ人間ヲタクサン殺シテ来タシ、ソウナル様ニ群レヲ導イテ来タ。ココデ人間ニ殺サレルノハ仕方ノナイコトダ。ソレニ、俺ハモウ1回ハ、人間カラちゃんすヲ貰ッテイル。コレハ、約束ヲ破ッタコトニ対スル罰ダ」


 サムはまだ何か言おうとして口を開きかけたが、すぐに閉じるしかなかった。

 ボスオークの口調からその覚悟の強さを読み取って、説得することは絶対に不可能だと理解できたからだ。


「フン、いい心がけじゃないの! ……それで!? みんな、他に意見は? 何かあるなら、今の内に言いなさい! 」


 静かになったタイミングを見計らって、ティアはその場にいる全員に、自身が下した決断の是非を問いかけた。


 奴隷にするとは言え、サムを生かすことにラーミナは不満がある様子だったが、あえて意見しようとまでは思わない様子だ。

 他の少女たちも、積極的に異議をとなえるつもりはない様子だった。


「ラーミナ、楽にしてやりなさい! 」


 異論が出て来ないことを確認すると、ティアは女剣士に向かってそう言った。

 自分で手を下さないのは、まだ、自分の足に村の少女がピッタリと張りついているせいだ。


「分かった。……斬るが、いいな? 」

「覚悟ハデキテイル。……ソレニ、モウ、腕ノ感覚ダケジャナク、体中ノ感覚ガ無クナリカケテイル。俺様ハモウジキ死ヌ。斬ルナラ、早クヤレ」


 ラーミナの確認にボスオークはそう言って答えると、最後の力を振り絞って、ラーミナが首を斬り落としやすい様な姿勢を取った。


 ラーミナはそれ以上何もしゃべらず、無言のまま刀を構え直すと、そのままボスオークの首筋に向かって振り下ろす。

 ザシュ、という音と同時に、ボスオークの首は皮一枚を残して胴体から切断され、その首は自身の重量に引っ張られ、ボトリ、とボスオークの胡坐あぐらをかいたままのひざの上に落ちた。


「ボス……」


 サムは、悲しそうに視線を伏せると、しかばねとなったボスオークに向かって両手を地面について一礼した。


「さて! アンタ、さっそく働いてもらうわよ」


 だが、サムには感傷にひたっている様な時間は無かった。

 胸の前で両手を組んだティアが、奴隷となったサムに最初の命令を下したからだ。


「まずは、穴を掘りなさい! ここらに転がっているオークたちの死体が全部入るくらい大きな穴をね! そしたら、死体を魔法で燃やすから、その後でまた埋め戻すの。変な疫病でも流行ったらコトだもの。いいわね!? 逆らったら、その時点で殺すから」

「……。ああ、やるとも」


 サムは嘆息すると、それ以上は不満そうな素振りは見せず、立ち上がって、言われた通りの作業をするべく歩き始めた。


 こうして、35歳のオーク、サムの奴隷生活が始まった。


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