第8話 ライバルは貴族のお嬢様!?
レシア王子とのお祭りデートの後、レシア王子
との仲は最初に比べると親密になれた気が
するんだけど…ウィルさんの目がより厳しい
ものになってるような。最近は、
『フォーチュンキャット』へ寄る時間も
多くなって、なんと近頃は猫耳を
短時間とはいえ出さないように
集中できるようになったのです!
そんなちょっとした幸せを
じっくりと噛みしめていると…
「ニャー、ニャー!」
黒と灰色の縞柄の猫、ミミが私に
何か言っている。私は集中して猫耳を
生やして何を言ってるかを確認する。
『あのね変なお客さんが、
ミーシャを呼んでるみたい。』
「変なお客さん?」
『なんかフサフサしてる、すごい
キラキラした女の子!』
フサフサでキラキラ?
いったいどんな人なんだろう?
自分の部屋から1階に降りてみると…
「あなたがミーシャ・ミルアルド?
ふうん、平民だけあって平凡な容姿ね。
一体どこに魅力を感じるのかしら?」
光に当たるとキラキラ光る金色の髪を
サイドに縦ロール2本でまとめあげた、
美少女が入口前でこちらをジト目で見ていた。
服装も高級なドレス姿でどうみても貴族の娘だ。
「確かに私がミーシャですけど…どちら様ですか?」
私が1階に降りてきたことを確認すると、
その美少女は私の目の前にツカツカと
歩いてきて私を見上げてくる。
私は平均的な身長なのだけど、彼女は
私より10センチほど低い身長のため、
見上げる格好になったみたい。
「わたくしは、シャルロッテ・ルシアティール。
レシア様の将来の妻となるものですわ。」
え?レシア王子の妻?
それって許嫁とかそういうこと?
「あの…シャルロッテさんは
レシア王子の許嫁なのですか?」
私が驚いた顔でそう聞くとニヤリと笑って
手を口の目に持ってきて楽しそうに笑い始める。
「オーホホホ!その通りですわ!わたくしが
レシア様と結婚することは生まれる前から
決まっていましたの!」
生まれる前?ああ、そうだよね。
レシア王子は46歳。目の前のシャルロッテさんは
見た感じ13歳くらいだしルシアティールの家から
政略結婚として昔からそういう話が
あったんじゃないかな?
「それってレシア王子も納得してるんですか?」
「あ、当り前ですわ!」
今あからさまに目をそらしたよね?もしかして
レシア王子には直接話がいってないんじゃ?
「そうなんですね。レシア王子から
聞いたことなかったんでこんな可愛らしい方が
許嫁だなんて知りませんでした。
でもまだ成人されてないようにみられますが?」
この国では15歳になって初めて成人と認められる。
15歳になることで初めて結婚などが可能になる。
でも彼女はまだ15歳には見えなかったんだけど…
「し、失礼ですわね!こう見えてわたくし
16歳ですわ!わたくしの方は
いつでも結婚できますの!」
「え、ではどうして結婚なさらないのですか?」
私の誰が考えても突っ込む部分を指摘すると、
「レ、レシア王子は忙しい方ですの!
簡単に結婚とは行きませんわ!わたくしも
それを理解して待っているのです!」
本当に許嫁なんだろうか?
「とにかく!あなた!レシア様を
誘惑するのはおやめなさい!最近特にこの店に
レシア様を連れ込んでると聞いてますわ!」
「いえ、私は何もしておりません。
レシア王子がこの店をお気に入りになって、
それに私が接客対応してるだけです。」
「黙りなさい!この泥棒猫!」
ど、泥棒猫…猫族の亜人だから猫は合ってるけど
私は泥棒なんてした覚えありません!
「とにかく、あなたがもし今後もわたくしの
邪魔をする気ならあなたをライバルとして
蹴落としてやりますわ!」
なんだろう…貴族のいいとこの娘さん
なんだろうけどところどころ
発する言葉が口汚いような…?
「今日のところは帰りますわ。」
そう言って外に待たせてあった馬車に
乗り込み帰っていく。馬車で来るくらいだから
それなりに力のある貴族の娘なんだろうとは
想像できる…今度レシア王子がきたら聞いてみよう。
次の日さっそくレシア王子が来店したので
昨日のことを聞いてみることにした。
「レシア王子、シャルロッテさんって知ってます?」
「え、ミーシャはシャルのこと知ってるのかい?」
あれ?レシア王子が知ってるってことは
本当に許嫁…?なんだろう、
なんだか胸の奥がチクッとする。
「昨日この店にきて、レシア王子の
許嫁だと言ってました。」
その話をしたらレシア王子は
おかしそうに笑い始める。
「アハハハ、シャルはまだそんなこと
言ってるんだね。ルシアティール伯爵は
王族とのつながりを求めていてね。
王族の全員にシャルを紹介しているんだ。
僕のところにも来たんだけど断わってるよ。」
そういうことなんだ。よかった…
「それに、僕は政略結婚というものが嫌いでね。
お互いに好きな者同士じゃないと
生まれてくる子が不幸に
なるかもしれないだろ?」
レシア王子はなぜか少し寂しそうな目で
私に向けて笑いかけてくる。
「レシア王子は…そんな人がいるんですか?」
思わず聞いてしまったけど、ここで実は
貴族の誰が好きとか言われたら
正直ショックが大きいかも。
「どうなんだろうね。なかなか難しい
感じだけどそういう関係になれたら
いいと思ってるけどね。」
そう言って私の手を握ってくる。
油断していた私はそのまま手を握られる。
その瞬間、胸の奥を何かで締め付けられる
ような苦しみが私の中で暴れまわる。
私はその場で意識を失ってしまった。
私が目を覚ましたのは次の日の朝だった。
半日位意識がなかったみたい。
あの全身を駆け巡る悪寒が呪いの反動なの?
ただ手を握られただけであの苦しさだなんて…
私は分かっていた事実を
改めて体感してなきそうになる。
今後レシア王子との仲を進展させるには、自分の
心のコントロールが絶対に必要になるよね…
そんなことを考えながら1階に降りると…
「ミーシャ・ミルアルド!あなたレシア様に
手を握られて気絶したそうね!
恐れ多い相手とはいえそれは失礼に
あたるわね!オーホホホホ!」
シャルロッテさんが勝ち誇った顔で
玄関前に立っていた。
「いらっしゃいませ。」
特に反論する気もないので接客モードで対応する。
「ちょっと、何か言いなさいよ!くやしい!とか
私あきらめますとか!あるでしょ?」
「猫ともふもふ紅茶コースがおすすめです。」
当店一押しの猫のおなかをもふもふしながら
おいしい紅茶を飲めるほんわかすること
間違いなしのコースをおすすめする。
「ミーシャ・ミルアルド!あなたは
まだレシア様を諦めないの!?
それなら、こちらにも考えがありますわ!」
考え?何があるんだろう?ついつい
接客モードだったのを忘れて、
シャルロッテさんの言葉を待ってみる。
「わたくしとあなた、どちらがレシア様に
ふさわしいか正々堂々勝負ですわ!」
シャルロッテさんの言葉は予想外すぎて私は
思考回路が、止まってしまう。え…勝負?なんの?