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神話世界に転生した少年が神に対しても無双して平和を享受する  作者: 斎藤晃輔
世界大戦と神々の怒り
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神殺しの少年

巨大樹(ユグドラシル)を中心に極寒国(ニヴルヘイム)神々の国(アースガルズ)など九つの国が取り囲むのは神々の世界


始祖の巨人ユミルの死体によって形作られたこの世界は、最終戦争ラグナロクを目指して一直線に進んでいくはずだった


あの男が現れるまでは...


****


「第八隊、前進!」


その掛け声とともに俺たちは森の中を駆けだした。ここは豊穣を司るヴァン神族の森である。


彼らの住む愛の国(ヴァナヘイム)の正確な所在は誰も知らない。この世界で絶対的な力をもつアース親族ですら把握できていないのだから仕方のないことだ。


戦闘の最中にそんなことを考えてしまうのは、本心ではこの戦争を無意味なものだと感じているからだろうか


「魔結界を張って周囲の敵の探知に集中しろ、この森ではなにが起きても不思議じゃない」


「はい!」


俺が指示をだすと相棒のヒルドが即座に探知結界を周囲に張った。


森のあちこちから火の手が上がっているのがわかる。さらに時折耳をつんざくような雷鳴が身を震わせる。


「ヒルド、トールさんはどんな様子だ?」


「はい、報告によると雷爆発(エルブス)で森の東半分を焼き切ったとのことですが、木の成長が非常に早く破壊が間に合わないとのことです。」


雷神トールでも手に負えないとはこの森はとんでもないなとため息をついた。そのときヒルドが大きな声をだした。


「前方に魔反応を探知!この波形は...アッ...白妖精の国(アールヴヘイム)の支配者フレイです!」



「いきなり繁栄の神の登場とは...運が悪いとしかいいようがないな...」


前方で大きく視界が開けている、森の中に小さな広場があるようだ。俺はためらうことなく進もうとしたが、そのときヒルドによって首根っこをつかまれた。


「死にたいんですか!?相手は上級の神ですよ、報告をして今すぐ撤退するべきです!」


焦っていながらも伝達魔法で話しているのは有能な兵士の証かもしれない。しかし俺はその手を振りほどいた。


「お前はここに隠れていろ、俺だけで行く。神々の国(アースガルズ)の本部への報告を頼む」


唖然としているヒルドを置いて俺は広場にゆっくりと足を踏み入れた。


「誰だ?」


広場の中心には奇妙なことに椅子が一つ置いてあり、そこに絶世の美男子が座っている。膝に本が置いてあるところをみると今まで読書をしていたのだろう。大きなマントをまとい静かにこちらを見つめている。しかしその瞳の鋭さは一瞬で消えた。


「なんだ人間か、この森がアース神族とヴァン神族の戦場になっていることを知らないのか?関係のないものは早く去りなさい」


諭すように静かに話す様子はまさに完璧な美男子だ。


「俺はアース神族に雇われた傭兵、戦闘補佐部隊第八隊所属のシグルス・ジークフリードだ、ヴァン神族の戦闘員であるお前をみのがすことはできない。こちらから行かせてもらうぞ」


俺は剣を抜いてフレイに向かってゆっくりと歩きだした。フレイはあきれたように大きくため息をつく。


「戦争は名誉と命の価値を逆転させる。愚かなことだ...」


そういうと体から魔力を放出させて自身の周りに魔法障壁を張った。非常に基本的な型だ。


俺は剣をふることもなく手をかざして障壁を完全に破壊した。


フレイはさきほどよりも大きくため息をついて剣を抜いた。


「しかたがない、君の名誉を尊重したいと思う」


俺たちの間合いは完全にお互いの攻撃範囲より狭くなっていた。フレイは先ほどから変わらず落ち着いた顔で体から魔力を放出させた。周りの草が大きく飛び散り、木がものすごい音を立てて揺れている。魔法障壁で俺を吹き飛ばそうとしたのだろう。


しかし俺は微動だにすることなく直立している。


「繁栄の神の力がこんなものだとは思わなかったな、神が聞いてあきれる」


フレイの瞳が鋭くなった。


「いいだろう、君に宝剣自律剣(ユング)の力を見せてやろう」


そういうとフレイはゆっくりと剣を抜いた。全体が奇妙な光に包まれている、魔力で鍛えられた剣の証だ。


フレイが剣を鋭く俺に振った。俺は自分の剣でそれを受け止める。大きな旋風が巻き起こり地面が小さく揺れた。


俺の剣は折れることもなく平然と自律剣(ユング)の一振りを受け止めた。


フレイが驚いて目を少し見開いた。俺は剣を払ってからフレイに強烈な一振りをいれる。俺の剣を受け止めたフレイの立っている地面が大きくへこんだ。


「君は一体....?」


フレイが小さな声で何かをつぶやいたが、そんなものは気にせずお互いに何度も強烈な剣を振る。最初は明らかに手を抜いていたフレイの手にもかなり力が入っている。剣がぶつかるたびに大きく空気が振動し、地形が変わる。あたりの木が大きく揺らされ、数本は根元から折れてしまった。


なんども剣を交わすたびにフレイの顔に焦りと疲労が蓄積されていく。しかし俺は最初から何一つ変わらぬ表情で一手一手確実に突きをいれる。


何度目だろうか。少しだけ見せたフレイの隙を逃さず剣で捉えた。フレイの魔剣は大きく横方向に飛んでいった。


「君はもしや神殺しの少年....?」


「さあ、なんのことだか」


俺は躊躇わずに剣先をフレイの喉元にあて、大きく剣を振り上げて..


そのときだった。ヒルドから伝達魔法が送られてきた。


「本部から撤退命令がでました!どうやら今回の侵攻作戦は断念するようです!」


俺は剣を下ろす手を止めた。


「どうやらここまでみたいだ。命令通りに退散させてもらう」


俺は何の警戒もなしにくるりと背を向けて広場の外側に歩きだした。フレイは黙って俺を見つめている。ちょうど俺が広場から出ようという時だった。後ろから声が飛んできた。


「君とはどこかでまた会えるといいな!」


俺はそれを無視し、そのまま振り返ることなく広場をでてヒルドと合流して本部への道を急いだ。


「繁栄の神フレイと対等に戦うなんてあなたは何者なんですか?兵士訓練場での成績が抜群だったとは聞きましたが、そんな次元ではないでしょう....!?」


道中でなんどもヒルドから先ほどの戦闘を問いただされる。すこし力を出しすぎたかもしれない。


「話すと長くなるんだ」





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