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第10話 友情と愛情そして呪い

シャルロッテさんが勝負を挑んできてから

2週間が経ったんだけど…


「まったく、こんなおいしい紅茶を出すなら

高級菓子の一つでも用意するべきですわ。」


なんだか、あれから何日かおきに

シャルロッテさんはサイガンさんと一緒に

うちの店へ遊びに来るようになったんだけど、

そのたびに貴族のなんたるかを

勉強するべきですわ!といわれて

いろんなマナーをなぜか教えてもらう

ことになってしまった…


「シャルロッテさん、ここは庶民の

憩いの場なんです。高級菓子なんて

出るわけないじゃないですか。」


なんだろう、最近この店庶民より貴族、

王族が来店する率がすごい高いが

するんですけど…なんて言ってる間に

レシア王子とウィルさんが店にやってきた。

これでますますお客のレベルが…


「やあ、ミーシャ。今日のおすすめはなんだい?

あれ?シャルじゃないか。君も来てたんだね。」


「レシアにいちゃま!…こほん。レシア様

おひさしぶりでございますわ。」


いま、シャルロッテさん、目を輝かせながら

レシアにいちゃまって言わなかった?

なんかすっごいかわいいんだけど!?


「シャルもこの店を気に入ったみたいだね。

この店は癒しを与えてくれる。紅茶は

茶葉の限界をこえた美味さを提供してくれるし

ミーシャの笑顔も癒されるよね。」


ううう、その笑顔がまぶしいですレシア王子。

代わりにシャルロッテさんのジト目が怖い…


「まあ、ミーシャの笑顔はともかく。

居心地がいいのは認めますわ。この空間は

水の魔力で守られていることもプラスですわ。」


「水の魔力ですか?」


私は魔法関係はさっぱりなので家の中に魔力が

流れているなんて気がつかなかった。


「そう、空気の中に水分を含ませることで

さわやかで心地いい空間を演出しているのですわ。」


水の魔力…うちで水といえばおかあさん?

瞳の色は青だし、お母さんも亜人だから魔力を

持ってるだろうし…

私がお母さんの方を見ると、ウインクをしてる。

やっぱりお母さんが魔力を使ってるんだ。

ということはお母さんは魔法を使えるの?

じゃあ私に魔法の勉強を教えてもらえるかも。


「でも、よかったよ。シャルに同い年の友人が出来て

ミーシャこれからも仲良くしてあげてもらえるかい?」


「レシア様!わたくし、庶民の友人など!」


レシア王子の言葉にびっくりしたように

シャルロッテさんは反論しようとするけど


「君は庶民とかそういう身分で

相手を見極めるのかい?」


「う…そうではありませんが…。」


レシア王子の言葉に言葉を詰まらせる。


「シャル、君ほど身分をどうこういう子ではないと

僕は知ってる。まだ君が子供のころ言ってたよね?

今の貴族の友人はお互いに笑顔の裏に相手を

見下したり、嫉妬したりと信じられる相手や

自分が認められる相手はいないと。

そんな君が、ミーシャをライバルと認めたと聞いて

僕は本当に嬉しかったんだ。

シャルに本当の友人が出来るかもしれないってね。」


シャルロッテさんは顔を真っ赤にする。


「ななな、わたくしがミーシャと友人ですって!?

冗談ではありませんわ!」


「でも、シャルが認められる相手なんだろ?

