表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第6章「サクリス帝国」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/204

6-16「救出」

6-16「救出」


「さて、では、我輩もそろそろ失礼するとしよう」


 イプルゴスたちの足音が遠ざかって行った後、マールムはおりの中の3人の少女たちを見下ろしながら、その長い舌で舌なめずりをした。


「これから、お嬢ちゃんたちの故郷を焼き払い、人間どもを根絶やしにしなければならないのだからな! 」


 そして、イヒヒヒッ、と気色悪い笑い声をらす。


「ああ、聞こえるだろう! 恐怖と絶望に打ち震えながらも立ち向かってくる人間たちが、我輩の刃に切り裂かれる断末魔が! 逃げ惑う人間どもを焼く炎が! ああ、たまらん! たまらんなぁ! 」

「このっ! 絶対、アンタを倒してやるんだから! 」


 マールムに、ティアは立ち上がり、おりの鉄格子の隙間に顔を突っ込むようにしながら叫んだ。

 マールムは、そんなティアのあごに自身の指をはわせる。


「くくく、その意気だ、勇者志望のお嬢ちゃん。あがけ、あがくのだ! 決して、我輩を退屈させてくれるなよ? キヒヒヒッ! 」


 そう言い残して、屈辱で涙を流すティアを愉快そうに見ながら、マールムは波紋の中に姿を消していった。


 マールムの姿が消えると、ティアは元の場所まで後ずさりし、すとん、とその場に腰を下ろす。

 それから、「ああ、もう! 」と叫んで、じたばたと暴れ出した。


「ティア、落ち着け」


 そんなティアの様子を見て、ラーミナは顔をしかめる。

 ティアは暴れるのをやめると、不満そうな顔でラーミナの方を見た。


「だって、悔しいじゃない! ……そりゃ、私が勇者をかたったっていうのは事実だけどさ。それを、魔物と手を組んだイプルゴスが、サクリス帝国の皇帝になるために利用されるだなんて! 」

「それは、そうだが。しかし、まずはここを出ないことには、どうにもならないし」

「……。そうなんだよねぇ」


 ラーミナの言葉で、ティアは自分の手にはめられた手枷を見てため息を吐くと、がっくりとうなだれる。


「リーンさんのことも、心配です」


 同じ様にうなだれていたルナは、今にも泣き出しそうな声だった。


「昔の話として聞いていはいましたが、フォリーという人は、かなり危険な、倫理的にも許されない様な実験を行っていた魔術師です。それが理由で魔法学院を追放され、魔法学院の運営方針も大きく改革されたということですが……。そのフォリーが、魔物と手を組んで何をしようとしているのか、考えただけでも、怖いです」

「ホント、その通りよ。……ねぇ、ルナ、この手枷、何とかならない? 」

「いろいろ考えてみたんですが……。やっぱり、私自身の魔法も封じられている状態では、どうにも」


 少女たちは必死に考え続けたが、状況を打開する手段は何も思い浮かんでこない。

 やがて、ティアは仰向けに寝転がって、忌々しそうに自身の手枷てかせを見上げた。


「この手枷さえどうにかできれば、こんなおり、さっさと出て、リーンを助けに行けるのに! 」

「おい、うるさいぞ! 」


 その時、少女たちを見張るために残っていた兵士が、自身の手甲でガン、とおりの鉄格子を叩いた。


 だが、ティアは黙らない。


「何よ! アンタも、魔物とイプルゴスが手を組んでるの見たでしょう!? あんなのに従ってるなんて、どうかしてるわよ! 」

「うるさい! 黙れと言っているんだ! 」

「へっへ~ん、悔しかったら、アンタがおりの中に入ってきて、私の口を直接ふさいだらどう? 」


 兵士がおりに入ってくれば、これ幸いと3人がかりで襲って鍵を奪取してやろうと思い、ティアはにやりと不敵に笑って挑発してみたが、しかし、兵士は応じなかった。

 代わりに、両手を体の前で組んで、少女たちを見下ろす。


「ふん! お前らはどうせ、もうじき、フォリーに言われた通りに動き、言われたことしかしゃべらない人形になっちまうんだ! せいぜい、ジタバタするんだな! 」


 物陰から兵士に向けられた魔法の杖の先端から魔力が放たれ、兵士を一瞬で眠らせてしまったのは、その時だった。


 意識を失って兵士がその場に崩れ落ちると、物陰から、2つの人影が出てくる。

 1人は、暗闇で目立たない様に黒いローブを身に着け、フードを目深にかぶり、兵士に魔法をかけて眠らせたバーン。

 もう1人は、もし兵士が眠らなかったらそのまま突撃しようと身構えていた1頭のオーク、サムだった。


 その姿を見て、3人の少女たちはお互いの顔を見合わせ、嬉しそうに笑顔になる。


 おりに取り付けられていた鍵は頑丈なものだったが、しかし、バーンの魔法で、かちゃり、と音を立てながら簡単に解除されてしまった。


「すみません、遅くなりました」


 バーンはそう謝りながらおりの中へと入り込み、魔法を使って少女たちの手枷を外していく。


「それで、リーンは!? 妹は、どこにっ!? 」

「フォリーに連れていかれたわ。……従わなければ、私たちを傷つけるってフォリーに脅されてね」


 その場に姿の無いリーンのことを心配して血相を変えながら訪ねたバーンにティアがそう答えると、バーンは不安そうな表情を見せる。

 リーンのことが、心配で仕方がないのだろう。


そんなバーンに向かって、サムは、兵士から奪い取った剣を一番剣の腕が立つラーミナに渡しながら、にやりと笑みを浮かべた。


「なら、さっさと助けに行こうぜ。そしたら、全員で脱出だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 人を騙して議会で皇帝になるか。100年前のアメリカやスターウォーズみたいだな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