第1話 運命の出会い
聖なる光の国リュミエル王国。
魔物が支配していた帝国を滅ぼし
人間が統治する国を作り上げた。
大陸の3分の2を統治し長きにわたる
平穏を守り続けていた。
その平穏も王と4人の王子による
領土分断によりわずかではあるが
ひび割れようとしていたのであった。
腐敗したこの国はこの先どうなるか
著者である私は第4王子が
国を統治してくれることを
心より願うばかりである。
「この本、王族に見られたら
絶対没収されちゃうよね、」
『リュミエル全書』と書かれた
本を閉じて机の中にしまう。
「ミーシャ、そろそろ寝ないと
明日起きれなくなるわよ~?」
1階からお母さんの声が聞こえてくる。
私の名前はミーシャ・ミルアルド
リュミエル南区に暮らす平民の娘。
来週16歳になって、両親が経営する
カフェテリアで正式に雇用される予定なの。
チャームポイントはエメラルドアイと
呼ばれる緑の瞳。この世界はその瞳の色で
自分の魔法属性が決められる。
私の瞳は緑の風属性。
他は赤系が火属性、青系が水属性、
茶、黒系が土属性と大まかに分かれている。
私のエメラルドアイは風に祝福されし者
と呼ばれる風の魔力が高い人が持つものらしい。
ただ、魔法が使えるかどうかは
また別問題というのが…ね。
そして私の最大の特徴にして
私が嫌いな特徴が…
金の髪の中に茶色の髪が混ざり
まるで虎のような髪色。
子供のころからタイガーちゃんと
馬鹿にされてた。
なるべく目立たないように
今は髪を短くすることで
髪の色が目立たないようにしていた。
寝る前に机にある手鏡で自分の顔を見る
エメラルドアイは綺麗なのに…
やっぱり髪の色は嫌い…。
お母さんのような銀の髪なら
よかったのに…。
手鏡を机に戻し、私はベッドに
倒れこみ、そのまま意識を落とす。
その夜私は夢をみた。
綺麗な湖の前で1人の貴族らしき
男性とデートしている夢だった。
この世界では貴重とされる
青と緑のオッドアイに
美しい金の髪を風になびかせて
微笑むその人に私は夢中だった。
朝日が私の顔を照らし、
起きる時間を知らせてくれる。
いつの間にか朝になったみたい。
「ふあぁぁ…」
あくびをしながら窓を開ける。
そこに青空といつ見てもきれいなお城が
私の目に飛び込んでくる。
「やっぱり綺麗だよね、お城って。」
ここリュミエル南区は第4王子の
レシア・ロウ・リュミエルが統治している。
4人の王子の中で一番国民思いなのが有名だ。
まあ、平民の私は見たこともないんだけどね。
「夢で見たあの人…すごい綺麗だった。
でも、あんな人会ったこともないのに…」
そういえばレシア王子も綺麗な金色の髪を
伸ばしてるって聞いたことある。
昨日リュミエル全書なんて読んだから
勝手な想像で妄想しちゃったのかな?
「ミーシャ?起きてるの?」
1階からお母さんにまた呼ばれる。
「は~い、今行きま~す!」
1階に下りるとたくさんの猫に
飛びつかれる。
「みんな、おはよう!
ちょ、ご飯食べるからよけて~」
なぜこんなに猫が家にいるかというと…
家の両親が経営するカフェが
「猫カフェ」というものなのだ。
お父さんのアイデアでお母さんが
猫の世話などをしている。
最初はうまくいくか心配だったけど
猫の可愛さにリピーターが続出
猫たちもお母さんの言うことを
とてもよく聞くのでカフェとしても
しっかり経営できている。
「ほら、食べたらカフェの制服あわせ
して、お隣のアルくんとアンちゃんに
新しい制服見せるんでしょ?」
お母さんが微笑みながら焼きたてのパンを
テーブルに準備してくれる。
私のお母さんミーナ・ミルアルドは
ロングの銀髪に青い瞳で今年40歳に
なるはずなんだけど…見た目は
私の少し上じゃないかというくらい
若作り…ううん、実際若い。
「うむ、今回の制服は基本といえる
メイド服調のデザインだからな。
アルくんあたりメロメロになるかもな。」
そう言いながら食後の紅茶を
楽しんでいるのが私のお父さん
リューイ・ミルアルドだ。
黒髪、黒い瞳で45歳だけど
見た目よりも中身が子供だったりする。
元貴族らしいが物心ついた時には
この暮らしだったので本当かは不明。
お父さんは時々意味が分からない
ことを言ったりするので元貴族は
私をからかうウソだと思っている、
「メイド服…?なにそれ」
また出た。お父さんの不思議ワード。
「うむ。給仕をする際の正しい姿のことだ!