ミーシャの人なりも認めているんだろ。

ここに通っていることが

何よりの証拠じゃないかい?」


「シャルロッテさん…」


「…で…いいですわ。」


「え?」


「シャルでいいですわ!貴方はわたくしの選んだ

ライバルですもの!身分などというもので

差を付ける気はありませんの!」


シャルロッテさん…シャルはそう言って

手を差し出してくる。


「シャル、なんか私たちいい友達になれそう。」


私は嬉しくなって差し出した手を両手で握りしめて

上下にブンブンと振りながらそう答える。


「と、友達!?貴方ライバルと友人になると

いうのかしら!ライバル同士が仲良くだなんて…」


シャルは嬉しそうにしながらも少し困惑した目で

こちらを見つめてくる。


「でも、シャルは平民である私に対しても

貴族として誇り高くはあるけど普通に接して

くれてるよね。まあ、最初は見下してたけどね。」


初めて会った日の事を言うとシャルは

少し困った顔をしてこちらをジト目で見てくる。


「それは!貴方がどういう人かわからなくて

レシア様を誘惑するような悪い女だと思ってたから…

いえ、そこは謝りますわ。偏見の目でしか

見れないわたくしの方が悪いのですから。」


そう言ってシャルは申し訳なさそうにほほ笑む。


ああ、やっぱりシャルって貴族らしくない。

普通はここで貴族の娘が謝罪なんてしないよね。

私はシャルの事が大好きになってしまった。

同時にライバルという事が心苦しくなる。


「ううん、気にしてない。私はシャルの事

好きになっちゃった。よかったらライバルであり

友達になりたいな…って思ってる。」


私の発言にシャルは目を輝かせたあと、はっとなり

咳払いをしてうれしそうな顔をごまかそうとする。


「し、仕方ありませんわね。貴方がどうしてもと

おっしゃるのなら、友人になってあげても

よろしくてよ。ただ、公式の場では口調には

気を付ける事ね。わたくしが許しても周りは

どう思うかは、貴方もわかっているでしょう?」


あ、そういえばシャルと呼んでいいと言われてから

つい普通な感じで話しかけてるよね。


「すいません。つい気が緩んで。普段からも

しっかり意識いたします。」


「べ、別にこの店の中では普通の口調でいいのよ!

その方が喋りやすいのでしょう?ならわたくしも

まったく気にしませんわ。」


「…うん、わかった!じゃあお店では遠慮なく

普通にしゃべらせてもらうね!」


貴族の娘と平民の娘の奇妙な友情の始まりでした。

その後シャルは家に戻ることになり、

レシア王子とウィルさんの2人が残りました。


「ほら、言ったろう?ミーシャなら大丈夫だって。」


レシア王子はウィルさんとなにか密談中なのかな?

でも私の名前が聞こえたような…


「シャルロッテ様の人物を見抜く力は確かですが、

ミーシャ様の雰囲気にのまれた可能性も…」


「私がどうかしたんですか?」


2人の会話に私も割り込んでいく。

レシア王子は嬉しそうに話を続けてくれる。


「シャルの友達になってくれてありがとう。

素直じゃない態度だけど本当に嬉しいはずだよ。

シャルはね、相手の瞳を見るだけで

悪意を持っているかどうかを見分ける力があるんだ。

その力でミーシャを見て、君の人なりを感じて

色々お節介をかけてきたんだろう。」


確かに最初に会った日以外は私を見下す態度も

敵意も感じなかった。純粋にレシア王子に

ふさわしいかそれだけを比べる感じだったし、

最近は貴族の何たるかを教えてくれたおかげで

王族に嫁ぐということの大変さを理解させて

もらえたというか、上品って私には無理でしょ~。


「シャルは、ずっと同性の友達がいなかったんだ。

いや、正確に言うと心を許せる相手がいなかったが

正しいかな。彼女は貴族の中でも王族に嫁ぐ順位が

高い家系だったから、周りから特別な目で見られ

同じ貴族の娘達からは悪意のある瞳しかいない。

だから、友達も作らずそして自分の立場を最大限に

利用して僕たちの庇護を受けることになった。」


「僕たちという事は、レシア王子とウィルさんの

という事ですか?」


私の疑問にゆっくりと首を横に振る。


「僕と上の兄、トリア兄さんの2人だよ。

上の兄と言っても双子だからほとんど

変わらないんだけどね。」


そういえば、王子は4人いるって聞いたことある。

中央の王都に今の国王、そして東西南北の領地を

それぞれの王子が治めているって。


第1王子はルガルド王子

北の地区を治める赤髪に真っ赤な瞳の持ち主と

リュミエル全書に書いてあった。


第2王子はブルーク王子

東の地区を納めているらしいんだけど

あまり公の場に出てこないらしい。

とても美しい亜麻色の髪の持ち主という噂。


第3王子がさっき出てきたトリア王子

西の地区を治めている、レシア王子の双子の兄。

銀色の髪をツンツンに立てて、レシア王子と

逆の緑・青のオッドアイの王子。

トリア王子もレシア王子に負けず劣らず

善政をひく王子という噂だけど、少々武力解決の

部分があるという事がリュミエル全書に書いてあった。


そして第4王子がレシア王子で

南の地区、私が住んでる地区を治めている方。

金髪の長い髪を後ろで縛り、青と緑のオッドアイが

とても綺麗な私の理想の王子様…


第1王子と第2王子に関しては

詳しいことは書いておらずそもそも、

レシア王子と出会わなければ情報量としては

同じくらいなものじゃないかなと感じる。

身近にいて、それを実際に見ているから

色々なことが分かってきたんだと思う。


「お2人の王子が守ってくれたなら

シャルも安心だったと思うんですけど、

そうじゃなかったってことですか?」


レシア王子が少し考えたあと、ゆっくりと話し始める。


「僕らが守ってしまったことで、彼女の可能性を

せまく細い物にしてしまったんだ…。

僕とトリア兄さんがシャルを守るという事は、

どちらかの妻に迎え入れるそういう話の流れに

なってしまってね。」


シャルが言っていたことはこの事だったのね。

少し胸がズキッとしながらも話の続きを私は待った。


「まあ、元々ルシアティールの家柄は

王族へのつながりもあるから、その娘と言えば

だれか王子の妻候補というのは

シャルが生まれる前から決まっていたことだからね。」


「その候補がレシア王子…なんですか?」


私は、シャルが言っていた許嫁の

真実を聞いてしまった。

知らなくていいことなのに、

聞いてから少し後悔する。


「まあ、僕か、兄さんとなるんだけど…

僕はシャルの事を実の妹のように可愛がっていてね。

正直、一人の女性として見ることが今は出来ない。

兄さんも同じような気持ちだと思う。

それに…僕はミーシャ。君を妻に迎えたいと

考えているんだ。」


わ、私を妻に迎える…。すごくすごくうれしい事なのに

私は何も言えずに固まってしまう。


「レシア様!一時の感情で国の一大事を決めては

なりませぬ!それに彼女は平民です!しかも

ただの平民ではなく、没落貴族の娘です!

お父上が賛成するわけがありません!」


ウィルさんが言うように、私はただの平民ではない。

理由はどうあれ爵位をなくした没落貴族で

しかも2人は知らない事だけど私は亜人で

レシア王子にかけられている妖精王の加護が

私にとっての呪いのようなもの…


「なぜ、僕とトリア兄さんが妻が居ないわかるかい?

僕たちは自分が愛し、相手も僕を愛してくれる人しか

妻としたくない。そして妻は1人でいいんだ。

ルガルド兄さんのようなたくさんの側室を持つ

やり方は、僕もトリア兄さんもしたくない。

だから、今僕はミーシャだけを妻として

ずっと愛していきたいんだ。」



レシア王子は私の目に手を差し出す。

この手を取れば私はこの人の妻となれる…。


私は王子のプロポーズを聞き涙が止まらなくなった。

もちろん嬉しいし、レシア王子に愛されるなんて

最高の幸せだと思う。今ある問題を考えると

そのプロポーズに答えることはできなかった。


「すごく、すごく嬉しいです。

私みたいな女の子でもレシア王子の愛を頂ける。

もったいなすぎて…でも、今はまだ無理なんです。

ウィルさんの言う通り私が妻になるという事は

色々な障害が多すぎて、レシア王子に

負担をかけてしまうんです…。」


そこはレシア王子もわかっているようで

差し出した手をゆっくりと下げる。


「もちろん、わかっている。でも確かに

今すぐとは言わないよ。ミーシャ自身の気持ち

そして、ミーナとリューイの気持ちも大事だから。

これだけは言わせてほしい。

僕は好きな人と苦労は分かち合うものだと

思うんだ。ミーシャが何か僕に言えない事、

ウィルが感じている事も君の本心を曇らせる原因

じゃないかと僕は思っている。」


今すぐレシア王子に

私亜人なんです。亜人の私は王子と恋しちゃ

絶対ダメなんです。それでも愛してくれますか?


そういいたい気持ちをぐっとこらえる。

いくら王子でも種族格差をどうにか出来るわけではない

何より、亜人と知られた時に失望の目で見られることに

今の私は耐えられるとは思わなかった。


うつむいて泣いている私をレシア王子は

包み込むように抱きしめてくれる。


レシア王子、やさしい人です。

レシア王子、私大好きです。

レシア王子、このままでいたいです。


でも、その気持ちをあざ笑うかのように

呪いのダメージが体内で暴れまわっている。


どうして…どうして亜人と王族は愛し合っては

行けないんですか…妖精王はなんで亜人を

そんなに忌み嫌うんですか…


薄れゆく意識の中で、心配そうなレシア王子の顔

お母さんの泣きそうな顔、お父さんの慌てた顔

ウィルさんの全てを見透かしたような目

走馬灯のように周りの景色がグルグルと周り

その後、私は意識を失った…。

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