メイドさん最高か!!」
こうなると話が通じなくなるので
適当なところで話を切り上げ、
ご飯を食べた後、お母さんと
2階の衣裳部屋へ向かった。
「わあ~ミーおねえちゃん可愛い!」
私の制服姿を見て喜んでいる少女。
彼女は家の向かいにある酒場
『喜びの子犬亭』のマスターの娘
アンちゃんだ。茶色い髪に茶色い目
笑顔がとてもキュートな女の子だ。
「まあ、それなりに似合ってんじゃね?
お前んちのおばさんの方がもっと
似合うような気がするけどな!」
私の制服姿を見て目をそらして
いやみを言う少年。
アンちゃんのお兄ちゃんで
私の幼馴染のアルだ。
最近何かにつけてからかって
くるのでちょっと苦手なんだよね。
「ありがとう、アンちゃん♪
アルに褒められなくてもいいもん。」
まあ、実際このメイド服というモノ
絶対お母さんに着せるために
制服にしたんだと思う。
アルに言われるまでもなく
お母さんにメイド服は抜群に
似合っていた。
「お兄ちゃん、ミーおねえちゃんの
格好見て照れてる?」
アンちゃんがアルの顔を覗き込む。
アルがあわてたように顔を上げる
「アン!何いってんだ!この~!」
アルがアンちゃんを殴ろうとして
こぶしを振り上げるがアンちゃんは
笑いながらかわそうとして…
つまづいて大通りの真ん中で転んでしまう。
そして最悪のタイミングで馬車が目の前に
飛び出してきていた。
「アンちゃん!」
私は、その場からダッシュして
アンちゃんを抱きかかえ馬車に背を向け
かばうようにギュッと抱きしめ目をつぶる。
しかし、いくら待っても衝撃は来なかった。
「大丈夫かい?怪我とかしてない?」
私の目の前にとても綺麗な手が差し出される。
「はい、大丈夫で…」
私は絶句してしまう。
その人は貴族のような綺麗な服装に
後ろで束ねられた美しい金の髪、
そして…青と緑のオッドアイ…
そう、夢で見たあの男性その人だった。
私が何も言えずに固まっていると
その男性の後ろから兵士らしき男性が
私の前にやってくる。
「貴様!王族馬車の前に出てきた上に
レシア王子様の手をわずらわせるとは!
不敬罪でこの場で切り捨てるぞ!」
そういって兵士は剣に手をかけるが
夢でみた男性がそれを制する。
「やめよ。これは事故だ。それに
不敬罪なんて僕は認めないよ。」
「レシア王子様!それでは
民衆に示しがつきませぬ!」
レシア王子…?目の前にいる夢で出てきた
あの人があのレシア第4王子…?
「いいから下がって。
君、大丈夫かい?ほら、立って。」
レシア王子は私の右手をつかみ
立ち上がらせてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
その時騒ぎを聞きつけ、私の両親と
酒場のマスターが飛び出してくる、
「ミーシャ!大丈夫か!」
お父さんが駆け寄ろうとして
王子の姿を見て動きが止まる。
「ミルアルド卿…お久しぶりです。」
え…?レシア王子、今お父さんのこと
「レシア王子…ご無沙汰しております。」
そういって父はその場にひざまずく。
そして、レシア王子は私をみて
微笑みかけこう言った。
「君…ミーシャなんだね。逢いたかったよ。」